前半から。

さて後半戦トップバッターは「最初は漫画家である水木先生と奥さまの話だ、という興味で見始めたけれど、次第に脚本の丁寧さに惹きつけられた」語る、野間美由紀さんだ。


◆野間美由紀さん @rose_m
話を盛り上げるためだけの無駄なエピソードなどを安易に入れないのに、情感たっぷりに描いている見事なドラマだったと思います。前半に登場した小道具をきちんと使い切ってくれたところなど、見ていて気持ちが良かったですし、特に初回に出てきた「森で出会った少年」の話をラストできちんとまとめてくれたところも感動的でした。

これまで、漫画家を登場させたドラマをいくつか見てきましたが、最もリアルに漫画家を描いていた作品だと思います。Twitterで漫画家さんたちと一緒にドラマを見て共感できたのも、リアルだったことが大きかったのでしょう。毎日のように誰かが「本日のゲゲゲ」絵をアップしていたり、最終週には大勢の方がアイコンを水木作品にちなんだものに変更したり、大きなムーブメントだったと思います。

女性の描き方としては古風なタイプだったのかもしれませんが、それも原作者である水木先生の奥さまの実話だからこそ尊重できますし、逆境にあってもめそめそせずに明るく振る舞ってきたところにお二人の人生の深さを感じます。


これまで最初から最後まで全てを通して見た連続TV小説は初めてです。再放送の回数が多いこととNHKオンデマンドがあったことも大きいのですが「一話たりとも見逃したくない」と思わせる力のある作品でした。
(のまみゆき/近著に『パズルゲーム☆はいすくーる×3』『パズルゲーム☆トレジャー 3』など)

◆ひうらさとるさん @marikosatoru
ゲゲゲがすごかったのはまず漫画家の気質とか作品への取り組み方、担当さんとの関係性など本質的なところでこんなにリアルなドラマは初めてみたと思いました。そのうえマニアックになりすぎずドラマとしても非常に良質な出来だったことです。漫画家という職業がこんなに認知されたのも初めてかもしれません。とても勇気づけられました!これから早起きできる自信がありません(笑)
(ひうらさとる/『ホタルノヒカリ』(全15巻)、『素敵なダンナ様』など)

そして、いよいよ大トリはうめさん(小沢高広さん @ume_nanminchamp)。
じつはうめさんは「ゲゲゲの女房」の予告編見たさと「朝、テレビをつける練習をするため」(!)に、前作「ウェルかめ」を見始めたという、筋金入りの“ゲゲ女”ファンだ。

うめ 水木先生がドラマ化されるという時点で、見ることは決定だったんですよ。ゲゲゲの鬼太郎をはじめとする水木作品に対するリスペクトはもちろん、水木先生は僕ら漫画家にとっては“生き神様”みたいなもの。でも、今回のドラマでは、妖怪・水木しげるではなく、人間・水木しげるとして描かれていたのが面白かった。もともと実話という部分も大きいのかもしれないけど、時代考証もしっかりしているおかげで、小さなエピソードに至るまでひとつひとつがすごくリアル。例えば、ドラマの中に出てくる貸し本の金額。
一冊10円は当時の収入を考えると高すぎるだろうと思って調べたけど、確かにそれくらいだったらしい。あと、担当編集者がカラー原稿を折って封筒に入れようとするシーン。Twitter上でいろいろな人が「さすがに、あれはないだろう」とツッコミを入れていたけど、「B4・2枚の原稿を貼り合わせてるから、ありなんじゃないか」とフォローする人が出てきて、「水木先生のところはそうだったのかも」と納得してしまったり(笑)。

ーーと、ここでなぜか、エキサイトレビュー執筆陣の一人で、ゲームデザイナーの米光一成さんが登場。

米光 水木しげる原画展に行った知り合いが「原稿が折られてた! カラーなのに」って怒ってたから、ホントのことみたいだよー。

うめ やっぱり、ホントなんだ。
え!? 米光さん。それだけ?

ーー通りすがりに情報提供し、去っていく米光さんであった。それはさておき、スタイルはまったく違うが、夫婦でマンガを描き続けているうめさんから見た、水木夫妻の姿とは?

うめ 松下奈緒さん演じる、妻の布美枝さんが、マンガのベタ塗りを手伝うシーンを見ていて、すごく懐かしい気持ちになりました。うちもデビューしたての頃は分業体制がまだ確立できていなかったから、よく手持無沙汰になっては、ベタ塗りを手伝ったりしていたんですよね。そのまま、なんとなく徹夜というのも、あるある! と(笑)。紙芝居の時代から貸本、雑誌と移り変わる出版業界の描き方も面白かったですね。
そこにあるダイナミズムは、電子書籍が急激に台頭してきた“今”に通じるものがある。

ーーなぜ、“ゲゲ女”は大勢のプロたちを巻き込んでの一大ムーブメントとなったのか。

うめ ドラマの完成度やキャスティングの良さなど、さまざまな要因があったと思います。ただ、何より大きかったのは『根っこが一緒だったこと』だという気がしています。ものづくりの喜びや辛さは、漫画家も、脚本家をはじめとする、ドラマ作りに関わる人も同じ。だからこそ、すべりづらかったんじゃないかな。
もともと、漫画家は“漫画家マンガ”-漫画家を題材にしたマンガが好きな人が多いというのもありますね。ギャグ漫画からロリコンエロ漫画までいろいろありますが、描き手としてのリアルがふいに滲み出てくる場面が必ずある。その、いい意味での“痛さ”がまた、たまらなかったりもするんです。
(うめ◇小沢高広・妹尾朝子/『大東京トイボックス』(最新6巻、以下続刊)、電書版・東京トイボックス[1][2]

ドラマ「ゲゲゲの女房」は最終回を迎えたが、11月20日には同じ原作を原案とする同名映画が全国公開される。映画では、宮藤官九郎さんと吹石一恵さんが水木夫妻を演じる。“ゲゲ女”ムーブメントはまだ終わらない(島影真奈美)

と漫画家さんからのコメントはまだまだ寄せられて、番外編を緊急アップ! こちらもどうぞ