フィギュア番組にはおもしろ解説がいっぱい
こうして華麗な選手の姿を雑誌などで見るだけでも、楽しい気分になります。
年末〜年始と、フィギュアスケートの大会やショーが立て続けにあり、浅田真央や安藤美姫、織田信成、高橋大輔などの姿をテレビで見る機会が実に多かった。
そんななかで、どうしても気になってしまったいくつかのおもしろ解説・実況をご紹介したいと思う。


まずは、12月29日の「2006全日本フィギュアスケート選手権」女子シングル・フリー。実況の男性は、浅田真央ちゃんの出番になると、興奮気味にこう紹介した。
「あんなこともこんなこともできちゃう真央ちゃん!」
「あんなこと」や「こんなこと」の内容は、国民のほとんどが想像つくだろうけど……それにしても、なぜ淫靡な言い回し?

さらに、最後に登場した浅田舞ちゃんには……。
「最後に魅せます、“まいっちんぐ舞ちゃん”の魅力」
たぶん言われた本人は若すぎて意味がわからず、ぽかーんという感じじゃないだろうか。

また、この大会のキャスターのくせに、終始だんまりだった国分太一が、ふいに弾んだ声で嬉しそうに語ったのが、こんな言葉だった。
「わ〜、目の前で織田選手のコレ(こまわりくんみたいな決めポーズ)を見ることができて、すごい嬉しいです!」
確かに、アレは必見ですけれども。これまでの日本人男性の選手にはない表現力の豊かさですけれども。でも、やっと口を開いて言うのが、それかよ!

このノリにノッてる、悪ふざけのような実況と、対象的だったのは、12月20日の「グランプリファイナル」、エキシビションのときの伊藤みどり。
エキシビションにもかかわらず、浅田真央ちゃんに「トリプルアクセルをぜひ2回見せてほしい!」と何度も執拗に繰り返し、転倒した際には、落胆のあまり「チッ!」と舌うちする場面も見られた。
エキシビションなんだから、もう少し肩の力を抜いて、見守ってあげてもいいのではないでしょうか。

だが、そんな数々のおもしろ解説・実況のなかでも、抜きんでていたのが、やはり松岡修造だった。
注目の選手をとりあげる番組では、浅田真央、安藤美姫をつかまえて、「まおさん」「安藤さん」という、耳慣れない呼称を連発。

一般的になっている愛称「まおちゃん・ミキティー」でもなく、実況や解説の人たちのきっちりした「浅田真央選手・安藤美姫選手」でもなく、「さん」呼ばわり。
どういう立ち位置なのか?
近すぎず、遠すぎず、それでいてどこか厚かましい感じ。遠い親戚のおばさんみたいなスタンスか? さすが修造。

にもかかわらず、高橋大輔の出番になると、口調が一転。何度も熱く「かっこいいなぁ〜」を繰り返し、途中、「ここからですよ、ここからのステップがすごくかっこよくて」と、勝手に修造ペースでVTRの巻き戻し&リピートすらしてくれそうな勢いだった。
おそらく高橋選手の演技をこれまでも繰り返し何度も見て、頭に焼き付けたのであろうが、あまりに熱心な解説は、まるで修造の家でホームビデオを見せられているようなムードである。

しまいには、「この決め顔! かーっこいいなあ! こりゃ人気出るわ!」と吐き捨てるように言い、ずいぶんご満悦なご様子だった。
まだまだ今後も続くフィギュアの番組。華麗な演技だけでなく、個性あふれる実況・解説もまた、見どころです。
(田幸和歌子)
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