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同時多発テロから14年…イスラム教徒に対する偏見はどうなっているのか『日本の中でイスラム教を信じる』

2015年9月11日 16時00分 ライター情報:香山哲
「9月11日という日付を見ると、すぐにあのテロを連想する」という人もまだまだいると思う。だが、そんな衝撃が風化する前に、ISによるテロや人質事件なども最近起こっている。

そんな状況で、イスラム教徒に対する偏見はどうなっているのか。10年以上に及ぶ、立場の異なるさまざまな人や組織への取材をおこなった『日本の中でイスラム教を信じる』という本が、とても面白かった。
『日本の中でイスラム教を信じる』佐藤兼永/文藝春秋

イスラム教徒は、16億人いる


日本人にも殺人事件を起こす人間がいるように、イスラム教徒にもろくでもない人間はいる。しかも、イスラム教は世界中に信者が16億人いる。そんな集団に、何かレッテルを貼ることに意味があるだろうか。彼らに共通することといえば、人間であることと、あとはイスラム教徒であることぐらいしかない。

この本は、そんな当たり前の、しかし忘れてはいけない地点からスタートする。ある人に取材をして聞いた話は、イスラム教徒の「16億分の1」でしかない。そういう謙虚な姿勢が、一冊を貫いていて、読む方も誤解が少なくて済む。

日本にいる、多様なイスラム教徒


日本在住のイスラム教徒は、本書によれば推定11万人。そして、年々イスラム教に興味を持つ人は増えているという。よくイメージされる、「日本にやってきた外国人イスラム教徒」だけではない。

外国人同士から日本で生まれた子ども、生まれも育ちも日本人のイスラム教徒、イスラム教徒と結婚して入信した日本人、さまざまな形がある。見た目が日本人だと、会社でスカーフを身につける許可が得られにくい。宗教に慣れていない日本社会の課題も多い。

歩み寄って日本に溶け込む


食事問題では、豚肉はもちろん、料理酒やみりんなどのアルコールかどうか微妙なものなども悩ましい。ある子は、その日その日の学校給食と同じメニューのお弁当を親に作ってもらっていたり、努力や工夫がすごい。

理解されるだけではなく、自分からも歩み寄っている。イスラム教では仕事も非常に大切とされているので、「スカーフは許されていないけど、仕事を優先」という人もいる。一人一人が、置かれた状況に合わせて考えて生きている。ただ教えに従うなんて単純な世界じゃないから、みんな頭を使っている。

ある子は、給食で食べられない物も多いが、「あまったパンや牛乳をじゃんけんで取り合う」日本でおなじみの「牛乳ジャンケン」などには積極的に参加しているという。参加できるところで参加して、みんなと時間を過ごす。

ライター情報

香山哲

漫画やゲームを制作するチーム「ドグマ出版」主催。著作に『ランチパックの本』や『香山哲のファウスト1』(文化庁メディア芸術祭推薦作品)など。

URL:Twitter:@kayamatetsu

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