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文庫解説って誰がどうやって書いてるの? 書評家・杉江松恋が教えます

2011年10月12日 11時00分 ライター情報:杉江松恋

『赤い糸』吉来駿作/幻冬舎文庫
『明日の話はしない』永嶋恵美/幻冬舎文庫

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「文庫には解説がついていることが多いけど、あれってどうやって書いてるの。教えて!」
はーい。
というわけで呼び出されてきました、杉江松恋です。文庫解説たくさん書いてます。
解説者がみんな同じ書き方をしているわけじゃないでしょうけど、私の例でよければお話しますよ。商売のお内証を明かすようだけど、ま、いいよね。

0)依頼を受ける
当たり前だけど、ここから始まります。編集者からメールか電話がかかってきて依頼されます。逆に自分から編集者に「××さんの解説を書きたいからオレ予約ね!」なんて言っても聞いてもらえることはまれです。
たまたま今週、幻冬舎文庫から私が解説を書いた本が2冊出ます。1冊の吉来駿作『赤い糸』は、新人賞を獲ってデビューしたときに対談で採り上げたのを編集者が覚えてくれていたようです。もう1冊の永嶋恵美『明日の話はしない』は、単行本が出たとき帯に推薦文を書きました。そのご縁で依頼があったみたいです。ちょうどいいので、この2冊を例に引いていきましょう。

1)本を読む
これも当たり前ですが、読みます。既読だろうが書評をやっていようがなんだろうが、とにかく一回以上は読みます。読み方も人によって違うと思いますが、私の場合はポストイットを貼って必要な箇所をチェックします。
 通常の読書の場合ポストイットを貼るのは、
・あとで伏線になりそうな思わせぶりな文章。
・作者の癖がよく出ていたり、自分の琴線に触れる特徴的な文章。
・新しい登場人物が出てくるところ(特に翻訳小説の場合。そいつが何者かを忘れてしまうことが多いので)。
・難解で、繰り返し読む必要があると思った箇所。
・明らかな誤植。
 ぐらいなのですが、解説の場合はこれに、
・「ここは引用に使うと読者の気を引けそうだな」と思う文章。
・生年や住所、職業など、登場人物のプロフィールが書かれた箇所。
 もチェックするようにします。

2)周辺書も読む。
当該書を読むだけでは下調べは終わりません。その作家が過去に出した本も可能な限りすべて読みます。私が最初にやることは、国立国会図書館のサイトで検索をすることです。作家名で検索をすると刊行物の一覧が出ます。これを刊行年順にソートして並べたものをコピーして保存し、作品リストの元を作ります。
このとき注意しなければいけないのは、文庫化作品なども国会図書館の検索では出てくることです。これを省いて、重複のないリストを作る。吉来氏の場合現時点で著書は3冊なのでリストを作るのは簡単ですが、第一作の『キタイ』が文庫化時に『ラスト・セマタリー』と改題されているので新作と間違えないように要注意。
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ライター情報

杉江松恋

1968年生まれ。小説書評と東方Projectに命を賭けるフリーライター。あちこちに連載しています。

URL:Twitter:@from41tohomania

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