TVアニメ『黒猫と魔女の教室』オープニングテーマを収録した、ASCAの14thシングル『Cusp』がリリース。ポンコツでも夢に向かって奮闘する主人公・スピカのひたむきな思いを応援するような、ASCAの真っ直ぐな歌声が印象的な「Cusp」は、”原点回帰”の一曲だという。

また、カップリング曲「パキラ」は、実体験を踏まえながら”解決しない絶望”を描いた、ASCAにとって新たな視点で作詞を手がけた一曲。楽曲に込めた思いや制作秘話を語ってもらったほか、ASCAが憧れた存在についても聞いた。

【関連画像】ASCA「Cusp」の4種類のJKをチェックする!

――TVアニメ『黒猫と魔女の教室』の面白さにハマってしまったそうですね。

ASCA: はい。主人公のスピカとクロード先生の恋愛物語だと思って原作を読み始めたんですけど、お笑い要素がすごく多くて、しかも表現がかなり尖っていて、すごく刺さりました。シリアスなシーンもあるんですけど、コミカルな部分がそれを中和してくれていて、すごく読みやすくて、あっという間に全部読み終えてしまいました。

――オープニングテーマ「Cusp」はサビ始まりの曲で、長い音符を活かしたメロディーからスケールの大きさを感じます。昨今は言葉数が多く、早口で歌う曲も多いので、「Cusp」のメロディーはとても新鮮でした。

ASCA: 今回はあえて、声と歌詞のメッセージを真っ直ぐ届けるシンプルな歌を歌おうと決めて、楽曲選びをしました。一作前の「Giver」は、それこそ言葉数が多くて、音楽的偏差値も高い、とても難しい曲だったんです。それを踏まえた上で、今回は私の原点である”声”をちゃんと聴かせるものを作ろうと思いました。

――ASCAさんのメジャーデビューシングルは『KOE』でしたからね。
レコーディングでは、どんなことを意識しましたか?

ASCA: 神経質に細かく録っていくのではなく、大らかに、まるで草原に立っているような感覚で、自分の声を信じる気持ちを第一に考えてレコーディングしました。本当にストレスなく歌えたので、すごくスムーズでした。

思えば、自分の中から自然に出てきたものを真っ直ぐ届けることって、今まで意外とできていなかったんです。今回はそれが素直にできたと思います。

――ASCAさんは、フェイクやニュアンスを活かしたテクニカルな歌唱も魅力ですが、今回はそうした技巧よりも、”声そのもの”の魅力にフォーカスした印象があります。

ASCA: はい。今まで私は、自分には個性がないと思っていたので、「何かしなきゃいけない」と思っていたんです。「ここは緩急をつけよう」とか、「この声色を工夫しよう」とか、常にいろいろ考えながら歌っていて。そのぶん、身軽さを失ってしまっていました。
だから今回は、もっと自分の素の声を信じて、考えることをやめようと思ったんです。SNSの反響を見ても、皆さんがすごく受け入れてくださっているのを感じますし、伸び伸びと歌えた時のマインドが、そのまま伝わっている感覚がありますね。

――タイトルの「Cusp」は、作詞の辻井りとさんが付けられたそうですが、どんな意味なのでしょう?

ASCA: 星座と星座の”境界線”を意味しています。
誰でも誕生月の星座を持っていますが、生まれた日時によって前後の星座の影響も受けているそうなんです。
私はスピカと同じ乙女座で、真面目だったり分析好きな面があるんですけど、前の月の獅子座には、自信家で責任感が強い傾向があって。私の中にも、少なからずそういう部分があるんですよね。
つまり、人って一つの側面だけでは測れないんです。私自身、自分の性格の矛盾に悩んで、「どれが本当の自分なんだろう」と思った時期がありました。でも、この星座の話を知ってから、すごく気持ちが楽になったんです。
この曲では、矛盾があっても、曖昧でも、迷ってもいいと歌っています。その代わり、大事にしているものや夢など、自分の軸さえブレなければ、前に進んでいけるよねって。

――その中で〈猫〉や〈星〉など、『黒猫と魔女の教室』とリンクする言葉も使われています。

ASCA: 分かりやすい言葉で、シンプルに表現されている歌詞なんです。誰が聴いても伝わる言葉というか。もし自分が作詞していたら、わざと難しい言葉を使ったり、回りくどい表現をしていたと思います(笑)。

今回、声を信じて歌えたのは、歌詞の力もすごく大きかったです。おかげで、とても歌いやすかったですね。

――ミュージックビデオには、「一番星を抱えている姿がいい」「目元の星がかわいい」といった反響もありました。

ASCA: 今回は、自分でアートワークを考えました。まっさらなスタジオに背景を建て込んで、マットを敷いて、花や植物を植えて……。参考資料も全部自分で集めて、「こういうアートワークにしたいです!」と提案したのは初めてだったので、それがMVとして形になったことが本当にうれしかったです。
いろんな分野のプロの皆さんの力を借りて、ついに撮影できるんだと思ったら感極まってしまって。「いい撮影にしたい」という気持ちが、より強くなった撮影日でした。

――CGではなく、背景が絵だったり、花も生花だったり、アナログな質感が素敵でした。

ASCA: 実は、生花の中に時々造花が混ざっているんです。ちょっとした違和感から、ファンタジーを感じてもらえたらいいなと思って。アナログ感やレトロ/ヴィンテージな雰囲気は、裏テーマとしてイメージしていました。

初回生産盤 のジャケット写真やMVで私が持っているスーツケースも、アートディレクターさんの私物で、ヴィンテージものなんです。

――ASCAさん的な見どころは?

