2月中旬に開催された世界的スポーツアワード「ローレウス・ワールド・スポーツ・アワード2020」。その会場に各スポーツ界で輝かしい結果を残した往年の選手たちが集まった。
大坂なおみ、錦織圭の現状を詳細に把握していたベッカー
ローレウス・ワールド・スポーツ・アワード2020の開催地はドイツ・ベルリンだった。ドイツといえばサッカーのブンデスリーガで多くの日本人が活躍していることもありサッカー大国のイメージも強い。
だが、かつてはテニスでも数々の名選手を輩出しており、80~90年代は黄金時代と呼ばれている。最も知られている女子選手はグランドスラム優勝22回のシュテフィ・グラフであり、男子では85年に史上最年少の17歳でウィンブルドン優勝を果たしたボリス・ベッカーだ。
アワード前日に行なわれたメディア・セッションで、ローレウスのアカデミーメンバーであるベッカーは、だれよりも多くのメディアに囲まれていた。
※2017年6月に自己破産宣告を受けた
なかでも、今回の最優秀女子選手部門にノミネートされていた大坂なおみについては特に注目しているようだった。
「1年前のメルボルンで、彼女は本当にスーパースターだった」
19年1月、全豪オープンでの初優勝について、まずベッカーは触れた。
「そのままトップに居続けると期待されていたんだけどね。(その後の低迷について)何が起きたのかはわからないし、彼女にしかわからないことなんだと思う。
今年の全豪では昨年とうって変わって、3回戦でガウフにストレート負け。ガウフはこの時点でまだ15歳でノーシードだった。4カ月前の19年9月に全米オープンでも両者は対決しており、この時は大坂が快勝。試合後のインタビューを「共に行なおう」と大坂がガウフに提案したエピソードが有名だ。とはいえ、前回大会王者が3回戦で敗れる相手ではなかったのだ。
今年の大坂にはどんな問題があったのだろうか。
「テニスというのは複雑なスポーツだ。スキルが必要なのは当然だけど、プレッシャーや期待に苦しむこともある。でも彼女はもっと強い選手なので、必ずカムバックすると思う」
コートの上では、一人で戦わなくてはいけないスポーツでもある。だが、決して一人で常に戦っているスポーツではないのだとベッカーは強調する。
「彼女が孤独だって言うかもしれないけど、それは彼女にとっては以前から変わらないこと。
やんわりと問題を指摘はするものの、彼女の才能と実力を信じている様子だった。
そして、錦織圭について。錦織はこの週末に日本の兵庫で行なわれるデビスカップでも活躍が期待されている。
「このところずっとケガと戦っているけれど、ケガをする前はトップ10プレーヤーだった。非常に才能に恵まれているし、ハードコートで強くてクイックネスの抜きん出た選手だね。ただ上位にノバク・ジョコビッチやラファエル・ナダル、ロジャー・フェデラーら大物がいるので、なかなかそこを突き破るのは難しい状況が続いている。でも彼はとっても良い選手だし、上位陣がすごいということを考えてもよくやっていると思うよ」
錦織のケガからの復帰を願うベッカー。西岡良仁にも注目
ランク最上位の牙城を崩す勢いがあった、かつての錦織からは少し違う。「よくやっている」と言われて満足できる選手ではないだろう。
「まずはかつてのコンディションを取り戻すこと。復活してほしいね」
ベッカーの答えはシンプルだった。
さらには、今回のデビスカップメンバーを辞退した西岡良仁についてもコメントしている。
「なかなか良いレフティーの選手だ。1月、メルボルンで見てきたよ。全豪3回戦でノバク(ジョコビッチ)と対戦していたよね。その直前にはATPカップでは日本代表に選ばれてナダルと対戦していた。良い選手だね」
引退から21年目を迎えるベッカーは、最新のテニスシーンだけでなく日本の現役、若手を暖かく見守っていた。でもできることならば、そんなレジェンドを驚かせ、あっと言わせるような活躍を見てみたい。