
ランチは5ドル(約500円)の極安だし、雨の日でも、雪の日でも、日曜の夜でも、多分大晦日の夜もデリバリーしてくれる。
でもその歴史については、案外よく知られていないんだよねぇ。ということで、アメリカンチャイニーズの新聞記者が書いた『The Fortune Cookie Chronicles:Adventures in theWorld of Chinese Food』という本が話題になっている。
もちろん、アメリカのチャイニーズフードは、チャイニーズ移民達がもたらしたものだ。
チャイニーズ移民がアメリカ新天地に降り立ったのは、19世紀末から20世紀初頭にかけてのこと。奴隷制度が廃止された後、労働力不足を補うため、中華系労働者「苦力(クーリー)」が輸入されたことに始まる。彼らは農作業や港での荷の上げ下ろし労働に借り出され、アメリカ大陸横断鉄道建設にも大きく貢献した。
そして過酷な労働に堪える苦力らの胃袋を支えたのが、安くて美味くて栄養価の高いチャイニーズフードなのだ。そしてそれは、同じく貧しい移民労働者達にも愛されるようになる。
本によると、アメリカのチャイニーズフードの特色は、貪欲に進化していったことにあるそうだ。
例えば、清朝の有名な大臣の名前にちなんだ「左将軍のチキン料理」は、どのチャイニーズレストランにもある、最も人気のあるメニュー。77年のニューヨークタイムスで「スウィートでスパイシーでホットなチキン料理」として紹介され、全米、カナダにも広まった。しかしそれは本場中国には無い、アメリカ人の口に合うようにと考えられたもの。
また健康オタク向けに、ラードの使用を止め、化学調味料無し、トランスファット無しの、ヘルシー志向をアピール。ブロッコリー等の西洋野菜も多用している。
究極的には、本来戒律で豚肉やエビ等が厳しく禁止されているユダヤ教徒向けに、戒律に則ったコーシャー・チャイニーズフードまで登場する。
この間口の広さには、脱帽としか言いようがない。それだけチャイニーズフードは、美味しくて人気があるということだろう。
取っ手のついた紙の箱も、テイクアウト注文が多いアメリカで考えられたもの。西海岸と東海岸都市では、取っ手のワイヤーの渡し方が違うのだそうだ。
今では、チャイニーズフードに限らず、ラッピングボックスとしても重宝されている。
今でもチャイニーズフードは、労働者達の胃袋を支えるB級グルメの代表格。お昼時になると、スーツをびっちり決めたビジネスマン達が、新聞を片手にチャイニーズフードをほおばる姿を見かける。
貧乏旅行者にもありがたいから、おいでの際には是非試してみてね。
(チン・ぺーぺー)
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