失敗さえも見応えあり! 上海雑技団のスゴさ
劇場の内部。<br>華麗なるショーの動画は<a href="http://acrobatsofchina.com/en/index.htm" target="_blank">公式サイト</a>のVideoコーナーで閲覧可能
上海に行ったらぜひ見たいのが「上海雑技団」。1951年に創設され、市内に数カ所ある劇場で夜な夜な公演が行われている。


まあ一度見ればわかるが、その演技はとにかくスゴイ。空中で回転しながらロープを渡り歩いたり、パートナーの頭の上に手をつきながら逆立ちをして足の裏で皿回しをしてみたり、10人でひとつの自転車に乗ってみたり……。絶妙なバランス感覚と強靭な肉体が織り成す華麗な演技の数々は、どれも人間業とは思えない。

私も先日ついに上海雑技団を鑑賞。すると意外なことにある演目で失敗した。会場からは「アーッ!」と悲鳴とも落胆ともつかない声が漏れ、思わずみな息を飲んだ。

後でわかったのだが、実は天下の上海雑技団といえどもたまには失敗するらしい。これはもちろん団員の練習不足ということではなく、それだけ限界に近い技に常に挑戦しているということ。体操やスケート選手が大会で高度な技に挑戦して失敗するのに近い感覚だ。ちなみに私が過去2回見た公演のうち、失敗は4回。

だが実は、失敗さえも見応えがある。なんと上海雑技団では、失敗したら成功するまで何度でもやりなおすのだ。
私が初めて見た失敗は、「輪くぐり」(大きな輪を縦に4つも重ねてそれを倒さないように通る演目)だったが、こちらは3度目のトライで無事成功。成功した時に思わずこぼれた少年の笑顔と観客からの温かい拍手は、緊張感たっぷりの公演のなかでホッとする瞬間を作ってくれた。

とはいえ、「輪くぐり」のような演目ならまだしも、地上5mほどの空中で繰り広げられるアクロバットともなると見ている方もかなりヒヤヒヤだ。命綱こそついているものの、小学生くらいの女の子が何度も失敗しているのを見ると、さすがに「もういいよ」と言ってあげたくなってしまう。

でも決して成功するまでやめないのはさすが。日本だと公演の時間も厳しく決まっていて、ある程度チャレンジしてもダメなときは諦めそうなものだが、そんな気配はまったくなし。最高のモノをちゃんと見せようという気合いが感じられる。

もちろん失敗はないほうがいいのだが、失敗の中にも客へのサービス精神と最高の演技へのこだわりがみてとれる上海雑技団。いやはや、本当にスゴイです。
(古屋江美子)
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