書店で本を買う際、ふとレジ横にある商品に目が行くことがある。

メガネふきや、視力回復アイテムなど、目に関係する商品は、本と直結するイメージがあるけれども、その他に定番となっているのは、「爪切り」「耳かき」だ。


爪切りの場合も、本を読んでいるときに手元に目がいき、「あ、爪、伸びてきたな」となる場合は考えられるけど……では、「耳かき」は?
レジ横に耳かきをよく置いている店の一つ、紀伊国屋書店に聞いてみた。

「結論から申し上げますと、何故耳かきなのか、何故弊店が特徴的に売れるのかミステリーなのです」(紀伊國屋書店福岡本店・田中さん)

耳かきを置くようになった経緯を聞いてみると……。
「メーカーからなのか、弊社の本部からの紹介なのか、仕入れるようになった経緯は判然としないのですが、カウンターあるいはレジ周りの商品として数年前から置いております」

「書店のレジ横に耳かき」は、イメージ的には当たり前の光景になっていたが、置き始めたのは「数年前から」と、意外にも歴史が浅いよう。その目的は?
「カウンターにこうした小物を置くのは、ショッピングセンターのレジでも良く見かける光景で、レジ待ちの方に、衝動買いを喚起する目的でぶら下がっておりますが、確かに耳かきは珍しいですよね。ドラッグストアでも、レジ周りには置いていないようです」

スーパーのレジ周りには、ガムや電池など、日常生活で買い置き&買い忘れしがちな「ちょっとしたもの」が多い。でも、耳かきの「衝動買い」は、あまり聞いたことがないし、ちょくちょく買うものではないだけに、ますます不思議だ。

これに関して、担当者は言う。
「よく売れるとわかっていても、何故かとつきつめて考えた事がなく、また、POSデータで見ましても、確かに全般的にどの店もコンスタントに売れておりますが、飛び抜けて売れているのは福岡本店と大手町ビル店です。ちなみに、2年前に閉店しましたが、同じ福岡市内天神にありました福岡天神店でも同様に販売しておりましたが、結果はさっぱり売れなかったとのことです」
エリア的な特徴でもないとなると、では、どんな要素なのか。福岡本店と大手町ビル店に共通する要素は?
「いずれも、ビジネス街ということですね。ビジネスマンは耳かきがお好き?? あるいは必需品?? かなり強引な結論で、信頼性はほとんどありません」

さらに、本と耳かきの関係について、こんなコメントをくれた。
「読書の際に耳を掻きながら本を読むと、非常にわかりやすい、気持ちが良いかと試してみましたが、特段の効果は感じられませんでした。
というよりも、耳のほうが危なっかしいように思います」

経緯も、なぜ売れるのかも、残念ながらはっきりしないが、ただ一つわかっているのは、「耳かきが、本屋で本当に売れる」ということ。
「POSでは1368本になっていますが、実は商品コードが整備されて以降のデータで、それ以前は販売データがない状況です。間違いなく2000本以上は販売している“隠れたベストセラー”なのです」

書店の耳かきは、意外な場所に、意外なビジネスチャンスがある好例なのかも。
(田幸和歌子)