蚊に刺されたりして「かゆいーーー!」というとき、どうする?
「腫れたところを爪で×をつける!」という人も多いだろう。
だけど、どうして、そんなことでかゆみがやわらぐのか?
その謎の答えは『なぜ皮膚はかゆくなるのか』に書いてあった。

“かゆみとは、痛みを与えることで一時的に忘れられる感覚”だからだ。
その仕組みも、本書でていねいに解説されている。
著者は菊池新。菊池皮膚科医院のドクターで、『そのアトピー、専門医が治してみせましょう』『Dr.菊池の金属アレルギー診察室』などの著作がある。

かゆみは痛みで忘れられるが、「かゆみは軽い痛みである」は完全に間違い。
一昔前 、そういう仮説もあったらしいが、いまでは完全に否定されている。

原因物質が異なる。
さらに「かゆみが伝わる神経線維と、痛みが伝わる神経線維は、基本的に異なっている」ということが最近になって判明した。
どうして「最近になって」ようやく判明したのかというと、いままでは実験としてかゆみを起こすことが難しかったのだ。
“最近になって電気刺激にかゆみを引き起こすことが可能に”なり、研究が進んだ。
ちなみに「くすぐったい」と「かゆい」も無関係。

『なぜ皮膚はかゆくなるのか』には、かゆみに関する「へぇーー」と思う豆知識が満載だ。

「掻けるところしかかゆくならない」も、そのひとつ。
たしかに、お腹の奥が痛くなることはあっても、かゆくなることはない。頭の中がかゆくなることも、ない。
喉はかゆくなるが、喉の奥の掻けないところはかゆくならないよなー。

本書は、四部構成。
第一章 かゆみの本能と感覚
第二章 “無性に”かゆくなる皮膚のしくみ
第三章 医者にかかる前に知っておきたい治療法
第四章 かゆみにまつわる実際の症例

かゆみに悩まされている人だけでなく、「かゆみって何だろう?」という好奇心のある人にもオススメ。

(米光一成)