ヒロド歩美 インタビュー 後編(全2回)

 スペインの4大会ぶり2度目の優勝で幕を閉じた、FIFAワールドカップ2026。『報道ステーション』(テレビ朝日系)などでおなじみのフリーアナウンサー・ヒロド歩美さんは、サッカー日本代表が作り出した「共闘」の輪、そして次代を担う若きストライカーの頼もしい素顔に心を動かされたという。

 さらに話題は、今アメリカを席巻し、日本でも急激に競技人口を伸ばしている新スポーツ「ピックルボール」へ。ジャンルを超えて最前線を駆け回るヒロドさんが今、注目するアスリートの熱量とはーー。

ヒロド歩美が心を動かされたサッカー日本代表・塩貝健人の素顔と...の画像はこちら >>

【日本中を巻き込んだ森保ジャパンの「共闘」】

 先日、延長戦の末にスペインがアルゼンチンを下し、熱狂のワールドカップが幕を閉じました。出場国が48カ国に拡大され、試合数が増えた今大会でしたが、サッカー日本代表の戦いぶりは本当に胸を打つものでしたね。決勝トーナメントのブラジル戦では惜しくも敗れましたが、極限の逆境でも諦めない姿勢を見せてくれました。

 私は、大会を終えて帰国された森保一監督の姿を、羽田空港からリポートさせていただきました。じつは空港へ向かう前、スタッフからは「もしファンの方から厳しい言葉や物が飛んできたら......、その場合はどうしよう」なんて冗談交じりに言われていたんです。

 韓国代表の帰国時のニュースで、ファンから厳しい言葉を浴びせられている選手や監督の姿も話題になっていましたからね。もちろん、日本ではそうしたことは起きませんでした。

 空港での森保監督の姿は、本当に印象的でした。普通なら集まった大勢のファンやサポーターの方々に向けてサッと一礼して終わるところですが、森保監督は皆さんの顔を一人ひとりしっかりと見つめるようにしながら、何度も何度もお辞儀をされていたんです。その気遣いや人柄が、端々ににじみ出ていました。

 森保監督のすごいところは、チーム内の結束力を高めることはもちろんですが、何より「日本全体を巻き込む力」。

凄まじいことだと思いました。「共闘」という言葉を通じて、テレビの前で見ている私たちにも「一緒に戦おう!」と思わせてくれる。その"巻き込み力"こそが、このチームの魅力だったのではないかとあらためて感じました。

【異例のスピード出世、塩貝健人の有言実行】

 そんな日本代表のなかで、これからが本当に楽しみだと感じているのが、今大会、期待の若手のひとりだった塩貝健人選手(21歳)です。今大会では、グループステージ初戦のオランダ戦で途中出場してワールドカップデビュー。そんな塩貝選手には、開幕前にインタビューをさせていただきました。

 塩貝選手の経歴は、すごく痛快で興味深いです。4年前のカタール大会の時はまだ高校生で、プロからの正式契約のオファーもゼロ。いちサッカーファンとしてワールドカップを見ていたそうです。

 そこから慶應義塾大学に総合型選抜(旧AO入試)で進学すると、翌年まず特別指定選手としてJリーグ横浜F・マリノス)デビュー。するとわずか7試合に出場したのち、「ワールドカップに行きたい。海外じゃなきゃダメだ」と、大学を休学してオランダ(NECナイメヘン)へ渡り、今年1月にはドイツのヴォルフスブルクへ移籍......。自らの力で道を切り拓いてきました。

その人生プランの立て方が、すごく客観的で冷静なんです。

 塩貝選手の発言はメディアで取り上げられることもあり、「ビッグマウス」と捉えられがちです。ただ、私はそうした表現はしたくありません。キャッチーな強い言葉を発するのは、自分自身に発破をかけるため。努力を淡々と重ねてきているからこそ、あえて高い目標を口にして自らを奮い立たせるタイプなのだと私は思います。

 ブラジル戦の前後で彼の強気な発言の一部だけが切り取られてしまった時は、私自身、少しもどかしかったです。彼の真意を理解したうえで、「こういう選手こそ応援したい!」という気持ちが強くなりました。

