若い人たちの透明感のあるすべすべの肌、シワのない手の甲、ツヤのある髪。見えなくても内臓、血管、神経だって生き生きとしているに決まっている。
高齢の女性などが、若い人たちからエネルギーと若さを分けて欲しいと言うことはよくあるが…。

「若さとは本当に素晴らしいもの。若者の血を高齢者に輸血してあげると、老化をくいとめる効果があることがわかってきました。」

中高年の女性が値の張るアンチエイジング系化粧品ばかりか美容施術に興味津々という現代、「これはかなりのビジネスチャンスにつながる」とある商売が話題を集めている。このほど経済情報サイト『ビジネスインサイダー』が、医療保険の適用には決してならないであろう面白い商売を始めた男性の話題を紹介した。

カリフォルニア州モントレーで、“食べると不老不死が約束される神の食物”を意味する『Ambrosia(アンブロージア)』という会社を興したジェシー・カーマジンさん(33)。スタンフォード大学で医学を学んだ後、老化や健康寿命などについて研究する「National Institute on Aging(アメリカ国立老化研究所)」のインターンとなった。
そこで知ったのが、“若いマウスと老いたマウスの腹腔を繋げる「並体結合」という手法を使い2匹の血液を循環させたところ、高齢のマウスが活発さと健康を取り戻した”というカリフォルニア大学バークレー校の生物工学教授による2005年の研究発表であった。

「若者の血液で高齢者の老化を食い止められるかもしれない。」

カーマジンさんはこのことに固執するようになり、やがて自身でアンチエイジング・ビジネスを起こすことを思いついたという。献血者は16歳から25歳までと限定し、35歳以上の被験者には2日をかけて1.5リットルの血漿成分が注入される。費用は8000ドル(約90万円)にもなるが、同社は35歳以上の被験者600名を募集しており、これまでに30名がすでに完了。経過を観察したところ、いずれも満足な結果を得たとして彼はこう語る。

「参加者に対してはバイオマーカーと呼ばれる健康状態を測定・評価する血液検査が輸血前と輸血1か月後に行われ、100を超える項目が比較分析されます。
病気が治るといったことまでは保証できません。ただ若者の血液を輸血された高齢者は外見が若々しくなり、筋力がアップするようです。この目で数十例ほど確認しました。」

ただし『Ambrosia』に対しては批判も多い。高齢者に対する若者の血漿を用いた治療法というものが可能かマウスでの実験を続け、2014年に「有益性は不確か」と結論付けていたスタンフォード大学の神経科学者は、アンチエイジングといった魅力的な言葉で高齢者の期待をあおっては収益を上げる『Ambrosia』を痛烈に批判している。

またカリフォルニア大学バークレー校のランヴィーア・ガスワラ博士も、昨年11月に反論を発表した。実際は古い血が薄められる程度のことであり、若い血が古い体を生き生きと蘇らせるなどと考えるのは都合がよすぎるとのこと。
むしろ若者に高齢者の血液を輸血した時に起きる逆のダメージ、つまり老化こそ医学的には重要な課題であるとしている。

格安料金で闇の医療行為を行うエセ医師がはびこっているアメリカだけに、関心も高いが慎重論もおおいに飛び交っているもようだ。

出典:http://metro.co.uk
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)