忘年会などでお酒を飲む機会も増える時期。
ところで、「酔うと、膝などが痛くなる」「お酒を飲むと関節が痛くなる」という人がときどきいる。
これはなぜなのか。

『かくれ躁うつ病が増えている』(共著)を持つ、医療法人社団榎会・榎本クリニックの深間内(ふかまうち)文彦院長に聞いた。

「長い間お酒をたくさん飲んでいると、肝臓だけでなく、全身の臓器に悪影響を及ぼします。そのなかには末梢神経などの障害も含まれます。一つは『アルコール性多発神経炎』と言われるもので、手足のしびれや痛み、感覚異常などが症状として現れるもの。もう一つは、『アルコール性筋炎』と言われるもので、筋肉が痛んだり、脱力・麻痺といった症状が現れるんですよ」
これらは栄養のバランスが崩れ、ビタミンやミネラルが欠乏することが原因なのだとか。

「体内のアルコールを分解するためにはビタミン類を大量に必要としますが、ほとんど食べ物をとらずに酒ばかり飲んでいたり、嘔吐や下痢などの胃腸障害や肝機能障害があると、栄養分の吸収代謝が悪くなり、慢性的なビタミン不足状態からビタミン消費に追いつかなくなるわけです」

さらに、喫煙が重なればビタミン類は破壊され、ますます神経障害が起こりやすいそうだ。
「アルコール自体が毒性をもった物質ですが、その代謝過程で生じるアセトアルデヒドはもっと強力な毒性を持っています。飲んだ後のこのような痛みは、アセトアルデヒドが筋肉や関節付近の細胞に浸透し、神経を刺激し、痛みの原因の一つになると考えられます」

アセトアルデヒドはアセトアルデヒド脱水素酵素によって肝臓で酢酸に分解され、無害な二酸化炭素と水になり、体外へ排出される。猛毒アセトアルデヒドをなるべく早く分解してしまえば、不快な症状を出現させずに、あるいは軽くすませることができるわけで、アセトアルデヒド脱水素酵素の活性の高さにかかっていることになるそうだ。
「この活性の高さは体質によるもので、日本人の場合、約半数はこの酵素の働きがないか、弱いと言われています。飲めない人ほどアセトアルデヒドが体内に残りやすいので、度を越して飲めば二日酔いやこのような関節痛や筋肉痛も現れやすいといえるでしょう」

また、前述のビタミン不足の状態やアルコールの利尿作用による脱水状態、あるいは夜更かし、偏食、運動不足、冷え、風邪、生理中など体調不良や強いストレスなどがあると、自律神経も乱れがちで痛みに敏感になっており、疲労物質も蓄積しやすく神経のトラブルが起きやすいのだそうだ。

「人によっては飲酒後のむくみも痛みの原因となります。これは旅行者血栓症(いわゆるエコノミー症候群)などずっと同じ姿勢をとっている場合に起こるむくみによる痛みと共通します」
がぶ飲みがきっかけで起こることもある「痛風」も、もちろん注意が必要だ。

お酒を飲むときには、同時にビタミン補給や栄養バランスの良いおつまみのとり方も重要ということ。
それでも、お酒を飲んだ後、関節や筋肉の痛みが続く人は、一度内科で検査を受けてみたほうが良いかも。
(田幸和歌子)