傘は意外にマイナーな「雨具」だった
こうして見ると、傘ってとてもカラフル。
今年の梅雨は今のところ空梅雨模様。とは言ってもいつ雨が降ってもおかしくない季節なので、「今日は傘どうしよう」と悩む時期であることに変わりはない。


雨の日には傘をさす。子供の頃から習慣化しているのであまり疑問も持たずに傘を利用しているし、雨の日数も年間を通せば決して少なくはないので出番も多いのに、JRの車内忘れ物ベストテンの不動のナンバーワンであるように、傘って何だか妙に手に馴染まないアイテムなのだ。

日本洋傘振興協議会によれば日本の年間傘消費量は約1億〜1億2千万本と推定されるそうで、世界でも断トツの消費量を誇っている。気象庁のホームページに掲載されている世界の降雨量平年値データ(1971〜2000)を見ると、年間平均では日本は約1,700mmで、世界平均の約970mmから比べると倍近い。雨が多いから傘もそれだけ必要になるのかなと思えるけれど、私の旅行体験や海外居住経験のある友人の話を聞くと、ワールドワイドで見てみれば傘の存在はどうも影が薄いようだ。

ニューヨーク・ボストンなどの米国東海岸では年間平均降雨量は約1,100mmで決して雨量が少ないわけではないのに、ニューヨークの人たちは多少の雨では傘をささない。
みんな不思議と平気な顔して雨に濡れている。車社会なことも雨具いらずの理由ではあると思うけれど。

ロンドンでは750mmで世界平均と比べて少なめではあるけれど、やはりあまり傘をささない。ロンドンはまさに時間単位で天気が変化するし、雨粒が比較的小さな霧雨タイプが多いので、雨をあまり気にしていない様子だ。

バンコクは約1,500mmと日本並みの雨量を誇っているけれど、傘の利便性が低い。
雨量は多くても、時期が5月〜10月の雨季に集中することと、その雨季の雨が傘など役に立たないほど大粒で激しいからだ。
私も5月のバンコクで急な夕立に遭って、日本から持参した華奢な折り畳み傘がものの数十秒で破壊された経験がある。

中国・北京は約580mmで雨そのものも少ないけれど、傘よりも雨合羽を着ている人が多いようだ。移動手段として自転車利用が多いってことも影響しているのかな。やっぱり自転車だと傘よりはフード付の雨合羽の方が便利だし。

こうして見ると、傘って全世界共通のメジャーな「レイングッズ」だと思っていたけれど、実は意外にマイナーな「雨具」らしい。多少の雨ならばレインコートがマストアイテム。
欧米でも決して傘の保有数が0本と言うわけではないらしいが、日本のようにカラフルなパステルカラーはほとんど見かけなくて、黒やネイビーの無骨な傘を男女問わずに利用している。

日本の豊富な雨量に傘はとても便利だし、光と影に彩られた四季の移ろいには色とりどりの傘の花がとても良く似合う。でも傘はある意味日本固有の文化とも言えそうなので、もっと雨の日を気持ちよく過すためにファッションの一部として楽しんでしまいたい。
最近のデザイン回帰のトレンドが傘にも向けられて、出来れば色だけでなくて、形でも遊べる傘が発売されたらいいのに。(シロー)