<樋口久子 三菱電機レディス 最終日◇31日◇武蔵丘ゴルフコース(埼玉県)◇6650ヤード・パー72>
渋野日向子とペ・ソンウ(韓国)の互いに一歩も譲らないマッチレースとなった今大会。出だしの連続バーディで先に渋野が抜け出したが、再び首位に並ぶと、その後はどちらかが抜け出せば追いつき、差をつけても縮まりと、互いのプライドがぶつかり合う好ゲームとなった。

渋野とソンウ 笑顔でラウンドする姿が印象的だった【写真】
そんな優勝争いで2人が見せた姿は印象的だった。同組の金澤志奈を含めていいプレーをすれば「ナイス!」と笑顔で声をかけ、言われたほうも気持ちよく「ありがとう」という。それは「イーグルを奪わなければ勝てない」と渋野が土壇場まで追い詰められた18番ティでも変わらない。前のホールでバーディを奪ったソンウに笑顔で「ナイスバーディ!」と言い、それに対してソンウも笑顔で応えた。そこだけ見れば、優勝争いをしているとはなかなか思えない光景だ。
相手のミスを期待しない、と渋野はいう。
「私はスポーツマンシップを大事にしているし、相手のいいプレーには“自分も頑張らないと”と思わせてくれる」。お互いに正々堂々とぶつかり合い、良いプレーは互いに称えあう。ミスは望まないし、喜ぶことはない。そのうえで勝ち負けがあるのだ。
だからといって、ライバルに情けをかけることはない。最終ホールでソンウは、決めれば優勝という1.5メートルのパーパットを外して、プレーオフとなった。
渋野はそこに対して情が移ることはなかったという。
「人としては必要な気持ちだと思うのですが、勝負の世界ではそういう気持ちでいることは、自分を弱くしちゃうんじゃないかなと思います。そういったことは考えず集中できる自分がいるというか、自分のなかに入っていると思います」
一方のソンウも渋野と初めて優勝を争い敗れた2019年の「ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ」終了後、「渋野さんは自分のプレーがどんどん良くなるほうへ行って、自分のプレーをし続けた。彼女が素晴らしいと思います」と相手へのリスペクトを忘れないグッドルーザーだった。今回も土壇場で逆転されて優勝を逃すことになったが、ふてくされた態度を見せることなく勝者と抱き合った。
そんな2人が自分の持っているすべてを出して、真っ向からぶつかりあった名勝負。
展開だけでなく、そういったスピリットがあったからこそ、最後に健闘を称えあった姿はより感動的なものとなった。(文・秋田義和)


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