長野流の「締め」は万歳というナゾ
バンザーイ(締め)!
忘年会シーズン。長野ではあちこちで「バンザーイ」の声が響いているかもしれない。


そう、長野では、結婚式でも「バンザーイ」、会社や親類の飲み会・忘年会でも「バンザーイ」。ときには、卒業式・運動会なんかの「締め」としても、万歳がよく行われる。
これも最近では減ってきていると言われ、地域などによってはやらないところもあるかもしれないが、北信地域出身の自分などは、けっこう当たり前のことだと思っていた。

先日、久しぶりに会った中学時代の友人も、「母校に教育実習に行ったとき、先生たちの飲み会でみんな万歳して驚いた。そういえば、万歳するよね」と言ってたし、南信出身の友人は、「え!? 万歳ってみんなやらないんですか?(焦) 結婚式とかでもフツウしますよね?」と言っていたけど……。いつから行われているの? 社団法人信州・長野県観光協会に聞いた。

「これはかなり昔からで、いつからかはわかりませんね。さすがにこのごろは、結婚式などでやらない場合も増えてきてると思いますが、忘年会などでは今もやるところが多いですよ」(広報担当者)

この「万歳」、どんな場面でやるものなのか改めて聞いてみると……。
「結婚式では最後に、新郎新婦の花束贈呈があり、その後に、新婦の父親が、出席してくれた皆さんへの感謝でやることが多いです。また、職場でも、一年の区切りなどで、『皆様のご健康を祝して』などといって全員のお祈りとしてやるんですよ」
「一本締め」「三本締め」などと同じような感覚だが、長野ではコレを「風習」として残していっているということ?
「いえ、風習として残してるというより、当たり前の感覚です。忘年会とかの万歳はそれほど珍しくないと思いますけどね」として、こんな説明をしてくれた。

「北信地域独特ものだったら、宴席の盃ごとの儀式として、『おさかな』がありますよ」
「おさかな」って何ですか!? 
「結婚式など特別なときだけでなく、ちょっとした懇親会などでも行うもので、宴が終わりに近づくと、『ごくろうさま』ということで、お酒をさしあげて、お返しがくる。
この盃のやりとりのとき、主賓を壇上にあげて、『おさかな』といって、能の謡曲でその場にふさわしい小謡が歌われるんですよ」

この「おさかな」、私たちの世代ではできる人はおそらくほとんどいないが、通常は「鶴亀」などのおめでたい謡曲が歌われることが多いらしい。

ちなみに、丁寧なところでは、この「おさかな」の後に、さらに「万歳」をするのだという。
こんなところでもやっぱりくどい、いや、丁寧で真面目な長野の人たち。皆さんの地域の「締め」はどうですか。
(田幸和歌子)
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