タレントの熊田曜子さんが、子供たち3人を連れて東京都墨田区の東向島児童館分館を訪れたところ、「保護者1人につき子供は2人まで」というルールがあったせいで入館できなかったとブログで明かして、賛否両論を巻き起こしている。児童館側を批判する声もあがっているが、そもそも“児童館”とは、どのような意識で利用すべき施設なのだろうか?

子供の安全確保のためなら人数制限は当然?


「児童館は保育所ではない」熊田曜子の入館拒否騒動を受けて、児童健全育成推進財団に聞いた
東向島児童館分館の公式サイトからキャプチャ

東向島児童館分館の各遊び場は、1時間ごとの完全入れ替え制となっており、入場するためには事前に整理券を用意しておく必要がある。また、「保護者1人につき子供は2人まで」というルールも存在するのだが、そちらを熊田さんは把握していなかったらしい。
11月4日に更新したブログで、同施設を利用しようとしたところ、子供を3人連れていたためスタッフからストップをかけられてしまったことを明かしている。

熊田さんは、「私が4ヶ月の赤ちゃんをずっと抱っこ紐で抱っこをしていているので、抱っこしながら上の子達をみるのはどうですか?」(原文ママ)とねばったが、それでも入室許可は下りず、結局近くの公園で遊ぶことにしたそう。「まさか、そんな決まりがあったなんて。完全に私のミスです。やってしまった」と自身の非を認めた上で、「子供が3人になると子供が小さなうちは大人1人の付き添いでは飛行機に乗れないとか5人家族になると宿泊できるホテルの部屋が少なくなるとか3人のお子さんがいる先輩ママに聞いたことがありましたがまさか児童館に入れなくなるとは思ってもみませんでした」とつづっている。

ネット上で、熊田さんが施設名を公開したことを批判する声は多い。
しかし、トラブルになった施設名を明らかにすることの是非とは別問題として、熊田さんに同情的な意見は少なくない。人数制限を設けている児童館は珍しいため、「児童館で人数制限なんて初めて聞いた」と驚く声もあった。

また、「子だくさんのワンオペ育児の場合はどうすればいいのか」「少子化になるのも当然だ」と東向島児童館分館に対する批判もある。一方で、「子供の安全確保のためなら人数制限は仕方ない」と同施設を擁護する意見もあり、児童館の在り方、利用者の在り方について議論が巻き起こっている。

児童館のスタッフを増やすことはできないのか?


今回の騒動でひとつ注意しておきたいのは、「東向島児童館分館は児童館として特殊」という点だ。大型のアスレチックやクライミングウォール、ボールプールなどが用意されており、「最初は児童館側が酷いと思ったけれど、施設の写真を見たら、人数制限は仕方ないと思った」という声もあがっている。
東向島児童館の本館は、とくに人数制限や時間制を設けておらず自由に入館できるため、やはりアスレチックなどで遊ぶ場合は、ある程度ルールを設けないと安全確保が難しいということなのだろう。

しかし、大掛かりなアスレチックを設置している児童館の中でも、明確な人数制限を設けていない施設はある。何か児童館側で人数制限に関する基準が存在するのだろうか? 子供たちの健全育成活動の推進を目的としており、児童館に関する事業も行っている「一般財団法人 児童健全育成推進財団」に問い合わせた。

「東向島児童館分館は、遊び場自体の広さはそれほど広くありません。手狭なスペースの中で0歳から小学6年生までの幅広い年齢の子供たちが一緒に遊ぶということで、安全面を優先するために人数制限を設けたのでしょう。『スタッフが何人いれば、子供は何人まで』のように国として明確な基準があるわけではなく、そのあたりは設置者に判断してもらっています」

ネット上では、「児童館のスタッフ(児童厚生員)を増やすことはできないのか?」という意見もある。
児童健全育成推進財団の担当者は、「明確な基準があるわけではないので、『○人増やせば大丈夫』というものでもない」と指摘しつつ、「児童館は、保育所のようなものではありません」と明言する。

「担任の先生が一定時間お子さんをお預かりするという“保育所”のイメージを、児童館に持たれるのは誤解です。お子さんが乳幼児の場合、保護者の方も一緒に来てもらうのがルールになっていますし、どうしても“保護者の方が面倒を見ることができる範囲”という話になってきます。児童館は、乳幼児の発達に合わせた遊びを各種用意しており、保護者の方とともに発達の状態をサポートさせていただく施設です。なので、保育所のようにお子さんをお預かりする場所ではありません」

あくまで児童館の立場というのはサポートであり、保護者がしっかり自分の子供の面倒を見ることが前提らしい。となると、やはり東向島児童館分館の対応は当然のものだったのか……。
子供の安全に対する責任をスタッフにも重く求めるとなると、そもそも“児童館”という施設の意義を再考する必要があるようだ。

(原田イチボ@HEW)