チューブでつながれたビル、エアカーで移動する人々。食事はカプセルでとり、家事は全部ロボットがやってくれる。
宇宙都市も建設され、気軽に宇宙旅行へ……。

1950〜70年代の子ども向けの雑誌には、そんな感じの21世紀の未来予想図が、誌面を賑わしていた。

さて、21世紀はとっくにやってきて、もう2012年になるが、今のところ、まだまだそこで描かれていたような未来のかたちは、ほとんどやってきていない。電気自動車はあるけれど、相変わらずガソリンで走る自動車が地面を走っているし、リニアが実際に開業するのもまだまだ先。宇宙都市どころか、一般人が宇宙旅行できる可能性があるんだかないんだか、といった21世紀だ。

当時の子どもたちを夢の未来世界へ誘ってくれた、21世紀の未来予想図のアレコレ。
その「アレコレ」を、当時のままのかたちで、一冊にまとめて紹介しているのが、『昭和ちびっこ未来画報 ぼくらの21世紀』(初見健一/青幻舎)だ。

当時描かれた、未来の文明やくらしの想像図、その記事の見出しを並べるだけでワクワク感がわき起こり、しばし過去へのタイムスリップ気分(未来の話なのだけど)が味わえる。

「夜のないせかい 人工たいよう」
「走れ、空中弾丸列車」
「岩をふきとばし 大地をくりぬく もぐらタンクの大かつやく!!」
「地下10000メートルに挑戦!! 地底探検ロボット」
「驚異の無人手術室」
「科学の夢 宇宙ビルディング」

うーん、近未来ロマン。

いっぽう。
あとがきにも、<「あの頃」の21世紀の風景が夢と希望に満ちたものばかりではなかったのは周知の通り。>と書かれている通り、当時描かれた未来のはなしは、決してすべてがバラ色の未来ばかりではなかった。
いわゆる人類・地球滅亡系の、恐怖とパニックに包まれた未来の世界も、定番アイテムだった。

巨大隕石の衝突、氷河期の襲来、コンピュータのミスで始まってしまう世界戦争……。
ついには宇宙人がやってきて、人類と全面戦争に突入する可能性だってある。いろいろまとめて「恐怖! 地球の7大終末」なんて、お得詰め合わせパックみたいな記事だってある。21世紀の地球、なんだか大変なことになっている。地球、あやうし!
そう、ドキドキとハラハラでてんこもりなのが、「ぼくらの」未来予想図だった。


こういった企画記事で、インパクトを与え、記憶に強く印象を残したのは、小松崎茂や石原豪人らの手による、迫力あるタッチの絵の力によるところがすごく大きい。今回のこの本では、文庫サイズでそれらの絵がそのままオールカラーで掲載されているので、当時の雰囲気が十分味わえる。
これらの絵と、独特のあおり文やコピー。その説得力はやっぱりスゴくて、本を開くと2010年代の今も、ドキドキとハラハラがやっぱりやってくる。そして、そんな記事のひとつひとつに付けられた、筆者の手による「ツッコミ」の視点がまた、いちいち楽しい。

さて2012年の今、こんな感じの世界です。
描かれた未来図の世界は、まだまだだいぶ遠いかもしれません。でも、「本州と四国をむすぶ橋」は実現したし、「お掃除ロボット」も家庭で活躍しています。ケータイやネットの世界など、当時のイマジネーションを超えた21世紀も、到来しました。
夢がなくなった訳ではないけれども、当時の空想の力の、自由さと幅の広さに、あらためて感服です。
(太田サトル)