■Q. 「眠らないと糖尿病リスクが上がる」って本当ですか?
Q. 「糖尿病は、甘いものの食べ過ぎや運動不足が原因ですよね? 睡眠も関係があると聞いたのですが、本当に眠れていないだけで糖尿病になりやすくなることはありえますか? 食生活や運動習慣には自信がありますが、慢性的に寝不足なので少し気になっています」

■A. 睡眠不足が糖尿病リスクを高めるのは事実です。生活習慣の見直しを
糖尿病は「万病のもと」とも呼ばれる深刻な疾患です。
インスリンが正常に働かなくなると高血糖状態が続き、目の網膜・腎臓・末梢神経などに悪影響を及ぼすほか、近年では認知症の発症リスクを高めることも分かってきました。

糖尿病は発症後の治療が難しいため、予防が何より重要です。

糖尿病予防に食事と運動が大切なことは、質問でも書かれている通りです。そして、実は同じくらい「睡眠」も重要だと考えられています。カギを握るのは「コルチゾール」というホルモンです。

コルチゾールは、外的刺激にさらされたときに副腎皮質から分泌されるホルモンで、「体内で糖分を作り出して血糖を上昇させる」という作用を持っています。

注目すべきは、コルチゾールの分泌量が昼夜で大きく変動するという点です。夜間の睡眠中には血中コルチゾール量がぐっと減少し、早朝の目覚め頃に再び増加するというリズムがあります。

つまり、しっかり眠ることで血糖を上昇させるコルチゾールの影響を一定時間抑えることができるのです。

逆に、睡眠時間を削り続けると、コルチゾールが高い状態が持続します。さらに、精神的・肉体的な緊張状態が続くことで眠れなくなり、またコルチゾールが下がらないという悪循環に陥ります。

加えて、睡眠不足による精神状態の悪化が食べ過ぎや飲み過ぎにつながり、血糖値をさらに押し上げることにもなります。


糖尿病を予防・改善するためには、食事と運動の見直しに加えて、毎日の睡眠をしっかり確保することが欠かせません。「少しくらい眠れなくても大丈夫」という油断が、じわじわと糖尿病リスクを高めている可能性があります。日常生活を見直すきっかけにしてみてください。

▼阿部 和穂プロフィール薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭をとる。専門である脳科学・医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿、生涯学習講座や市民大学での講演などを通じ、幅広く情報発信を行っている。
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