廃棄物の収集運搬から中間処理、再資源化、最終処分までを一貫して手がける大栄環境<9336>が、M&Aによる成長戦略を強める。
2026年5月に中期経営計画を見直し、最終年の2028年3月期までのM&A投資枠を従来の5倍規模に拡大した。
国内廃棄物処理市場は、約12万社が存在する分散市場で、同社は連結子会社41社のうち25社をM&Aで傘下に収めてきた。
今後も業界再編の担い手として、M&Aを積極的に進め、事業エリアを全国に広げる方針だ。
M&A投資枠を450億円積み増し
大栄環境は2026年5月、2028年3月期を最終年とする3年間の中期経営計画を見直し、2028年3月期までのM&A投資枠を、これまでの100億円+αから550億円+αへ450億円積み増した。
手元資金と借入は290億円+αから、900億円+αへ増やし、M&Aを含む成長投資に充てる。
同社は中期経営計画の見直しについて、2026年3月期の連結業績が増収、営業増益となったことや、自治体との関係深化などの施策が進んだことに加え、2025年11月に九州エリアで最終処分事業を手がけるスカラベサクレ(北九州市)を子会社化したことを踏まえたものと説明している。
スカラベサクレの子会社化では取得対価が440億円となり、従来のM&A投資枠100億円+αを大きく上回る規模の案件となった。
また、2026年3月期決算短信では、スカラベサクレの子会社化により九州エリアで最終処分場の廃棄物受け入れが拡大し、利益押し上げ効果があったとしている。
同社は2025年6月に公表した有価証券報告書で、これまで自社による新増設を基本としてきた焼却等熱処理施設や最終処分場について、シナジー効果が高い案件ではM&Aを積極的に検討する方針を示している。
スカラベサクレの子会社化は、この方針に沿ったもので、中期経営計画の成長施策を大きく進展させるM&Aと位置付けている。
投資枠の拡大は、スカラベサクレのような最終処分場を持つ大型案件を今後も取り込むため、資金枠を広げる動きといえる。
国内市場は約12万社の分散構造
大栄環境がM&Aを重視する背景には、国内廃棄物処理市場の分散構造がある。
同社資料によると、国内廃棄物処理市場の規模は8兆6000億円。
約12万社が存在する一方、上位4社の売上高合計は3241億円にとどまり、市場規模に占める割合は3.7%にすぎない。
同社は国内市場を、市場占有率の高い企業が不在で、小規模事業者の割合が多い超分散型市場と位置付ける。
同社は、業界再編の機運が高まり、M&A機会が豊富な背景として、資源循環の高度化に対応する投資資金を確保できない事業者が多いことを挙げる。
再資源化品を素材メーカーなどの動脈市場(製品を作って供給する産業)へ供給するには、処理履歴を追跡できるトレーサビリティ(いつ、どこで、どのように処理されたかを確認できる仕組み)や、CO2排出量の見える化への対応が一段と求められる。
一方で、再資源化事業者は、二次処理費をはじめとするコスト増加分を十分に価格転嫁できていない。
こうした投資負担や収益面の制約を単独で吸収しにくい小規模事業者が多いことが、大栄環境にとってM&A機会の広がりにつながっているとみる。
さらに、1970~80年代に創業した事業者で後継者不在の課題が出ていることも、業界再編を後押しする要因となっている。
大栄環境はこうした市場で、M&Aによる事業エリアの拡大を成長施策の一つに掲げる。
対象は、主力事業である廃棄物処理・資源循環とのシナジーが見込め、廃棄物の受け入れ量拡大につながる案件だ。
同社は、全国各エリアでこうした案件のM&Aを積極的に実行する方針を示している。
連結子会社41社中25社をM&Aで獲得
大栄環境は、1979年に産業廃棄物取扱業務を目的として大阪府和泉市で設立し、1980年には同市に管理型最終処分場を開設した。
1986年には兵庫県西宮市にリサイクルセンターを開設し、中間処理、再資源化事業に参入した。
1995年には、環境関連事業を手がける摂津と摂津清運を子会社化し、これが同社の沿革で確認できる最初の子会社化案件となった。
その後、2016年には総合農林を子会社化して森林保全事業を開始した。
同年にはトライアール神戸の有価資源リサイクル事業を譲り受け、アルミペレット事業にも参入した。
2020年には、産業廃棄物収集運搬・処理業の共同土木と、セーフティーアイランドを子会社化し、廃棄物処理、収集運搬などの機能を取り込んだ。
2024年以降はM&Aが加速している。
背景にあるのは、関東エリアでの事業基盤拡大だ。
2025年3月期決算短信では、2024年4月に栄和リサイクル、同年7月に浦安清運とアイア、2025年1月に海成を連結子会社化したと説明している。
これらの会社は関東エリアを拠点に事業を展開しており、同エリアで事業を展開する共同土木と一体で運営することで、売上拡大を進めたとしている。
2025年には、一般廃棄物収集運搬のクリーンテック名張、廃棄物処分事業の肥前環境、廃棄物収集運搬のWood Life Companyなどを子会社化した。
2026年5月14日時点の連結子会社は41社で、このうち25社はM&Aによりグループ入りした会社だ。
2028年3月期に売上高1000億円に
2026年3月期の売上高は878億5500万円(前年度比9.6%増)、営業利益は221億8900万円(同3.0%増)だった。
同期の部門別の売上高を見ると、廃棄物の収集運搬から中間処理、再資源化、最終処分などの環境関連事業が852億4800万円と全体の97.0%を占め、売上高の大部分を担っている。
有価資源リサイクル事業とスポーツ振興事業で構成するその他事業は26億600万円で、構成比は3.0%だった。
2027年3月期は売上高が6.9%増、営業利益は9.5%増を見込む。2028年3月期は売上高1000億円、営業利益250億円を目標に掲げる。
中期経営計画の見直しでM&A投資枠を550億円+αへ広げたことは、同社がM&Aによる事業エリア拡大を成長戦略の重要施策に位置付けたことを示す。
廃棄物処理市場では、後継者不在、資源循環対応への投資負担、廃棄物処理コストの抑制といった課題が重なる。
大栄環境にとってM&Aは、こうした課題を抱える事業者を取り込み、処理能力と事業エリアを広げる手段となる。
国内の廃棄物処理市場では、小規模事業者の再編が進む余地が大きい。
同社のM&A戦略は、廃棄物処理・資源循環分野で進む業界再編の一端を示す動きになりそうだ。
文:M&A Online記者 松本亮一
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