清掃中も給食中も! 長野流は「無言」?
ダンスヴァージョンのDVDまで出ている、長野のひとが誰でも歌えるという県の歌、「信濃の国」。これもまた、「長野だけ常識」のひとつです。
先日、『カミングアウトバラエティ 秘密のケンミンSHOW』というテレビ番組で、やたら長野県の話題がオチに使われていた。

そんな長野ネタのなかでも、出演者たちが口を揃えて「信じられない!」と沸いていたのは、長野の「無言清掃」。

番組終了後、友人などからメールで「長野って本当に、無言清掃なの?」と聞かれたが、長野出身の自分としては「無言清掃がおかしい」ということのほうが、ビックリ。
番組に出ていた秋本奈緒美(長野出身)も、「無言のほうが効率いいんだから!」と熱弁をふるっていた。と言いつつ、実は小学生の頃などは、「無言」「歯を見せない」を強く指導されるあまり、チリトリ担当・ホウキ担当の間で「ん〜ん〜(もっとこっち)」「ん〜〜(わかってるよ!)」など、口を閉じたままの不思議なコミュニケーションが成立していた。

さらに、無言だったのは清掃中だけじゃない。もちろん長野でも地域・学校・先生によって差はあるだろうが、「無言給食」も当たり前だった。
「無言で給食食べるの? 暗〜い!」などと他県の人にバカにされることもあるが、大丈夫。ちゃんとお昼の放送がありますから。
黙々と学校放送を聴きながら、給食を食べる――それだけのことが自分はどういうわけかできなくて、しゃべっていて廊下に立たされたこと、数回。ひどいときには、給食中に私語をしただけで
「私は給食中に、はしたないことをしました」と書いた紙を首からぶら下げられ、正面玄関に立たされたこともある。しかも、「はしたないこと」って……無限に妄想がふくらむ強いコピーではあるが、あんまりだ。
もちろんそれは極端な例だが、「無言」を美とするシーンは非常に多いのだ。

独特な行事も多かった。
たとえば、「海の見学」。唐突な響きだが、普通に海に遊びに行くだけのこの行事、海のない長野県民にとっては、まさしく「見学」。合ってるのです。
また、山での「宿泊訓練」という行事もあった。「訓練」ですよ、スゴイでしょう? カレー作って食べて、テントで寝て……って、単にキャンプ・林間学校じゃん! というツッコミはさておき。
さらに、修学旅行で、公共の宿泊施設の会議室を借り、どういうわけか屋内なのに寝袋で寝ることもあった。テントでの寝袋はワクワクだけど、会議室での寝袋は、ひたすら蒸し暑い思い出である。

小学校高学年になると、夏休みの間、ほぼ毎日強制される「水泳特訓」というのがあったし、高校の授業では、女子に対し、「生理中でも2日目以外は大丈夫だから(意味不明)入るように」というヘンな指導もあった。

長野県は非常に広い。「長野はみんなそんなんじゃない!」という、お叱りの声もあるかもしれない。でも、長野出身者と話すたび、「うちも!」という同意の声、「うちなんかもっと……」と、さらに驚きの習慣・ルールを耳にすることが、けっこうあるのだ。しかも、なんだかみんな嬉しそう。

自分の素っ頓狂さは、個人的な問題かと思っていたが、もっと根深いものなのかもしれない……。
(田幸和歌子)
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