あなたの死後、twitterやmixiやブログが、そのまま晒され続けていいだろうか?
パソコンに入ってるデータは、だいじょうぶだろうか? エッチな画像だらけだと、さすがに親族も悲しみのなかで、へたへた〜ってなっちゃうぞ。
ネットゲームやケータイ、毎月支払ってるものは、死後どうなるだろう?

死後の処理って、もしかしたら、ちゃんと考えないと、ヤバいんじゃない?

『オタクの逝き方』って本が、これ、ものすごく切実な内容だった。

11/7に『夜のゲーム大学5』というイベントをやる。そこで、遺作の構想を語ろうと考えていて、その資料で買った。たいして期待してなかった。
萌え萌えな表紙で、ソフトカバーで薄い本。
このタイプの本は、たいがい中身もぺらぺら。ブログ記事の水増しだなこりゃ、って内容の本も多い。


ところが! 『オタクの逝き方』は、リキが入った一冊だった。
「第一章 ヤバいデータ満載のPCや携帯電話はどうする!?」では、「ヤバいデータを死後、消す方法」の紹介から、「故人のPCの取り扱い方法」「ネット関連のサービスはどうなるのか?」「ネット関連以外にも気をつけたいサービス(DVDは借りてないか!?)」など、画面写真と詳細な解説で、しっかり死後準備できるハウツーがぎっしり。
ソフマップの担当さんの「PC買い取り事情」インタビューつきだ!

第二章は「遺されたコレクションはどう処分すればいいのか?」
コレクションの処分方法、覆面買い取り査定調査、サブカルショップ「まんだらけ」インタビュー。
「書籍系、映像ソフト・ゲーム系、フィギュア系、プラモデル・ガレージキット系、キャラクター玩具系、CD・レコード系」に分けて紹介される買い取り事情と、オススメ専門ショップは、まだ死んでなくても金がなくなって死にそうになったときには即役立ちそうだ。
さらには、取り扱いに注意が必要なコレクションとして「痛車系、銃刀系、特殊なペット系」の取り扱いも!
人目が気になってしまう恥ずかしいコレクションの取り扱いも詳細に書いてある。

たしかに、アダルト等身大人形「リアルラブドール」を処分するのは、なかなかタイヘンそうだ。ご近所に見られると恥ずかしい。中は金属骨格なので解体も困難。かといってこっそり捨てて死体と間違われて大騒ぎになるとシャレになんない。どう処分するの!?
リアルラブドールのメーカーさんのインタビューによると、無料で引き取る「里帰り」システムがあるとか!
“「里帰りシステム」で弊社に戻ってくるものの中には、凄く綺麗で、10年ぐらい使っていても、とても丁寧に扱っていただいていたなと感じる個体もあれば、「これはもう死んでいる!」と表現できるような状態の個体もありますね”(P81)

第三章は、「オタクらしい遺言書を作成しよう」だ。この章も本格的。

「財産相続はどのような仕組みか」からはじまって、遺産相続に出てくる用語の解説、法的に有効な遺言書の書き方、オタクのコレクションはどこまでが相続財産になるのか? 故人のコレクションを遺贈されると贈与税はかかるのか? などなど。
さらには、オタクらしい遺言の「好ましい例」と「好ましくない例」まで、ばっちり書いてある。
いくらガンダムが好きでも、遺言書に「赤い彗星こと 尾宅一郎」って書いちゃダメ。

最後の章に、孤独死したオタク仲間についてのインタビューが載っている。
ゲームオタク仲間の友人Rを最近、見ない。どうしたんだろう?と彼の住む公団住宅へ。
いろいろ不審な状況だったので、隣の人に事情を説明して、部屋からベランダ、窓から室内に入ると、R氏は死んでいた……。
そこからがたいへん。
警察に根掘り葉掘り聞かれるが、故人との関係が説明できない。なにしろゲーム仲間だったので、ゲーム趣味以外のことをほとんど知らない。故人と親しかったことをがうまく説明できないのだ。
その後も、友人はたいへんな苦労をする。
業者からのコレクションの救出、葬儀を行わない親族とのやりとり、コレクションを巡る友人の裏切り。
最後、どうにか、ささやかながら「故人を送る会」を行うことができたと語るシーンを読んで、ちょっと泣きそうになった。すごくいいオタクにとって切実なインタビューだ。

「死んだオタクのところに美少女死神がやってくる」ってマンガを随所にはさみ、表紙イラストは「松本ドリル研究所」、「アナタは大丈夫? 今死んだらヤバい度チェック!」や、「パターン別「俺逝」トラブル傾向と大作」なんてのもあって、萌えエンタメ本としてもしっかり作り込んである。
いや、ブックデザインは軽いけど、『オタクの逝き方』、充実した良書である。オススメ!(米光一成)