ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム「報道部畑中デスクの独り言」(第436回)

プロ野球も佳境に入ってきました。セ・リーグは阪神が2年ぶりの優勝を決めました。

9月7日の優勝決定はプロ野球史上最速となります。パ・リーグはソフトバンクに優勝マジックは出ているものの、日本ハムとの首位争いが続いています。

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東京ドーム

夏の高校野球は沖縄尚学高等学校が初優勝を飾りました。また、都市対抗野球は王子(春日井市)が21年ぶり2度目の優勝を果たしました。

ところで、夏の野球というと、かつては炎天下で選手はもちろん、観客も汗を流したものでしたが、最近はずいぶん変わってきました。高校野球の試合は日中を避ける「二部制」をとるようになりましたし、プロ野球も本拠地にドーム球場を持つ球団はセ・リーグが2チーム、パ・リーグは4チームあります(西武のドーム球場はやや異質ではありますが)。

私はこの夏初めて都市対抗野球を観戦しました。場所は東京ドーム。各チームの威信をかけた応援合戦は新鮮でした。導入されたピッチクロックによるテンポのある試合進行、タイブレークになってもなかなか決着のつかない戦いなど、手に汗握る展開でしたが、空調が効いたバックネット裏の観客席は少し寒いぐらいでした。

プロ野球中継を見ていると、ベンチでは選手が普通に水分補給をしていますし、投手コーチがタオルとボトルをもってマウンドに向かうシーンも見られます。コーチがマウンドに行くのは主に投手がピンチに見舞われた時ですが、それとは別に「給水タイム」を取るべきという議論も出ています。

野球のカタチが変わりつつある……、こんな記憶が蘇ってきました。

「水は飲んだらあかん、ゆすぐだけや!」

私も小さいころは、少年野球のチームに入っていましたが、練習中、試合中に水を飲むということはあり得ませんでした。監督からは上記のようにきつく言い渡され、炎天下でノックを受けている時は、「のどのカラカラ」を通り越し、舌が頬の裏の粘膜にぴったり張り付くこともありました。

とんでもない目にも遭いました。グラウンドわきには水道の蛇口があり、駆け込むこともしばしばでしたが、「掟」には従います。飲んだら咽喉が動くため、一発でばれます。しかし、あるチームメートは私の咽喉を「監視」するだけでなく、「いま、動いたやないか!」と言いがかりをつけ、監督にチクるのです。「無実の罪」で怒られることもありました。やられたことはいつまでも覚えているものです。

一方、練習や試合が終わると、クーラーボックスに凍らせたアイスキャンデーにありつけます。このアイスキャンデー、地域によって呼び名が違い、関東では「チューペット」と呼ぶそうですが。猛練習の末のアイスキャンデーの冷たさ、甘さ、そして、至福の瞬間はいまも忘れられません。

ただ、小さいころは炎天下と言っても、気温はせいぜい32度ぐらいだったと記憶しています。気温35度以上の「猛暑日」という概念もありませんでした。いまの夏の天候は「猛暑日」が何日も続きます。環境の変化が野球の「カタチ」も変えてきたといえます。

思えば、このようなことは枚挙にいとまがありません。政治、経済、芸能、スポーツ、そしてメディア……、これまで当たり前、慣習と思っていたことが、実はそうではなかったと思うことが、今年はとりわけ多いと感じます。

昔はよかった、悪かったと議論するつもりはありません。ただ、時代や環境の変化によって、正しいと思っていたことがそうではなくなること、それは「真理」ではないということです。

真理=どんなときにも変わることのない正しい物事の筋道(小学館「大辞泉」から)

諸行無常とはよく言ったものですが、その中でも変わらないもの。真理を探し当てることは大切なことだと思います。それを探し続けることが人間として揺るぎない軸を形作ることになります。メディアに務める者としてもちろん、広い意味でも人間に課せられた使命なのだと思います。

(了)

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