「JR東日本」英国の自販機事業を駅から空港へ 欧州展開で追加M&Aも視野

東日本旅客鉄道(JR東日本)<9020>は、英国での自動販売機事業を駅から空港へ広げる。

同社は2026年6月2日、ヒースロー空港などで約800台を展開するPetrie Gough Limitedの自販機事業を取得した。

2024年に買収した英国Decorum Vending Limitedの駅中心の自販機約1000台と合わせ、運営台数は1800台規模となる。

流通・サービスや不動産・ホテルなどで構成する生活ソリューション分野の海外展開を進める一環で、駅や空港で構築した顧客接点を活用し、日系企業と連携した日本の食や商品などの展開につなげる。

将来的には現地パートナーとのネットワークを生かし、欧州他国への展開を目指すとしており、追加のM&Aや提携が選択肢となりそうだ。

英国で空港網を取得

JR東日本グループは、2019年に英国でデジタル自販機ビジネスを始め、2024年に英国と欧州各国の事業拠点となる現地法人を設立した。

2024年には英国Decorum Vendingを子会社化し、英国の駅を中心とする自販機事業の運営台数を約1000台に広げた。

今回取得するPetrie Goughの自販機事業は、ロンドン・ヒースロー空港、ロンドン・ガトウィック空港、ロンドン・ルートン空港など、英国内の主要空港に約800台を展開している。

同事業を取り込むことで、英国の駅を中心とした自販機事業を空港にも広げる。

今後は、人流・購買データを活用した顧客起点の商品展開や、広告機能を備えた自販機によるプロモーションで収益力を高める。

地域の特産品や地産品を取り扱う自販機を展開するほか、日系企業と連携し、日本の食や商品などの展開にもつなげる。

欧州では鉄道会社や空港事業者など現地のパートナー企業とのネットワークを生かし、欧州他国への展開を目指す計画だ。

M&Aで成長投資を具体化

JR東日本は、2025年に公表したグループ経営ビジョン「勇翔2034」で、M&Aを含む成長投資を重視している。

「勇翔2034」では、2026年3月期から2032年3月期までのキャッシュ・アロケーションで、成長資金として3兆1000億円を配分する方針を示した。

この中で、既存ビジネスの成長に加え、M&Aや新規事業創造による非連続成長に向けて積極的に投資や出資を行うとしている。

同社は近年、M&Aを通じて国内外で事業基盤の拡充やグループ再編を進めており、2023年に軌道工事や保守を手がけるシンガポールのGATES PCM CONSTRUCTION LTD.を子会社化した。

その後は2024年に自販機事業を展開する英国のDecorum Vendingを子会社化し、今回のPetrie Goughの自販機事業取得と続く。

一方、国内では、2026年10月に、JR東日本傘下のJR東日本不動産が、伊藤忠商事傘下の伊藤忠都市開発と合併する。

合併後の出資比率はJR東日本が60%となる。鉄道を通じたリアルなネットワークと、商社のグローバルな商流ネットワークを組み合わせ、総合デベロッパーとしての成長を目指す計画だ。

「JR東日本」英国の自販機事業を駅から空港へ 欧州展開で追加M&Aも視野
JR東日本の2009年以降の主なM&A

生活ソリューションの収益拡大へ

JR東日本の2026年3月期の部門別売上高は、旅客運送事業、旅行業、清掃整備業などで構成する運輸事業が2兆458億4000万円で全体の66.3%を占めた。

次いでショッピングセンター運営やオフィスビルの賃貸、ホテル業などを手がける不動産・ホテル事業が5132億2700万円で、売上高構成比は16.6%だった。

このほか小売業、飲食業、広告代理業などの流通・サービス事業は4161億3300万円で、同13.5%、クレジットカード事業などのIT・Suica、情報処理などを含むその他は1094億7700万円で、同3.5%だった。

「JR東日本」英国の自販機事業を駅から空港へ 欧州展開で追加M&Aも視野
JR東日本の売上高構成比

JR東日本は2026年4月に「勇翔2034」の数値目標を見直し、2032年3月期のグループ全体の売上高目標を4兆円超から4兆3000億円程度に引き上げた。

この引き上げ分3000億円程度に対し、運輸事業以外の流通・サービス、不動産・ホテルなどで構成する生活ソリューションでは、売上高1500億円の積み増しを掲げており、同分野が成長目標の引き上げを支える一つの柱となる。

今回の事業取得は、英国の主要空港に広がる販売網を加え、駅中心だった自販機事業の接点を空港利用者にも広げる案件となり、生活ソリューションの海外展開に位置付けられる。

売上高1500億円の積み増しを掲げる生活ソリューションにとって、現地の運営基盤や顧客接点を取り込むM&Aは、収益拡大を早める手段となる。

文:M&A Online記者 松本亮一

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