鶴岡慎也が語るパ・リーグ上位争いの行方(前編)
強力な先発陣をそろえ、12球団トップの本塁打数を誇りながら、首位争いで後れを取っている日本ハム。なぜ、前評判どおりの勢いに乗りきれなかったのか。
【想定外だった有原航平の不調】
── 前半戦、なかなか勢いに乗れなかった日本ハムですが、計算が狂った部分はどこでしょうか。
鶴岡 やはり有原航平投手ですね。ローテーションの柱として期待していただけに、ここまで(8月6日現在、以下同)3勝6敗という数字は想像していませんでした。有原投手は三振を量産するタイプではなく、打たせて取る投手ですが、その打球が失策につながる場面もあり、守備とのリズムがうまく噛み合わなかった部分もありました。それに本人も、本来の出力まで上がりきらなかった印象があります。
── 終盤に向けて巻き返せそうでしょうか。
鶴岡 オールスター前の登板では、球威もかなり戻っていました。ここから大事な試合が続くと思いますが、有原投手がどこまで勝ち星を伸ばせるか。そこが日本ハムの命運を左右すると言ってもいいでしょう。
── 開幕前には、伊藤大海投手とのダブルエース中5日構想もありました。
鶴岡 有原投手は登録抹消もありました。
── ほかの先発投手についてはどうですか。
鶴岡 北山亘基投手、加藤貴之投手は期待どおりです。逆に、「やはりプロは簡単ではないな」と痛感したのが達孝太投手です。今年、最多勝に絡むくらいの活躍を見せてくれると思っていました。ところが、春先にストライクゾーンで勝負して痛打されたことで、慎重になりすぎた。その結果、本来のよさを出しきれませんでした。それで新庄剛志監督は一度リリーフに回して、立て直そうと考えたのでしょう。
── 加藤投手はチームトップの勝利数を挙げています。
鶴岡 過去にも2ケタ勝利を挙げたことはありますが、もともと勝ち星が先行するタイプではありませんでした。
── リリーフ陣についてはどうですか。
鶴岡 今季の日本ハムは、逆転負けが意外と多いんです。勝ちパターンの田中正義投手、島本浩也投手、柳川大晟投手が投げながら、勝ちきれない試合がありました。ただ、阪神から移籍してきた島本投手の働きは本当に大きいです。リードしている場面でもビハインドの場面でも、相手が左打者でも右打者でも関係なく起用され、序盤戦はフル回転でした。武田久投手コーチも加藤武治投手コーチも、あれだけ幅広い場面で使える万能型の左腕が加わったことを、とても心強く感じていると思います。
【本塁打数は12球団トップ】
── チーム打率.253はリーグ2位、127本塁打は12球団トップです。
鶴岡 ひとつ言えるのは、2023年から本拠地がエスコンフィールドに変わったことですね。左翼が97メートルと比較的狭く、外野フェンスも低いエリアがあるので、球団としても本塁打で得点を奪うチームづくりを描いていた部分はあったと思います。それに合わせるように、新庄監督も万波中正選手、清宮幸太郎選手、野村佑希選手、郡司裕也選手、水谷瞬選手といった長打力のある打者を積極的にラインナップへ並べています。
── 昨年、本塁打と打点の二冠に輝いたフランミル・レイエス選手は、現在首位打者です。
鶴岡 打線は完全にレイエス選手が軸になっていますね。
── 水野選手は具体的にどこがよくなったのでしょうか?
鶴岡 一番の特長は、反対方向へ強い打球を打てることです。今季は1、2番を任されることが多く、出塁率を意識した打撃もできるようになりました。水野選手が塁に出て、レイエス選手が還す。この形がしっかりできていたことが大きかったですね。
── 逆に、苦しんでいるのは郡司裕也選手あたりですか。
鶴岡 郡司選手は、昨年4番として結果を残したこともあって、今季は春先から相手バッテリーにインコースを徹底的に攻められました。それで調子を崩した部分はあったと思います。その後、一度ファームで調整してから、バットの抜けがよくなりました。
【宿敵・ソフトバンクに大きく負け越し】
── ここまでのゲーム差をどう見ていますか。
鶴岡 開幕前は、ソフトバンクと日本ハムの評価が高かったですよね。しかし、日本ハムはソフトバンクに3勝14敗と大きく負け越しています。それがすべてです。日本ハムとしては、ソフトバンクを意識しすぎて空回りしていた部分はあったと思います。特に序盤は先発投手が踏ん張りきれない試合が目立ちました。リードしていても、「このまま勝ちきれるだろうか」「また終盤にひっくり返されるのではないか」という不安がチーム全体に漂ってしまった。そういった精神的な部分も含め、この結果につながっていると思います。
── 失策はリーグワーストの65個を記録しています。なぜこれほど多くなってしまったのでしょうか。
鶴岡 日本ハムがこれだけ本塁打を打ち、先発投手陣もそろっていながら3位にとどまっている要因は、正直、この失策数にあると思います。
── それほど勝敗に影響するものですか。
鶴岡 単純に失策が多いというだけではありません。「イニングの先頭打者をアウトに取れば、この試合の流れが来るぞ」とか、「ここでアウトを取れば、ほぼ勝ちだよね」というところでエラーが出ています。どのポジションでもそれなりにエラーが出ましたが、単純に失点につながるタイムリーエラーというより、ダメージの大きい勝負どころのエラーが多かった。感覚的にはもっとエラーをしているようなダメージがあります。
── 実感がこもっていますね。
鶴岡 私は日本ハムを中心に解説させてもらっていますが、野球は本塁打も大事ですし、打線をつないで点を取ることも大事です。だけど、守備で普通に取れるアウトをひとつ取って、それを積み重ねていくこともすごく大事なんだと実感しました。もちろん、エラーをしてしまった選手たち自身が一番わかっているはずです。今後は勝負強い守備をしてくれると思っています。
鶴岡慎也(つるおか・しんや)/1981年4月11日、鹿児島県生まれ。樟南高校時代に2度甲子園出場。
水道博●文 text by Hiroshi Suido










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