7月17日、大阪。バレーボールネーションズリーグ(VNL)予選ラウンド第3週日本ラウンド、日本はベルギーをセットカウント3-0とストレートで下し、怒涛の11連勝を飾った。

初戦はパリ五輪準々決勝で敗れたイタリア、第2戦は昨年の世界選手権で不覚をとったカナダに、いずれもフルセットで勝利。接戦での強さも見せている。

【男子バレー】石川祐希が肌で感じた日本の進化 「2チーム分の...の画像はこちら >>
 日本は決勝ラウンド進出(8チームによるトーナメント)を首位で決め、準々決勝では開催国の中国と対戦する。史上初のVNL優勝も照準に入り、それは日本バレーボールの新たな歴史にもなるのだが......。

「優勝はしたいですし、メダルを取りたいと思っています。でも、そこがピークではなくて......」

 石川祐希(30歳)は落ち着き払って言っている。海を渡って戦い抜いてきたバレー人生の濃度と、今も尽きない探究心を同時に感じさせた。

「ピークはあくまで、(2028年ロス五輪出場権をかけて9月に福岡で開催される)アジア選手権というのは絶対に忘れてはいけないところですね。もちろん、(VNLでも)メダルがかかった試合はテンションも上がるし、当然メダルを取りたいし、試合に勝ちたい。その思いはあるべきだし、そう思っていなければいけないです。でも、アジア選手権が一番のピークであることを考えながらプレーしているので、いい通過点になればいいなって感じですね」

 国際舞台の中心で戦ってきた石川だけに見える風景がある。そのリーダーシップは唯一無二だ。

 今シーズンのVNLで、日本は破竹の勢いを見せている。ターンオーバーを用いた「2つ分のチーム」が、"奥の手"につながっているのだ。

 ミドルブロッカーは、エバデダン ラリー、小野寺太志、山内晶大、西本圭吾などそれぞれキャラクターの違う選手が持ち味を発揮している。リベロも山本智大、小川智大という世界的名手が控える。セッターも関田誠大の不在を感じさせないほど、深津英臣が巧みなトスワークを見せ、長身セッターの永露元稀も違うキャラを見せる。アウトサイドヒッターは石川を筆頭に髙橋藍、大塚達宣、富田将馬、甲斐優斗など多士済々。そしてオポジットも、西田有志、宮浦健人のふたりは世界のトップに比肩する。

【海外を経験した選手が増えた】

「僕がダメでも宮浦さんがいるし、宮浦さんがダメでも僕がいるって関係性にはなっていると思っているので」

 西田の言葉だが、そんな2つ分の選手層がチームをたくましくしている。たとえばカナダ戦でのセットカウント0-2からメンバーを入れ替えてつかんだ逆転勝利(前日のイタリアとの激闘で主力は動きが重かった)は、その証左だった。

 主将である石川は冷静にこう振り返っていた。

「最初の1、2セット目は、いつも以上にミスが出てしまいました。でも、代わって入った選手がしっかりとやってくれて、3セット目も厳しいなかで耐えられて逆転できました」

 昨年夏の世界選手権でカナダに負けて予選敗退が決まったあと、石川は「海を渡る重要性」を強調していた。選手層の底上げは必要不可欠だった。

その点、カナダ、ベルギー戦と代わりに入って救世主になった大塚は、世界最高峰のイタリアで研鑽を積んでいる。

「(過去も含めて)海外でのプレーを経験した選手が多くなってきて、やはりそういう選手は雰囲気を持っていると思うし、結果にもつながっているのかなって思います」

 石川はそう言って、続ける。

「大塚選手はミラノでプレーすることによって、しっかりと、技術だけじゃなくてメンタルが変化して、雰囲気も出てきて、今日(カナダ戦)も堂々とプレーしていました。それは海外でのプレーで得られた経験があってこそで。練習からも、"自分がやってやる!"という思いが感じられました」

 石川は長く日本のバレーボールを牽引してきただけに、誰よりも進化を肌で実感している。

 海外移籍もそうだが、SVリーグの開幕が与えたインパクトも少なくない。有力な外国人選手との対戦機会が増え、アリーナの熱気も格段に上がり、そこで使命を託されることが成長の触媒になっているのだ。

「僕だけでなく、みんな新しい立場、新しい場所、新しいクラブチームでプレーしているわけで、成長しないはずはないです。それが結果に現れていると思いますね」

【キャプテンとして戦う宿命】

 石川は凛とした声で言うが、キャプテンの重みを感じさせた。そこで聞いてみたいことがあった。

――パリ五輪で上位の強豪国(イタリア、アメリカ、フランスなど)はセッターがキャプテンをすることが多いです。キャプテンにはチームを束ねることに労力を使う消耗があり、ひとりのスパイカーとしては負担になっていないですか?

 石川は毅然とした様子で答えている。

「そこは監督次第だと思います。たとえば、(前監督の)フィリップ・ブランは『セッターにキャプテンをやらせたくない』というタイプでした。やっぱり、まずは監督の意向がありますね。それに、選手次第だとも思っています。その選手にリーダーシップがあるか、まとめる能力があるか。結局は、そこが大事なのかな、とは思いますね」

 セッターは攻守の間にいるポジションでどこにも接続しやすい一方、アタッカーは最後に一番必要な得点を託され「そこに集中するべき」というのも合理的に思えるし、率直に言って、キャプテンはときに自我を封じ込めざるをえないこともあるだろう。

 ただ、石川はキャプテンの流儀を感じさせた。

――もっと自由勝手に、石川選手にプレーしてほしい気もしますが......。

 この素朴な質問に、石川は「基本的には自由にやっているんで」と闊達な笑みをもらしながら、丁寧にこう続けた。

「"キャプテンだから"というので考えることはあります。けど、それで(プレーに悪い)影響がないように、自分ではコントロールできているとは思っています。逆に、"今の代表でキャプテンを誰がやるの?"ってなると、なかなか(名前が)出てこないので、(今の代表は)みんな点を取るメンバーにリーダーシップがある、というのもあって、そこは難しいところかなと」

 石川がキャプテンとして戦うのは宿命なのだろう。

 何より、求心力のある石川自身の個が、日本の組織力を強化させる。イタリア戦で反撃の狼煙を上げた2セット目、彼はフェイクセットで西田にトスを託し、自らのスパイクがブロックされたあとは山本がフォローした。そのシーン自体は自らの得点につながらなかったが、日本自慢のラリーを起動させ、戦闘を戦術に、戦術を戦略に引き上げたのだ。

 7月19日、VNL予選ラウンド最終戦、日本はパリ五輪で勝利したアルゼンチンと相まみえる。すべてはロス五輪へ。それこそ石川が至高の輝きを放つ舞台だ。


 

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