従来の新海作品ファン、さらにアニメ好き・映画好き以外の層を大量に獲得し、大ヒットを続けているアニメーション映画『君の名は。』。


中高生など若い世代にも観た人、まだ観ていなくとも観たいと思っている人が実に多い。
だが、すでに観た人に感想を聞くと、「感動した」「いい話」「映像がキレイ」などの他に、意外と多くあがってくるのが「わからない」「難しい」という声である。

SNSにはこんな声が多数ある。

「私の頭が悪いんか映画が難しいんか3回くらい見た」
「君の名は見てきた! ちょっと難しい部分あるけど良かった」
「やっぱ新海ワールドは俺には難しいなあ…」
「君の名は。観たんだけどなんかよくわからない話だった。。
以上」
「正直友達とも話したけど90点だと思ってみたら80点だったみたいなよくわからない漢字だったわ君の名は。」(原文ママ)
「君の名は。やばいね 内容少し難しいけど めっちゃ泣いた」

いったいどんなところに「わからない」「難しい」と感じるのか。
「わからない」「難しい」という人たちにその理由を聞いてみたところ、以下のような意見があった。
(※以下、ネタバレあり)


そもそもなぜ男女が入れ替わったのかわからない


主人公の男女が、なぜ入れ替わったのか。「なぜ」というのは、「ヒロインのほうには祖母、母から連なる一族の血があるとしても、男の子のほうがなぜ彼だったのか、その必然性がわからない」というもの。
また、それ以前にフィクションにおいては昔から一つの定番になっている「男女入れ替わり」そのものの意味がわからないという声もあった。


時間軸がわからない

「入れ替わっているときでも、その年月日や時間がわかるものは身のまわりにいくらでもあるはず。全くわからないということがわからない」という指摘のほか、「時間軸が複雑すぎて難しい」「時間軸があちこち飛びすぎて、どうなってるのかわからない」という声があった。


入れ替わってすぐに他の人の生活に対応できるのがわからない

入れ替わることで、周囲に違和感を持たれる行動をしつつも、それなりに学校に通ったりバイトに行ったりしている。「なぜそんなにすぐに受け入れられるのかわからない」「順応性の高さがわからない」という声もあった。

「名前がわからない」がわからない

表題にもなっている重要な「君の名は。」だが、「なぜ名前がわからなくなってしまうのかわからない」という声があった。


なぜこんなにも人気なのかわからない

「確かに映像はすごくキレイだけど、そこまでみんなが絶賛する理由がわからない」「設定や細部に矛盾や説明不足のところがたくさんあって、それがどうしても気になってしまうから、手放しに誉める人がわからない」といった指摘のほか、「これをカップルで観たいという人の気持ちがわからない」「これを見て彼女が欲しくなったとか言う人の気持ちがわからない」という恋愛に関するものも。

個人的には『ほしのこえ』や『雲のむこう、約束の場所』などに比べ、絵柄もポップで明るいし、テンポも良いし、「男女入れ替わりモノ」だし、新海監督の好きなモノがギュッと詰め込まれたわかりやすさ、見やすさがあると思った。

だが、「わからない」「難しい」の意味には、大きく分けて「設定・時間軸がわからない」という意味と、一部で見られる「そこまで誰もが絶賛する理由がわからない」の意味があるようだった。なかには、自虐的に「自分、頭悪いのか」と呟くタイプがいる一方で、高偏差値の高校生たちにも「わからない」と言う人は多数見受けられた。

細かな矛盾などが気になる人は除いて、漠然と「難しい」「わからない」と感じる人は、もしかしたら幼少期のフィクションとのふれあいの少なさや、SF的素地のなさなどが影響している部分もあるのかもしれない。
(田幸和歌子)