漫読家「東方力丸」に苦手な漫画をたずねた
(上)つげ義春「もっきり屋の少女」を漫読。雪の残る井の頭公園にて(下)少し離れるとこんなに味のある風景
下北沢駅前や吉祥寺井の頭公園で、ボサボサ頭に鉢巻き姿の男性が漫画を朗読している姿を見かけたことはないだろうか。彼の名は東方力丸。
職業は「漫読家」。道端に並べたマンガの中から、お客のリクエストに応じて漫画を読みあげる。その独自のパフォーマンスはTVを始め、すでに様々なメディアで紹介されているのでそちらで見かけた方も多いかも知れない。

自由自在に声色を使い分け、「ドラゴンボール」から「きょうの猫村さん」まで、あらゆる漫画を読みこなす東方力丸氏。その熱演っぷりを眺めているうちに「読むのが苦手な漫画ってあんのかな?」と意地悪な質問を思い付いたのでお話を伺ってみた。

まずは、「漫読」を始めたきっかけを。

「地元の(神奈川県)茅ヶ崎の駅前でパントマイムをやってらっしゃった方がいて、それを見て私も何かやりたいなと思いまして、フォークソングが好きだったもので当初はギターの弾き語りをしていたんですが、ちょっと飽きて来た時に漫画でも読んでみようかと思いまして。始めたのはかれこれ10年程前ですかね」

茅ヶ崎なんていうと、サーフィンなどのマリンスポーツがさかんでカッコイイイメージがあるんですが、思春期にそういった方向には進まれなかったのですか…?
「いや、全然ですね。賽銭泥棒に明け暮れていて(笑)」

東方力丸さんは、漫画のぎっしり詰まったカートを引きながら漫画読みをしているのだが、それらの漫画はどのような視点からチョイスされているのだろうか。
「いつもだいたい100冊以上は持って歩いているんですが、お客様から頂いたりとか、入手法は様々ですね。特に思い入れのあるものはいつも持っていますけど(力丸さんは西原理恵子さんの漫画が大好きだそう)。」

意地悪な質問かもしれないのですが、これは苦手だ、読みたくない、という漫画って力丸さんにあるんですか?
「ずばり、『萌え系』ですね。というのは女の登場人物が二人以上出てくると困ってしまうんですよ。
声色が全部一緒になってしまって(笑)。誰が誰だか全く分からないという…」

と、女性キャラの声を演じるのが苦手な力丸さん。これはこれは弱点を発見してしまった。

最後に今年の抱負を聞かせてください。
「社会復帰ですね(笑)」

そんな東方力丸さんのパフォーマンスが見たいあなたは、土曜日の夜(19時頃?)の下北沢駅前か日曜日の昼(14時頃?)に井の頭公園へ出掛けてみてください。急な用事が入らない限りは、少しぐらいの雨降りでも「漫読」しているそうですよ!
(スズキナオ)