海外吹き替えドラマの「話し方」、その特徴は?
「……そうだ! キミも、吹き替えしゃべりを日常に取り入れたら、どうだい?」
先日、R-1グランプリで優勝した、ザ・プラン9、なだぎ武の『ビバリーヒルズ青春白書』が元ネタの、ディランネタ。

昨年あたりから、深夜番組などを中心に、友近扮する「キャサリン」と組んで、「ディラン&キャサリン」として披露していたが、何度みても笑える、完成度の高さだと思う。

最近は、テレビをつけっぱなしにして、海外吹き替えドラマが流れてくると、「あれ、友近となだぎ?」とマジボケで思ってしまうほど。

それにしても、あの独特の「吹き替えしゃべり」は、アニメなどの声優しゃべりとは、また違う、独特のものがある。どんな特徴があるのか。職人技をマネしたいというのもおこがましいし、ましてそれを言語化類型化しようというのは無粋な話だとは思う。
でも、それを承知のうえで、ぜひやってみたい! というわけで、「友近&なだぎ」ネタと、本物の吹き替えとを見比べて、共通点を探ってみた。

まず1つ目の特徴は、「文節ごとに切って話す」ということ。さらに、文節内はけっこう早口で言うのがポイントだ。
例えば、「春が来た」なら、「春がぁ〜来たぜっ」といった具合に。
これは、英語のリズムにのせて、役者が口を開いている間に日本語を詰め込まなければいけないからなのだろう。

続いて、会話のやりとりで、まず「結論」から言うこと。
たとえば、「どうしたの?」「沈んでる」(きっぱり)そのあとで、「ん〜○○があってね」といった具合に、後で内容を補足するパターンがある。これもやはり英語の文法的に、直訳でそうしているのだろう。


語尾が、男性なら「〜ぜ」「〜かい?」、女性なら「〜わ」「〜だわ」と、過度に、いわゆる「男らしい&女らしい」のも、特徴のひとつ。
また、言葉の頭には「ん〜」と“ため”を入れる。これは、英語でも「ア〜ンド……」とか「……ウェ〜ル」とか、文頭に“ため”的な言葉をもってくることも関係あるかと思う。
さらに、全体にわりと早口なのに、「そ〜んなこと言うなよ」といった具合に、間でのばすという“ため”も、けっこう見られる。

この“ため”は、言ってることはたいした内容でなくとも、抑揚が生まれ、聞いている側も引き込まれてつい耳を傾けてしまう、不思議なテクニックである。日常会話に取り入れてみたい。

また、どうってことない会話でも、けっこう露骨にため息をつくパターンも多い。それに対して、日本のドラマであれば、直接的に「励ましの言葉」が続くわけだが、吹き替えドラマはそんな野暮なことはしない。
唐突なたとえ話をすることによって、相手をさりげなく気遣うというパターンが多いのだ。
例)「調子どうだい?」
「……ん〜、ただの夢よ(ため息)」
「(急に表情を切り替えて大げさな笑顔で)そう! オレが子供の頃に見た夢はさ……」

さらに、ケンカのシーンですら、ときには内容がよくわからないまま、お互いの抽象的な思い込みトークで進んでいくこともある。
「そうか……」
「違うの! (ため)私……」
「いや(ため)……、いいんだ。君の言う通りさっ……」
「ごめんなさい……」
ある意味、「あうんの呼吸」で、「言葉」などいらないのか。


日常会話も、ぐっと大仰にドラマチックに。
皆さんも「吹き替えしゃべり」、してみませんか?
(田幸和歌子)
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