えりも町観光協会から、「ERIMO MAGAZINE」という小冊子が発行されます。
無料配布です。

で。イラストを見ていただければわかると思いますが……思いっきり同人誌っぽいでしょう。
実は表紙もPP加工されていて、しっかり厚い紙でできています。完全に同人誌の印刷手法で作られています。
ただでもマイナーな「えりも町」という地域で作られた公式パンフが女の子キャラ。ちょっと思い切った感じがします。


まずですよ。
北海道のえりも町って知ってますか?
はい、名前は聞いたことあるけど場所がいまいちわからない。なるほど。
森進一が「襟裳岬」っていう歌を歌っていた。そうですね。
観光が大きな収入源の町でも、まずそもそも「知らない」という現実の壁は大きくそびえ立っています。

一応説明しておくと、北海道の、中心の日高山脈をずーっとたどった、とんがったところが襟裳岬で、そこを含む周辺がえりも町です。
海と大地のふるさと えりも町
人口六千人弱の小さな町で、主な収入はこんぶなどの海産物と観光です。
とはいえやはり、「えりも町」という名前すら知らない人の方が圧倒的に多いんだよね、と商工会の人は言っていました。
たとえどんなことであろうと、その町の名前と位置を知ってもらわないことには「始まり」すらしない。これが多くの都市が抱えている苦しい現状なのです。
森進一の歌は、もう若い人にはわからないのです。


今回、ぼくもこの「ERIMO MAGAZINE」の編集に携わっています。
とにかく同人誌みたいな、取っておきたいと思うものにしたい。だからペラペラの紙じゃなくてしっかりした紙にしたい。
写真を載せたパンフではなく、写真を元にイラストのみで構成された本でいきたい。
そう言われました。
じゃあ「萌え」が売りなんですか?と聞いたところ、「ちょっと違うんだよね」と言われました。

この町に住む女の子キャラが、えりもでいきいきと過ごしている様子を見せたい。
スポーツギアを持ってえりもの自然の中を楽しんでいる女の子を魅力的に見せたい。
個人的には「萌え町おこし」は嫌いではないんですが、安易だと残らないものになっちゃうんだよなあ、と感じていました。でもそこまで芯がしっかりしているなら、と感じて引き受けさせてもらいました。

ネットに詳しい方ならご存知だと思いますが、えりも町が女の子キャラ、ショートカットスパッツ元気っ子の岬襟萌(みさきえりも)と、黒髪ロングお嬢様の千島霧夏(ちしまきりか)は、「青春☆こんぶ」というおみやげ品から生まれたキャラクターです。
青春☆こんぶ
これがまた色々苦難の道を経たキャラクターなんです。

 
2008年、「萌え絵の日高昆布を作ってみないか?」という話が上がりました。
某SNSでイラストレーターを募り、その中の一人が選ばれイラストを作り、商品開発が行われました。ちょうど時期的に2008~2009年は各地で「萌え絵」町おこしがブームになった時期でもあります。テレビや新聞でも紹介されました。
ところが、ここで事件が発覚します。
最初に商品に使われたイラストが、盗作(トレス)だったのです。

これが疑惑ではなく事実だと判明。商品は販売停止と回収され、ネットでも騒ぎになりました。
商工会の人も、あの時は潰れた・終わったと思ったね、と苦笑いしていました。

ところが、この「青春こんぶ」、思った以上にネットでの反響が大きく、多数の応援イラストが全国各地から寄せられました。
「青春こんぶ」に応援イラスト - ITmedia ニュース
そこで新たに踏み切って、2010年、新パッケージイラストのイラストレーターを公募しました。
自分もそのとき選考委員になったのですが、アマチュアからプロまで多数の応募がありました。
一回トレス疑惑になったところにイラストレーターが集まるのか?と疑問もあったようですが、結果は大盛況。
審査の結果、華々つぼみがメインイラストレーターになります。あとから明かされたのですが、なんとこの時高校生。
現在は漫画家プロデビューを果たし、「青春☆こんぶ」のマンガを描きながら、「放課後アトリエといろ」、「コドクの中のワタシ」などを連載しています。
ノートの片隅から
確かに最初のイラストを見た時点で「うまい」と言われていましたが、この展開はびっくりです。

今回の「ERIMO MAGAZINE」は、こんな流れを受け継ぎながら、「青春☆こんぶ」とコラボして、えりも町観光協会から正式に発行されたものです。
中身は華々つぼみはもちろん、「ぶらっくろっくちゃん」のringoなどイラストレーターが多数参加。
ほぼ全ページイラストで、えりも町の見所を紹介している実用的な本になっています。
最大のテーマのは、「えりも町の自然の中を楽しむ女の子達」。なぜ女の子かって……イキイキとしてる女の子みたいじゃないですか。ねえ。
自転車、ノルディックウォーキング、カヤック。えりもで様々なアウトドアスポーツを楽しんでいるイラストが満載になっています。
もちろん、ただ絵を見て楽しむだけじゃなくて、実際にどうすればそれができるのかも解説されています。
観光小冊子として、宿泊施設一覧も掲載されていますので、旅行のお供にもなります。
そうじゃなくても、「えりも町が作った女の子だらけの変わったパンフレット」ということで見るのも面白いと思います。

制作の一端に関わって、実際にえりもに取材に行って一番思ったこと。
やっぱりどんな手段でもいいから知ってもらわないともったいないなと。
どの町でもそうですが、どんないいものがあっても話題にすらならなかったら意味がないんですよ。
えりもは美味しいものいっぱいありますし、カメラ片手に写真撮りまくりたくなる景色でいっぱいでした。ちょっと風と霧がすごいんですが、観光するならそれすらも独特で面白いはず。
知ってもらいたいから作られた「ERIMO MAGAZINE」。まるっきり同じ風景があるので、実際行って探してみるのも楽しいです。
商工会の人たちは前向きに「青春☆こんぶ」プロジェクトを推しています。キャラクター霧夏と襟萌は、自分たちの町に住む中学生の少女。町の一員なんです。

配布は3月16日午前9時から。
えりも町商工会 公式ホームページ: 【速報】美少女イラスト小冊子 ERIMO MAGAZINE 発刊!
無料配布、数量限定となっているそうです。
(たまごまご)