小学生の集団登校、日本ではごく普通に見かける光景だ。でも、香港では絶対に見かけることはない。


香港では、12才以下の子どもをひとりで留守番させたり、外出させたりすると保護者義務違反という罪状で逮捕されるからだ。2度目は自動的に親権が取り上げられ、親は刑務所に行くことになる。ちなみに、これは欧米諸国でも同様だ(州や国によって多少年齢が違うが、たいてい12才前後)。

スーパーの駐車場に停めた車に子どもを置き去りにして買い物をする、子どもが寝たからとホテルの部屋に子どもを置いてバーに飲みに行く、おもちゃコーナーに子どもを置いて買い物をする。これらの行動はすべて、通報されれば親が逮捕されてしまう。子どもの通学時には、スクールバスを利用するか、保護者が車で学校まで送っていくのが一般的だ。


そんな欧米人が日本を旅行すると、小さな子どもがひとりで電車に乗って通学している様子にびっくりするらしい。日本のテレビ番組には、小さな子どもが親から離れておつかいをする様子を追う人気番組もある。根強いファンがいる長寿番組だ。どうも、日本では小さな子どもがひとりで留守番やお出かけをすると「よくできたね!」と褒められる文化があるようだ。

ただ、一部の外国人からは「日本の社会は子どもをきちんと守っていない」と見られていることも事実。確かに、車に置き去りにされた乳幼児の死亡事故や、留守番をしていた子どもの不注意で起きてしまった火災、転落事故での死亡など、ニュースで聞くたびに心が痛むけれど、決してなくなることはない。
毎年同じような事故が起きている。

そういう意味では、今の日本は「親の自己責任」に重きを置いている社会だ。欧米や香港は「子どもを安全な状態に置くための個人の線引き、個人の常識」を信用していないので、一律に「子どもをひとりにしない」という法律を作ったと言える。

ただ、炎天下の駐車場に停めた車に乳幼児を置いてパチンコをするような非常識な親が現代の日本にいる限り、社会で子どもを守るためには、日本にも同じような法律を導入したらどうかと個人的には思う。

もちろんそのためには、父母のどちらかが早めにお迎えに行けるような労働環境の整備や、はたまた低価格で信用できる子どもの預け先の確保など、やらねばいけないことはたくさんあるが、子どもたちを守るためと思えば不可能ではないはず。諸外国も実際にやっているのだから、日本ができないわけはないだろう。


子どもを持つ母親もフルタイムで働くのが当たり前の香港では、住み込みのお手伝いさんが大活躍。子どもの学校の送り迎えもばっちりしてくれるし、当然公園にも付き添う。お手伝いさんを雇えない低所得者層は、親戚や近隣者などをフル活用してなんとかしているようだ。

日本人観光客が多いハワイなどでは、過去に数件、子どもをひとりにしたという理由での日本人夫婦の逮捕例もあるようだ。日本では普段何気なくしている行動も、海外では犯罪になることもある。欧米や香港に旅行する際は、くれぐれも子どもをひとりにしないように気をつけて。

(宇田川理絵)