最近の米国男子ツアーではボール初速を極限まで高めることで、飛距離を伸ばそうという考えが主流になっている。その方法のひとつが、50歳で「全米プロゴルフ選手権」を制したフィル・ミケルソンや、ブライソン・デシャンボー(ともに米国)が取り入れているドライバーの“長尺化”だ。

ミケルソンは全米プロで47.75インチを投入。デシャンボーはルールギリギリの48インチを過去にテストしている。物理的に考えれば、ドライバーを長くすればヘッドスピードが上がり、ヘッドスピードが上がればボール初速もアップすることになる。しかし、長くすればするほど、“振りにくさ”が出てしまうもの。プロの安定したスイングならまだしも、アマチュアゴルファーも“長尺化”の恩恵を得ることができるのだろうか?
その疑問に対する答えが、ゴルフ雑誌ALBA820号に掲載されている。
誌面では、アマチュアテスターの大谷英雄さん(55歳・平均スコア88)が同一ヘッド・シャフトで、44.5インチ、45.5インチ、46.5インチ、47.25インチの4つの長さで試打を実施。
その中でもっとも飛距離が出ていたのは“46.5インチ”だった。
「47.25インチは2番目に結果が良かったです。ただ、シャフトのしなり戻りが大きいため、打ち出しが高くなりすぎて飛距離をロスしていましたし、クラブが長い分、打点がバラつく傾向がありました」とは、クラブフィッターの吉田智氏の分析だ。吉田氏は現在、片山晋呉のクラブを手がけている。
前述したデシャンボーやミケルソンは、ロフト“5度台”のドライバーを採用したことでも話題になった。これは、長尺ゆえのしなり戻りでインパクトロフトが寝てしまうことへの対策だろう。
一般ユーザーがそこまでロフトの立ったモデルを入手するのは困難だし、そもそもミート率が下がる長尺で、そこまでロフトの立ったヘッドを使うのは、方向性を考えたときに、かなりのリスクとなるだろう。
ちなみに、誌面に登場したアマチュアの大谷さんは、“ゆったりスイングするタイプ”。「ゆったりタイプはある程度長くしても振り切れるのですが、スイングタイプが速い人は逆に初速が落ちる可能性もあります」とクラブフィッターの吉田氏は話す。そう考えると、もっと短いドライバーの方が、ミート率が上がって飛ぶかもしれない。結局、アマチュアゴルファーは“長ければ飛ぶわけではない”ということになりそうだ。