旅館の朝ごはんが塩鮭や干物なのは、なぜ?
年末年始、温泉宿でのんびり過ごしておいしい朝食をいただくというの、いいですね。
「温泉にでも行って、のんびりしたいなぁ〜」なんてことを思う、冬。

家にいればいくらでものんびりできるのに、いくらでもぬくぬくできるのに、わざわざ何時間も離れた遠い温泉地へと出かけ、ときには外で、氷点下の雪に囲まれてお湯に浸かる。

それが日本の冬。日本人の極楽。

そんな温泉で、もうひとつのんびりを感じられるのが、旅館の部屋でとる朝ごはん。
何もせずに浴衣でいられる朝は、せわしない世の中にあって、ホッとするひととき。極楽というか、すごく楽。最近ではビュッフェスタイル(バイキング)が増えてきてるけど、ごはんとみそ汁と魚さえあれば、この上ない幸せを感じられる。


ところで、そんな旅館の朝食に出てくる魚といえば、塩鮭や干物が定番。地域によって違いはあるけど、多くの旅館が塩鮭・干物。「ザ・日本の朝食」とはいえ、これが旅館の朝食になってるのには、何か理由があるんだろうか。伊豆・稲取の老舗旅館「銀水荘」に聞いた。
「やはり日本の和食文化で継承されてきた、一汁三菜の考え方が反映されているのではないかと思います」
どうして、塩鮭や干物ばかりなの?
「塩鮭や干物が多いですが、どんな魚をお出しするかは、その地域や旅館によって違います。確かに伊豆全体では、特産物である干物を出している旅館が多いです」
やっぱり、旅館の朝ごはんのルーツは、昔ながらの家庭料理にあるようだ。


歴史をさかのぼると、日本の朝ごはんが塩鮭や干物だった理由は、腐りにくいからだったり、調理に時間がかからないからだと言われている。昔は干物や塩漬けにすることが、魚を保存しておく手段。それに港近くじゃない限り、朝、魚を手に入れるのは難しかった。
そうしたことから、必然的に塩鮭や干物が朝ごはんを彩るようになり、旅館の朝ごはんとしても広まっていったようだ。

ちなみに、旅館の朝ごはんのルーツが家庭料理にある理由について、ちょっと意外な経緯を教えてくれた。
「戦後に始められた旅館には、戦争で旦那を亡くした未亡人の方が始めたものも多くあるんですね。
そのため、家で作られていた朝食が、そのまま旅館の朝食になったとも考えられます」
少し重たい話だけど、そんな流れがあるんだとか。一概には言えないけれど、家庭と旅館をつなぐ理由のひとつといえそうだ。

塩鮭や干物など、古きよき日本を堪能できる、旅館の朝ごはん。
温泉地でののんびり感は、こうしたところからも生まれているのかもしれない。
(イチカワ)