 今年3月、代表初招集となった国際親善試合のスコットランド戦では、塩貝選手はわずか15分という出場時間で決勝ゴールをアシストし、一気にワールドカップメンバー入りを射止めました。短い時間で結果を残す、そんな"持っている"塩貝選手が、ここからの4年間でどれほどパワフルなストライカーに成長するのか。本人の口から出た言葉の「答え合わせ」をしていくのが、今から楽しみです。

【メジャーリーガーも夢中のアメリカ発・ピックルボール】

 自らの手で道を切り拓くアスリートといえば、サッカーから少しジャンルは変わりますが、私が今、猛烈に熱い視線を送っているのが「ピックルボール」の船水雄太選手です。

 きっかけは2025年のMLBキャンプの時でした。知り合いの方から「これから日本で絶対にピックルボールのブームが来る! 船水雄太という選手が挑戦するから注目してほしい」と教えてもらったんです。

 アメリカ発祥で、テニスと卓球とバドミントンを合わせたようなラケットスポーツなのですが、今アメリカではスーパーやデパートの跡地が次々とピックルボールのコートに変わるほどの社会現象になっているんです。

 何より面白いのが、メジャーリーガーたちもどハマりしていること。ドジャースのムーキー・ベッツ選手も大好きで、船水選手は山本由伸投手から「教えてください」と声がかかるほど。メジャーリーガーの自宅のコートで一緒にプレーするなんて、すごいスケールですよね。

 私も船水選手や古田敦也さんと一緒に体験してみたのですが、これが本当に楽しいんです! ボールが軽く、思ったほどバウンドしないので、すぐにラリーが続くようになります。羽子板のような感覚ですね。パドル(ラケット)とボールが当たる瞬間の「ポーン!」という音がすごく気持ちよくて、ストレス発散にもなります。

 老若男女、おじいちゃんおばあちゃんから小さなお子さんまで同じコートで遊べるのが最大の魅力です。最近では、オフィス街のど真ん中に仮設コートができて、仕事終わりのサラリーマンがスーツ姿で汗を流している姿も見かけます。「いつか体育の授業にも取り入れられるんじゃないか?」と思うくらい、身近なスポーツになりつつあります。

【パイオニア・船水雄太選手の軌跡】

 このピックルボールという競技で、日本人のパイオニアとして最前線を走っているのが船水雄太選手です。もともとはソフトテニスの世界チャンピオンだった彼が、「ピックルボールを日本に広めたい」と一念発起し、日本人で初めてアメリカのメジャーリーグ・ピックルボール(MLP)という狭き門を突破しました。

さらに、先日(7月4日)東京で行なわれたPPAアジアツアーの男子ダブルスでも、みごとに逆転優勝を飾りました!

 私が船水選手と出会った1年半前は、まだ日本には専用のコートもほとんどない状態でした。その頃から「これから絶対にブームを起こします」と熱く語っていたスタートラインを見てきたからこそ、今の目覚ましい活躍は本当に感慨深いです。今や東京タワーや有明には専用コートができ、なんとテレビ朝日の社内にも「ピックルボール部」ができたそうです(笑)。

 塩貝選手も船水選手もそうですが、高い目標を掲げ、有言実行で自ら道を切り拓いていくアスリートの軌跡を間近で見られることは、スポーツを伝える人間としてこのうえない喜びです。これからも競技の枠にとらわれず、現場から溢れる純粋な「熱」を、全力でみなさんにお届けしていきたいです!

終わり

前編<ヒロド歩美が思う高校野球界の未来を照らす"新たな球児"の形 「人生を前向きに変えていく」取り組み>を読む

<プロフィール>
ヒロド歩美 ひろど・あゆみ/1991年10月25日生まれ。兵庫県宝塚市出身。早稲田大学国際教養学部卒業後、2014年に朝日放送テレビ(ABCテレビ)入社。2016年に『熱闘甲子園』のキャスターに就任。その後は『サンデーLIVE!!』『芸能界常識チェック!~トリニクって何の肉!?~』『芸能人格付けチェック』などに出演。2023年からフリーとなり、現在まで『報道ステーション』のスポーツキャスターを務めている。

堤 美佳子●構成・文 text by Mikako Tsutsumi

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