「本人限定受取郵便」の不思議なシステム
「本人限定郵便」の受け取り方、注意事項だけで2枚もの説明が。読めねー!
「本人限定郵便『特例型』到着のお知らせ」
先日、自宅にそんな封書が届いた。

住所へ配達するので、在宅日、希望の配達時間を郵便局に知らせてほしい、とある。

正直、「そんな手間かけず、直で持ってきてくれりゃいいのにな」と思ったが、そういうシステムだから仕方ないのだろうと電話したところ、こんな不思議なことを言われた。
「特例型ですので、運転免許証かパスポートか写真付き住民基本台帳カードか、健康保険証等1点の公的証明書と、印鑑をご用意ください。何になさいますか?」
「え? じゃ、パスポートか免許証にします」と言うと、さらにこんな言葉が続いた。
「パスポートですか? 運転免許証ですか?」
「どちらか用意しときます」
「いえ、どちらかではなく、どれにするかおっしゃっていただかないと」
何のことやら、さっぱりわからない。

「あのー、受取の際に、本人の証明ができればいいということですよね? 事前に、証明の方法まで申告する必要はあるんですか」
「あらかじめどれか一つご指定いただいて、登録するようになっておりますので。きまりですので、そうしていただかないと」
「事前にどれかを申告すること」自体は手間でもないが、その必要性がわからないので、あれこれ聞いているうち、押し問答になってしまった。
我ながら了見が狭いと思うが、それにしても、ずいぶん不思議なシステムである。

日本郵政公社の「郵便に関するご案内・ご相談」に問い合わせてみると、この「本人限定受取郵便」がスタートしたのは、平成13年3月からとか。
「到着通知がきたら、郵便局の窓口で本人が受け取るのが基本ですが、『特例型』の場合は、郵便局にお電話いただき、希望時間に配達いたします。いずれも本人限定ですので、家族でも受け取ることはできないんですよ」
と、担当者は言う。

事前に証明方法を申告する必要性について聞くと、「え? 何かいきちがいでは?」と言われ、しばし保留の後、こんな回答があった。
「こちらは『ご本人強化』のために、そのように申し上げただけだと思います」

この「本人限定受取郵便」は、銀行などでも「本人限定」があるように、「家族であってもダメ」「自分でしか受け取りたくない」という要求が増えているため、作られたものだとか。

「ただ、まだ十分に浸透していないところがあって、窓口によって、案内が若干異なるようです。証明方法をあらかじめ申告していただいたのも、強く『本人限定』するためだと思います」

結局、正しくは、事前に証明方法を申告する必要などないのだが、「本人限定」にこだわるあまり、対応がまちまちになっているようなのだ。

自分などは、家族はもちろん、家に遊びに来る友人にだって「受け取っておいて」とか頼んでしまいかねないが、「どうしても本人だけが受け取りたい」需要、けっこうあるんですね……。

ちなみに、このとき届いたのは、クレジットカード。自分の無防備さを改めて思い知りました。
(田幸和歌子)