■Q.「チャーハン症候群で死亡してしまった人がいる」って本当ですか?
Q.「『チャーハン症候群で死亡してしまった人がいる』って本当でしょうか? チャーハンは強火でしっかり炒めるので、食中毒にはならないと思っていました。強火で加熱してもダメだとしたら、どう食中毒を予防したらいいのか分からず不安です」

■A. 本当ですが、死に至るケースは極めてまれです。
正しく理解しましょう
結論からいえば、「チャーハン症候群による死亡例があること」は事実です。

そもそも「チャーハン症候群」とは、セレウス菌による食中毒の俗称です。正式な病名ではありません。チャーハンだけが原因となるわけではなく、ピラフ・パスタ・焼きそばなど、穀物を使った料理全般で発生する可能性があります。

主な症状は下痢と嘔吐で、命にかかわる例はごくまれです。しかし実際に死亡報告はありますので、珍しいケースとはいえリスクを軽く見るべきではないでしょう。

加熱した食品なら安全と思われそうですが、セレウス菌の最大の特徴は「芽胞」を形成することです。芽胞は植物でいう「種子」のようなものです。堅い殻を持ち、加熱・乾燥・紫外線・消毒用エタノールに強い耐性を示します。

栄養細胞の状態であれば100℃で10分間の加熱で大部分が不活化しますが、芽胞の状態では100℃で30分間の加熱にも耐えられ、消毒用エタノールも効きません。強火でチャーハンを炒めても、セレウス菌が芽胞の状態であれば死滅しないのです。

調理後に室温で長時間放置されると、芽胞が発芽・増殖し、毒素を産生します。
特に28~35℃は菌が最も活発になる温度帯であるため、夏場はリスクが一段と高まります。

また、セレウス菌が増殖しても食材に特段の腐敗臭は生じないため、においで安全性を判断することはできません。再加熱しても芽胞があれば再び増殖するため、「温め直せば大丈夫」という考えも誤りです。

予防の基本は「セレウス菌を増殖させないこと」に尽きます。

・調理後はすぐに食べる
・作り置きは急速冷却してから保存する
・お弁当も保冷剤や冷蔵庫で素早く冷やしてから持ち運ぶ

という3点が重要です。

2023年には、国内の食品会社の弁当からセレウス菌が検出され、全国で554人が腹痛や嘔吐を発症する大規模な食中毒事故が起きています。身近な脅威として認識し、しっかりと予防していくことが大切です。

▼阿部 和穂プロフィール薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭をとる。専門である脳科学・医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿、生涯学習講座や市民大学での講演などを通じ、幅広く情報発信を行っている。
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