箱根路を沸かせた韋駄天たちの足跡
連載17:千葉健太(駒澤大/2010~2013年)
いまや正月の風物詩とも言える国民的行事となった東京箱根間往復大学駅伝競走(通称・箱根駅伝)。往路107.5km、復路109.6kmの総距離217.1kmを各校10人のランナーがつなぐ襷リレーは、走者の数だけさまざまなドラマを生み出す。
すでに100回を超える歴史のなか、時代を超えて生き続けるランナーたちに焦点を当てる今連載。第17回は、4年連続で6区に出走し、3度の区間賞を獲得した駒澤大の千葉健太を紹介する。
連載・箱根駅伝名ランナー列伝リスト
【39年ぶりの1年生区間賞】
箱根駅伝は山上りの5区がクローズアップされることが多いが、山下りの6区にも時代を彩ったスター選手がいる。そのひとりが駒大・千葉健太だ。2010年(第86回大会)から4年連続で山を駆け下り、3度の区間賞を獲得。2年時には区間新記録も樹立している。
佐久長聖高(長野)時代は3年連続で全国高校駅伝に出場。1年時は2区で区間4位、2年時は4区で区間4位と好走した。3年時はインターハイ5000mで7位に入ると、全国高校駅伝では1区をまかされた。大学でチームメイトとなる上野渉(仙台育英高・宮城)と競り合い、2秒差の2位で襷をつなぐ。チームは村澤明伸、平賀翔太、佐々木寛文、大迫傑らも活躍し、2時間02分18秒の日本高校最高記録(当時)を樹立。前年、0秒差(同タイム)で敗れた悔しさをエネルギーに悲願の初優勝を飾った。
入学した駒大では上野、撹上宏光、久我和弥、後藤田健介らが同期で、千葉は早々に駅伝メンバーに食い込んだ。
山下りのための「特別な準備はしていなかった」というが、「前を目指して、守りに入らないように走りました」と積極的なレースを展開。8位でスタートすると、早大と明大をかわして6位に浮上した。目標タイムの「60分30秒」を46秒上回る59分44秒で走破し、区間賞を獲得。1年生による6区の区間賞は、実に39年ぶりの快挙だった。
「予定していたタイムより速く下れていたので、落ち着いて走れました。ラストが伸びなかったのは課題ですが、全体的にはよかったです」
東洋大が連覇を果たした大会。駒大は9区の髙林祐介(現・立教大監督)が区間賞を獲得するなど、総合2位まで順位を押し上げ、復路優勝に輝いた。
山下りで非凡なセンスを発揮した千葉だが、高校時代のチームメイトである東海大・村澤が花の2区で活躍したこともあり、「平地のエース区間で勝負したい」という思いを抱いていた。
【2年時の区間新と紆余曲折を経てつかんだ3度目の区間賞】
2年時は関東インカレ男子2部ハーフマラソンで優勝。平地での実力も高め、学生駅伝では主要区間に起用される。
駒大の大八木弘明監督(現・総監督)は「あえて低い目標を伝えました」と設定タイムを「59分20秒」と伝えると、本人はこれを「最低ライン」と受け止め、上を目指した。
千葉はトップの東洋大から3分25秒遅れの5位でスタート。芦之湯(5.1km)の通過タイムは4番目だったが、下りに入ると一気にペースアップした。大平台(13.7km)をトップタイムで通過すると、明治大と東海大を抜き去り、ラスト約3kmの平地区間でも力強い走りを披露。最後は首位に立った早大に2分14秒差まで迫った。
「区間新は狙っていました。とにかく前を追っていけばタイムはついてくる。出雲と全日本はラストが伸びなかったので、今度こそ最後までしっかり走ろうと思って臨みました」
千葉は設定タイムを1分以上上回る58分11秒をマーク。10年間破られていなかった金子宣隆(大東文化大)の区間記録を10秒更新した。
3年時は関東インカレ男子2部ハーフマラソンで2位に入るなど、春先はまずまず順調だった。
本調子ではなかったが、59分39秒の区間5位と好走。チームの総合2位に貢献した。なお区間トップは同学年の東洋大・市川孝徳で59分16秒だった。
最終学年も小さな故障を繰り返し、「チームに迷惑をかけた」という思いが強かった。1学年下に窪田忍と油布郁人、2学年下に村山謙太と中村匠吾(現・明治学院大監督)を擁するチームは強力だった。出雲駅伝と全日本大学駅伝は下級生に出番を譲る形となり、全日本では「付き添い」としてチームを支えた。
それでも最後の学生駅伝には強い責任感を持って臨んだ。
「箱根は4年生としての責任を全うすることだけを考えていました。すべてチームのため。
芦ノ湖を9番目に飛び出すと、下りに入り、スピードアップ。青山学院大、順天堂大、帝京大をかわして6位に浮上する。自身の区間記録に4秒差まで迫る58分15秒で走破し、3度目の区間賞を獲得した。
「タイムには満足していませんが、今回は納得しています。山下りは簡単に走らせてくれない舞台でしたが、4年間しっかり走って結果も残せてよかったです」
チームは9区の上野渉、10区の後藤田健介も区間賞を獲得。4年生トリオの活躍で総合3位まで順位を押し上げ、復路優勝を勝ち取った。
「最後は山でチームに貢献して卒業したいと思っていました」
2015年(第91回大会)から函嶺洞門の閉鎖に伴ってコースが変更されたため、58分11秒というタイムは参考記録になった。シューズの進化もあり、近年6区の記録は急上昇している。しかし、区間賞3回、区間新1回を成し遂げた千葉が、箱根駅伝史に残る「名ダウンヒラー」だったことは間違いない。
●Profile
千葉健太(ちば・けんた)/1990年5月20日生まれ、長野県出身。佐久長聖高(長野)―駒澤大―富士通。高校時代から駅伝で強さを発揮し、全国高校駅伝に3年連続出走を果たし、3年時には日本一を経験した。
【箱根駅伝成績】
2010年(1年)6区1位・59分44秒
2011年(2年)6区1位・58分11秒 *区間新
2012年(3年)6区5位・59分39秒
2013年(4年)6区1位・58分15秒
*区間新は当時



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