第4週「私がみつけます!」 第20回10月23日(火)放送より
脚本:福田 靖 
演出:安達もじり
音楽:川井憲次
キャスト:安藤サクラ、長谷川博己、内田有紀、松下奈緒、要潤、大谷亮平、
     桐谷健太、片岡愛之助、橋本マナミ、松井玲奈、呉城久美、松坂慶子、橋爪功ほか
語り:芦田愛菜
主題歌:DREAMS COME TRUE「あなたとトゥラッタッタ♪」
制作統括:真鍋 斎
「まんぷく」20話。萬平さん「おいで」長谷川博己の2大魅力
イラストと文/木俣冬

20話のあらすじ


昭和19年(1944年)夏、戦況はますます厳しくなって、克子(松下奈緒)一家は疎開、秋になって東京にも空襲が来て、昭和20年、3月、福子(安藤サクラ)もついに疎開を決意する。

戦争が激化


画が凝っている安達もじり演出と19話で書いたが、20話の冒頭は19話のラストの使い回しに、夏になってからのポスターの画などがプラスされた。とにかく戦況が悪化している。北九州から空襲されたことをはじめとして、大阪の空襲の前、爆弾の代わりに警告の書かれた紙が上空からばらまかれたということなどが描かれた。
こわいこわい。

戦争描写がいやだという人もいるが、例えば、ベストセラーになった矢部太郎の漫画「大家さんと僕」の大家さんはNHKが好きで(書籍のプロフィールより)、こんな矢部の談話がある。“大家さんは8月が一番好きだと言っていました。理由は戦争の番組をたくさんやってくれるから。そして、大切な人たちは戦争に取られたくないともおっしゃいました。僕にとっても8月は特別な月になりました”(2018年8月30日オリコンニュースより)。
大家さんが朝ドラを見ていたかわからないが、私の家のご近所のお年寄りは「べっぴんさん」の闇市描写などをなつかしく見ていると言っていた。こういう人も実際いるのだから、戦争描写も必要だ。当時を知らない人が増えたからこそ、いっそう力を入れて描いてほしい。

理性的なドラマ


こんなときこそ食べたいのに、ラーメンの屋台も店じまいしてしまい、親友たちも疎開していく。
萬平は理性的に戦況を認識し、福子も怖くて疎開したいが、鈴(松坂慶子)が家を守ると譲らない。

「おまえとお母さんは感情的になりすぎる、話が本筋からずれるんだよ」と萬平はたしなめる。
女性は感情的、男性は理性的という類型的な描き方だと思う人もいるかもしれないが、男女関係なく、あくまでもキャラクターということで。
朝ドラの主人公はたいてい感情で突っ走り、わちゃわちゃしているところを男性が困りつつも広く優しく受け止める図式も多いなか、夫がはっきり批判することですっきりした人もいるだろう。長谷川博己の喋り方がきわめて理性的で説得力がある。

今回「まんぷく」が理性的であるのは、幽霊の描き方にも見られる。
幽霊は朝ドラ名物であったが、今回は、生きている者の願望の投影であることが明確に描かれた。
鈴の見る咲(内田有紀)は鈴のことを肯定し、福子の見る咲は福子のことを肯定する。「わろてんか」で毎週土曜日に主人公の亡くなった夫が出てきたのも、彼女が彼を通して自分と対話しているという意味合いだったと思うが、毎週幽霊が出て来て戸惑う人もいたようだ。
「まんぷく」のような描き方をすると、すでに亡くなった人物が何度も出て来ても、受け入れやすいだろう。

でも色気も忘れない


鈴と福子が感情的だと言う萬平だが、子どもができないことを責められると言葉少な。
「戦争には行かない 子どももつくらない そういう人は非国民と呼ばれますよ」と鈴。国をあげて「産めよ 殖やせよ」の時代だったから。

萬平は、憲兵隊につかまって拷問されたことによって身体が弱っていて、いつも腰が痛そう。腰をかばって歩く姿はお年寄りのようだ。
鈴に責められて誤魔化して、「いい天気だ」とぼんやりつぶやくところは笠智衆かと思うほど。
が、しかし、福子に腰をさすってもらって、その後、仰向けになり「おいで」と腕枕のような体制になるところでは、長谷川博己の色気が発揮され、女性の欲望を刺激するのであった。
知性と色気、長谷川の2大魅力を福田靖、よくわかっている。

色っぽい相手役といえば「カーネーション」の綾野剛、「あさが来た」の玉木宏などが思い出されるが、当時、綾野は30歳、玉木は35歳。長谷川は41歳。40代でも瑞々しい色気を発揮するとは空恐ろしい。

「あぐり」で野村萬斎がブレイクしたのだって31歳の時だもの。
長谷川の知性と色気で半年間、引っ張れるか、これからが楽しみだ。
(イラストと文/木俣冬)

連続テレビ小説「まんぷく」
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~

朝ドラ「べっぴんさん」もBS プレミアムで月〜土、朝7時15分から再放送中。 
こちらも安達もじり演出週 「べっぴんさん」第20話レビューはコチラ