ASCA: 白いベールに包まれて歌うシーンですね。自分がまだ何者なのか分からない、未来にモヤがかかっているような心情を、少し暗い表情で表現しています。

――カップリングには、ASCAさんが作詞を手がけた「パキラ」を収録しています。ASCAさんはスピカと同じ乙女座で、乙女座は植物魔法が使えるので、観葉植物の曲なのかと思いました。でもASCAさんは魔法が使えないから、最終的には枯らしてしまって、「恋は魔法みたいにはうまくいかないよね!」みたいな(笑)。

ASCA: いいですね、その解釈(笑)! そう考えると、「Cusp」との親和性も増しますね。私はそこまで考えていなかったですけど(笑)。
タイトルの”パキラ”は、とても育てやすい観葉植物で、「まず枯れない」と言われているんです。でも、そのパキラを枯らしてしまう……。

――「次は枯らさないように頑張ります!」ではなく、枯らしたまま終わるのが印象的です。

ASCA: はい。
私がこれまで書いてきた歌詞って、どれだけ絶望していても、最後には必ず希望や光を感じさせる言葉を入れていたんです。
でも今回は、スタッフさんから「絶望のまま、問題が解決しないまま終わる歌詞も見てみたい」と言われて、「それ、面白そう!」と思って。
それで、自分にとっての”絶望”を考えた時、恋愛でも家族愛でも友情でも、自分では愛情だと思ってしてきたことが、相手にとってはうれしくなかったり、真っ直ぐ受け取ってもらえなかったりすることも、一つの絶望なんじゃないかと思ったんです。
そこから、相手の心に穴が空いていて、自分がどれだけ愛を注いでもこぼれていってしまうイメージが浮かんで。それを、皆さんが想像しやすいように〈底のない鉢植え〉という表現に変換しました。

――〈あなたは底のない鉢植えみたい〉が、途中で〈わたしは底のない水差しみたい〉に変わるのも印象的です。

ASCA: 悲しみの渦中って、相手のほうに穴が空いていると思い込んでしまって。「自分の愛は間違っていない、悪いのは相手だ」って。
でも、もし相手が望む愛じゃなかったとしたら、注いでいる側が間違っていたのかもしれない。そう気づいて、2番では〈わたしは底のない水差しみたい〉と視点を変えています。ちょっとしたフックになっていますね。

――歌詞を書いてから、詞先で曲を作ってもらったんですか?

ASCA: はい。
詞先で作詞したのは初めてだったので、曲選びも一筋縄ではいきませんでした。
当初は「明るいサウンドだけど、歌詞は解決しない絶望」というイメージをチームで共有していて。今回選ばれたMisty Mintさんのデモは、最初のイメージとは少し違ったんですけど、私が作詞した時に想像していた音と、すごくリンクする部分があったんです。
編曲の石井浩平さんの手腕によって、音と一緒に聴くことで、希望や新しい物語の始まりを感じられる、明るい余韻も残せる作品になりました。
実は最初、スタッフ全員が別の曲を推していたんです。でも、「私はこっちがいい!」と、作詞者権限でMisty Mintさんの曲になりました(笑)。

――ちなみに、実際に観葉植物を育てていたそうですね。

ASCA: パキラではないんですけど、観葉植物を”飼って”いて。水をあげすぎて、根腐れさせてしまったんです。このエピソードが歌詞の元になっています。

――愛情を注ぎすぎると、ダメになることもありますからね(笑)。

ASCA:そうですね(笑) ”飼う”って表現したくらい、本当にペットみたいに愛情を注いでいたので、腐らせてしまった時はすごく落ち込みました。何年も引きずっていたんです。
でも今回、歌詞にしたことで、ようやく消化できた気がしています。
この「パキラ」は、悲しみや苦しみの渦中にいる人に届くと信じて制作しました。そして「Cusp」は、迷っている人に寄り添って、癒やしになったり、「もう少し頑張ろうかな」と思ってもらえたらいいなという気持ちを込めています。
音楽って、楽しい時にも聴くけど、辛い時にも聴きたくなるものだと思うんです。この2曲で少しでも、皆さんの心に近づけたらうれしいです。

――最後に。スピカが魔法やクロード先生に憧れたように、ASCAさんがかつて憧れた存在を教えてください。

ASCA: ドラマ『アンフェア』の主人公・雪平夏見さんです。シングルマザーの女性刑事なんですけど、小学生の頃、すごく憧れていました。
当時の私は、まだ明るくて、「いろんな人と仲良くなりたい!」って思っていた時期だったんです。でも、それとは真逆の雪平さんのクールさとか、自分の軸を絶対にブレさせないところに、小学生ながらすごく惹かれていました。
もしかしたら、その時に憧れていた”クールさ”を、今のASCAとして追い求めて表現しているのかもしれないです。
編集部おすすめ