様々な形状の容器で、様々な味の商品が存在するカップめん。
今ではどんぶり型や皿型などバリエーション豊かな容器形状があるなか、縦型容器を守り続けているのが、1971年に誕生した世界初のカップめん「カップヌードル」。


そもそもなぜ当初、縦型で発売したのだろうか。日清食品の広報担当者に聞いてみた。
「当社が世界初のインスタントめん、チキンラーメンを発売してから10年が過ぎたころ、国内の袋めん市場は飽和状態となり、創業者の安藤百福は世界にインスタントラーメンを広めるために視察に行くことにしたんです。でも、アメリカのスーパーのバイヤーにチキンラーメンを食べてもらおうとしたとき、日本では当たり前にあるどんぶりとお箸がない。そこで、バイヤーがその場で紙コップとフォークを持って来て食べ始めて、それがヒントになったそうです」

安藤百福氏はそれまで「おいしさに国境はない」と思っていたが、それを見て「越えなければいけない食習慣の壁」に気付いたという。
「そこで、カップに入った商品を作ろうと考え、日本に戻ってから、容器の素材や形状を検討しました。
素材では、陶器や金属、紙など、試行錯誤するなかで、当時はまだ魚のトロ箱くらいしか使われていなかった発泡スチロールの『軽くて断熱性も良い』という特徴に目をつけ、アメリカから技術を導入することに。また、形状は、家の中でしか食べられなかったインスタントめんを、いつでもどこでも食べられるように、『片手で持てる』あの縦型容器にしたんですよ」

「カップヌードル」からスタートしたカップめんだが、当初は各社から、同じような縦型容器の商品が多数発売されていたそうだ。
「その後、各社からカップに入ったうどんや焼そばが登場するなかで、もう一度マーケティングをした結果、『うどんは、どんぶりで食べるもの』『焼そばはお皿で食べるもの』という本来の“食べ方のシチュエーション”に着目し、『容器』を切り口にした商品を発売することにしたんです」
これが、1976年に誕生した「日清のどん兵衛」と「日清焼そばU.F.O.」である。
その後、この「どんぶり型」「皿型」などをはじめ、様々な形状の容器が登場することとなる。

では、なぜカップヌードルは縦型を守り抜いたのだろうか。
「縦型以外の容器の商品も、さらにカップめんだけでなく、インスタントめん全部を含めても、常に一番売れているのが『カップヌードル』だからです。
発売から40年経つブランドであり、非常に多くのお客様に愛されています。これはつまりカップヌードルが弊社のブランドというだけでなく、お客様のブランドでもあり、お客様の生活に密着した存在になっているということ。お湯を入れるだけで、ワンタッチで食べたいというニーズが確実にあるため、それを変えることはできないのです」

味、形状ともに様々なバリエーションが生まれるなかでも、やっぱり帰る場所は、この「カップヌードル」ということなのかも。
(田幸和歌子)