女子高生YouTuberが渋谷で「フリーおっぱい」という日本の闇
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女子高校生Youtuberの「あきえ」さんという方が、渋谷の駅前広場で「フリーおっぱい」と題した企画を行い、60名の男女が彼女の胸を揉んでいる動画をYoutubeにアップロードしたことで、炎上したようです。

さらに、「フリーキス」と題して見知らぬ男性とキスをする動画もアップロード。
当然ながらそれらの動画はYoutubeの規約違反により既に削除されていますが、複数のアカウントにより違法にコピーされ、様々なサイトに転載・拡散されてしまっています。

私もネットに転がっていた映像を見てみましたが、大人たちが少女の肉体を搾取するという人権侵害を嬉々として行っている様子に、「気持ち悪い」の一言以外思いつきませんでした。


おっぱい募金とよく似ている


近年、Youtuberによる過激な投稿が度々問題視されていますが、今回の投稿はとりわけ日本社会の闇を映し出しているように思います。

2年前にはスカパーで放送された「おっぱい募金」という企画がネットで大炎上し、海外でも女性蔑視として報じられたことがありました。来場客が1000円を払って女性の胸を揉み、運営側は募金に回すということでしたが、会場で行われていることは性風俗産業で行われている性的行為そのものであり、それをスカパーという公共性のある組織が絡んでいたことや、来場者が7000人もいたという点が非常に問題だったと言えます。

女性の胸をモノ化して、公然と消費する行為は人権の侵害かつ女性蔑視であり、現代社会では許されざる行為だと思いますが、今回のフリーおっぱいも、形式としてはそれとかなり近いケースと言えるでしょう。


Youtuberの少女はJKビジネスの被害者だ


さらに今回のフリーおっぱいは、人権侵害を受けた被害者が16歳の女子高校生とされています。つまり児童という点がさらに問題です。
構造的に考えれば、Youtubeを通して広告収入を得るというタイプの「公然JKビジネス」と言えるのではないでしょうか。

確かに彼女は企画を自ら積極的に行っています。そのため、彼女の行動はいわゆる非行の一種と言えるかもしれません。ですが、器物破損等の非行とは異なり、未成年者の性の商品化は大人の側が反応をせず、ただ放置をすれば良いだけです。放置すれば商品化の事実は成立しません。

ところが、実態は非行に走っている少女を対象に、大人の側が自らの意思で性的な搾取という加害行動を取ったことで商品化の事実行為が発生しました。
ですから、事実行為を発生せしめたのは大人の側であり、全て大人が悪いと思います。

本来、非行に走った少女がいれば、注意したり、叱って止めさせたり、保護すべきことが大人の役割であるにもかかわらず、それを放棄して、あろうことか加害者に回ったわけですから、その罪は大きいと言わざるを得ません。警察に通報しなかった傍観者もそれに準ずる罪に値すると思います。


大人たちの「女叩き」「子供叩き」「被害者叩き」


それにもかかわらず、インターネット上の投稿を見ると、揉んだ加害者である大人ではなく、揉まれた被害者である少女を責める投稿のほうが多いように感じました。加害と被害の構造を掴めず、大人たちが「女叩き」「子供叩き」「被害者叩き」に走っているわけで、かなり異常な状態です。被害者は自分が被害に遭ったということを認識してはいないのかもしれないですが、彼らのやっていることは構造的にはセカンドレイプです。

また、被害者女性の個人情報の特定も始まってしまっているようで、本当にこの社会には歪んだ心の持ち主がたくさんいることを痛感させられます。
インターネット上で人物特定を行うこと自体決して好ましい行為とは言えませんが、仮に特定するべきとしたら、加害者である揉む行為をした側ではないでしょうか?

それにもかかわらず、彼らは被害者を特定して晒そうとしているわけで、その根性は軽蔑に値すると思います。


本人が合意していても性的搾取に該当する理由


なお、このように公然と女性の肉体を搾取する問題に対して批判を展開していると、必ずと言っていいほど、「本人が合意しているのだから問題無い」という反論があります。実際、おっぱい募金の際にも、性的自己決定権を根拠に、「触らせるほうが合意しているのだから良いではないか」という意見が多数見られました。

確かに権力による個人の自由への不必要な侵害という観点もあるため、自分の胸を不特定多数の人に触らせるという行為そのものを完全に禁止にすることにはやや慎重である必要があると思います。

ですが、今回のケースは渋谷の駅前ということもあり、おっぱい募金と同様、明らかに個人の自由の範囲を超えて、社会性を有する行為と判断できます。こっそりと誰の目にも止まらないゾーニングされた環境ではなく公然と社会の中で行われているわけで、社会の中における「女体のモノ化」という歪んだ状態をさらに膨張させ、人権侵害のリスクを高めることは間違いありません。

女性の体を搾取する行為が公の場でエンターテインメントとして行われることは、「女性の体をこのように扱っても良い」ということのメッセージになりますし、社会がそれを許容することになります。
物事を平面的にしか捉えられない人にはこのような構造的な問題を理解するのは難しいのかもしれませんが、ステークホルダーが多数発生した時点でもはや本人の意思は関係無いのです。


加害者には法的な罰を与えるべきだ


今回のフリーおっぱいに関して、警察は可能であれば加害者60名全員を公然わいせつ罪、難しい場合は迷惑防止条例違反等で立件するべきでしょう。現場の映像自体が残っており、さらに渋谷の街のど真ん中ですから監視カメラ映像も残っているはずです。あくまで素人感覚ですが、これまでのケースから考えると可能性はゼロではないように感じます。

もし適用が不可能の場合は、早急に対策をして法律や条例を整備してほしいと思います。本来、このような行為は「わいせつ的な行為をしたから問題だ」というよりも、女性の体を搾取して、人権侵害を行うということのほうが問題であり、保護法益は人権であるべきです。
それが現状でしっかりと守られる法律がないのは大変由々しき状態です。

海外では、ハリウッドを発端として、芸能人によるセクハラに対する告発が相次いでいますが、残念ながら日本の芸能界の動きは鈍く、告発する人は出てきていません。もちろん、それは告発したらつぶされると感じているからだと思いますが、人権が蔑ろにされがちな国であることを改めて痛感させられます。

今回の人権侵害がマヒしてしまった少女の行為も、このような人権軽視という状況の中で生まれたのでしょう。「プライベートゾーンはむやみやたらに触らせてはならない」のは、海外では未就学児でも学ぶ性教育です。それすらもまともに行わない不作為の日本国家そのものが、もはや女性の人権を侵害する加害者ではないでしょうか?
(勝部元気)