ありそでなさそな? 長野の不思議マイナー方言
長野では、これは「おべちゃ(お風呂)」。ちなみに、自分は明治生まれの祖母と一緒に住んでいたこともあってか、中学時代に担任がつくった「方言テスト」で、クラスで唯一満点をとったことがあります。名誉なのか不名誉なのかわからない成績……。
長野の言葉は、「おおむね標準語」。
それゆえに、他の地域の言葉より、キャラが立っていない。


だが、実はイントネーションが微妙に違ったり、微妙なだけに、それと気づかず使っている「方言」はけっこう多い。
ここではそんな長野のなかの「北信地域(特に須坂)」のマイナー方言をご紹介したいと思う。コネタにもほどがある話です。

たとえば、上京したばかりのころ、衝撃だったのが、「〜しない?(〜だしない?)」という語尾。
「そうだしない?」といった具合に使い、「そうだよね?」「そうだと思わない?」のように同意を求める意味なのだが、方言と知らずにずっと使っていただけに、東京では友人たちに「お茶しない?」の一種、「ソーダ、しない?」という、ずいぶん限定した誘いをする奇特な人だと思われていたことを後に知り、かなりのショックを受けたことがある。

また、「ぶすた(ぶすと)色」って知ってますか? 青タン・痣の色を指す言葉で、ソレ専用、他の使用法がない。

専用語というと、排泄行為のみに使う「まる」という動詞もある。「う○こまる」といった使用法がポピュラーだ。
次に、「鍵をかう」「ごはんにかう」の「かう」。前者は「鍵をかける」で、後者は「ごはんにのっける、一緒に食べる」といった意味だが、微妙なニュアンスはぴったり合う言葉が他にない。
さらに、「ちょんこずく」。「調子づく」「調子に乗る」といった意味だが、標準語より呆れ半分の、ややあたたかなニュアンスではある。

そして、「いかず」「やらず」。といっても、決してコレ、打ち消しではない。
正解は「いかない?」「やらない?」で、「レッツ〜」、勧誘の意味なのだ。

また、メジャーな言葉では、「ずく」というのがあり、「ずくがある」というと、「まめなこと」、「ずくがない」は「めんどうくさがり」「働くのを嫌がる」などの意味を指す。

他にも、比較的メジャーなものを拾ってみると、「あまびら」(精米した米につく小さな虫)」「きんな、おってな(昨日、一昨日)」、「せう(言う)」、「だねか(じゃないか)」、「むずっかい(くすぐったい)」、「もうらしい(かわいそう)」、「だれえ(違う! まさか〜!など)」「たあくらたあ(常識外れ、バカなこと)」、「があたく(乱暴、暴れん坊)」「かまける(嘆く)」「おめた、おめった(おまえたち)」、「おべちゃ(お風呂)」、「べちゃる(捨てる)」、「らっちょもない(くだらない、余計な)」「とびっくら(かけっこ)」「わにる(人見知りする)」などなど。

さらに、これらをふんだんに用いた例文を作ってみると……。
「きんな、おめたががあたくしたから、おべちゃ壊れたって、母ちゃんかまけてたわ。もうらしい。とびっくらは外でやれせっただねか。らっちょもないことばっかして、このたあくらたあ(昨日、おまえたちが暴れたからお風呂が壊れたって、お母さんが嘆いてたわ。かわいそうに。かけっこは外でやれって言っただろう? 余計なことばっかりしてこの常識外れが)」
標準語より、かなりパンチがある叱咤ではないだろうか。


信州を訪れた際には、ぜひともこれらの方言もご一緒にお楽しみください。
(田幸和歌子)
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