渋ガキが甘ガキに変わることはあるの?
我が家の不完全甘ガキ
秋の果物と言えばすぐに思い浮かぶのが柿。我が家の柿の木もわずかながら実をつけた。

店頭で売られている柿に比べれば見た目も味もそんなに良くはないけれど、そこそこは食べられる。実はこの柿、子どもの頃に一度渋いのを食べてしまったことがあって、ずっと渋柿だと思いこんでいたのだが、どうやらそうではなかったらしい。
ひょっとして渋柿が甘柿に変わってしまったのだろうか。

名称がちょっと長いですが、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構の果樹研究所に問い合わせてみた。
「渋ガキが甘ガキに変わるということはないです。渋かった柿が甘い柿になるというのは、おそらく『不完全甘ガキ』ではないかと思われます。
不完全甘ガキは種子が入った時だけ甘くなる柿です。種子から渋を抜く物質が出て、樹上で自然と渋が抜けます」とのこと。

「あと『不完全渋ガキ』というのもありますが、こちらは不完全甘ガキのように種子が入ってもあまり渋が抜けない種類です」

なるほど。柿は一般的にはみつばちなどによる昆虫受粉なので、1本の木でも種子が入るもの、入らないものができるという。種子のできやすさは柿の品種にもよるとのこと。
では、日本にはどのくらいの数の柿の品種があるのだろう。
我が家にある柿の木などは祖父が植えてくれたということは知ってはいても、その品種が何なのかは誰も知らない。

『果樹園芸大百科 6 カキ』(農山漁村文化協会)によると、明治45年に全国各地から約3000点もの柿を集め調査したところ、約1000種類、937もの品種があったという。

これらの中から優れた柿として、富有柿や次郎柿などが広く栽培されるようになったということだ。

「甘ガキ、不完全甘ガキ、渋ガキ、不完全渋ガキの割合を正確に調べたものはありませんが、完全甘ガキが一番少ないです。後は不完全甘ガキと渋ガキ、不完全渋ガキを合わせたものが半々といったところです」

そしてこの柿の脱渋は気温にも影響を受けるそうで、完全甘ガキは脱渋に比較的高温を要するため、渋ガキに比べて南の地方でしか生産することができないという。
ちなみに完全甘ガキは、年平均気温14.6〜15.7度の範囲に、渋ガキは11.8〜15.7度の範囲に分布しているのだそうです。

(こや)

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