「いまの目標は100公園」と語る小島さん。“公演”ではなく、“公園”。いったいどういうことか。
最近、小島さんは都内近郊の公園に出没し、絵本の読み聞かせを精力的に行っている。そして現在39公園を制覇。今年中に100を達成したいという。
公園に行く理由は、そこがお客さんがいる“劇場”だから。いま、小島さんの太いお客さんは子供たち。この読み聞かせを始めたのは最近だが、8年ほど前から子供向けのライブを始め地道な営業活動を続けていた。
「(ライブをやると)結局人集めとか告知とか大変だなと思って、『じゃあ最初からお客さんがいる場所に行っちゃおう』と、公園に行ってみたんです。そしたらここはちゃんとキャパがある野外型劇場だなと気づいて(笑)」
この、ゲリラ読み聞かせは、自身のSNSで予告する。
「ツイッターやインスタで『明日行きます!』みたいな感じで告知します。あと、当日にスケジュールや天気を確認して『2時間後やります!』と決めることもありますね」
ただ、人集めということでは、野外ならではの誤算もあったようで…
「1度、1年で1番寒い日に行ってしまって、公園に誰も人がいなかったことがありました。ジョギングで通りかかったおじさんにも『いつもは人がいるんだけどなあ…今日は寒すぎるよ』と言われてしまって。結局、そのときはツイッターを見てくれた高校生が3人ぐらい来てなんとか助けられました」
思わず、極寒の中海パンスタイルで立ちすくむ小島さんを想像したが、「いや、それだと警察がきちゃうので(笑)、普通に服を着ています」と聞いてひと安心。
■目の前の人を喜ばせるいまは、TVの仕事とは違った充実感に満ちている。
「(TVの仕事も)どっちも楽しいですけどね。でも、公園の読み聞かせはほんとうにやってみて、心が豊かになるじゃないですけど、ものすごくホカホカした気持ちでいつも終わることが多いんです。たとえば小学生の女の子が寒い中ぼくに缶コーヒー買ってきてくれたり、帰り道駅までおくってくれたりとかするんですよ。女の子5~6人、駅までの道をずっと自転車で後ろから『小島よしおここにいま~す』って言いながらついてくる。これがTVの仕事だと、ロケの進行があるから、遠ざけちゃったりするじゃないですか。それと真逆で、むしろ呼び込んで、どんどん撮影してくださいという感じ。面白いし、新鮮ですよ」
絵本の読み聞かせを通じて「目の前の人を喜ばせる。
また、かつては仕事とプライベートを区切ってしまう所があったそう。一度売れてしまったことで、なくてもいい自意識が植え付けられてしまったのかもしれない。
「どこで習ったのか、なんでそうなっちゃったのかわからないですけど、そういう自分がいて。でも、この読み聞かせをやることで、覆われていた殻がむけていく感じがすごくあります」
小島さんは穏やかな顔で心境の変化を語った。
■『おやすみロジャー』に対抗?
ここで、読み聞かせで使っている小島さん初の絵本『ぱちょ~ん』(ワニブックス)刊行の経緯も聞いた。なんとコンセプトはあの大ベストセラー『おやすみ、ロジャー 魔法のぐっすり絵本』(飛鳥新社)から来ていたのだとか!
「ワニブックスさんにお話をいただいて、みんなでアイデアを練りました。そこで、“夜の寝かしつけ”ということでは『おやすみロジャー』というのがあるけど、じゃあ逆に寝起きが悪い子供も結構いる。じゃあ“朝元気になる”というコンセプトでこちらは作ってみましょうという話になって。で、朝家を出るまでの動作を擬音であらわしてみたらどうだろうと」
絵本を開き擬音にあわせて子供たちは体を動かす。たとえばこんな感じだ。
書名でもある、「ぱちょ~ん」はじめ、擬音はほぼ書き下ろしだという。
「『そんなの関係ねえ!』と『おっぱっぴー!』をのぞいて、全部オリジナルのものを考えました。ちゃんとネットで似ているものがないか調べて(笑)」
苦心の末、完成した本作だが子供たち、親御さんたちの反応も上々。
「正直、出来上がるまで不安でしたよ。でも本が出た後お蕎麦屋さんで、たまたまそこにいた子供たちに、持っていた『ぱちょ~ん』を見せたんです。こういう絵本があるよ、と言って。で、絵本に僕の声が再生されるQRコードがのってるんですけど、それを読み込んだらめっちゃウケたんですよ。えっこれ本当にウケるんだ、と(笑)。あと、子供を持つぼくの同級生からも、『本当に朝起きるようになったんだけど』と言ってもらって。そんなに効果があるんだ、とまたびっくりしてます。本当にいい絵本になったなと」
ひとりでも多くの読者に届けるため、ひとつでも多くの笑顔に出会うため。