日曜劇場
『グランメゾン東京』
TBS/毎週日曜 よる9時放送
“3年前までパリのレストランで腕を奮い、三つ星獲得を目前とされていたシェフ・尾花夏樹(木村拓哉)。とある事件をきっかけに店を閉めることになり、すべてのスタッフが解雇。日本に帰国する資金もなく、借金取りに追われているところに、三つ星で働くことを望む早見倫子(鈴木京香)と出会う夏樹。倫子は一瞬で彼の味に惚れ込み、日本でレストラン『グランメゾン東京』を開店させることを決意。事件によって解散に追い込まれた元スタッフたちを誘い、再び料理に熱意を投じる大人たちの勝負が始まった---”
今回は現在放送中の『グランメゾン東京』(TBS系・毎週日曜21時放送)について。日曜日の21時といえば中年男子たちの心を掴んで離さない、銀行マンや会社員たちによる熱血ストーリーのドラマが、ここ数年の定番。ただちょっと女性視聴者には、高カロリー過ぎるのではないかと感じていた。そんな最中に、イケメンシェフの登場である。それも説明不要の平成が生み出したスターが主演。
ドラマを見ていて面白いと感じたのは、ヒロイン自らが50歳だと言い切る鈴木京香さんを筆頭に出演者のバランスがいいこと。
もうじき、中村アンさんや冨永愛さんらの出演時間が増えるそうなので、現状の安定感に対して、どう化学反応を起こすのか楽しみだ。
それからもう最終回まで言い当てたくなるような、ハッピーエンド感。これは木村さんの存在が大きい。彼が出てくるとけして不幸で話は終わらないという、安堵がある。今回演じている夏樹は、料理の天才的な才能はあるのにアウトローなタイプ。ちょっと人たらしな一面もある。周囲からなんと揶揄されようと、一皿に盛る料理の可能性を信じていて、やがて非難していた人間も再び彼の元へと集まっていく。そんな内容を想像するだけで唾が出てきそうだ。
他局で『絶対に失敗しない』と豪語する女医が数々の命を救うのなら、TBSでは、絶対的な技術を持ったシェフが人々の胃袋を幸せにする。そんな令和版の『水戸黄門』ストーリーが今秋は各所で面白いなあとしみじみ。
■老けることが美徳へと変わる、キムタクの佇まい主演の木村さんを見ていてふと気づいたことがある。
「(あれ? 毎度ドラマに出るたび、髪型を変えている……?)」
彼を推す人にとっては、何を今さらと怒られそうだ。今回は大人の不良っぽさを醸し出すためのなのか、メッシュの入った明るめカラーに耳を出した、パーマヘアスタイル。凡人が真似をすると本気で火傷をする、いい男にしか似合わない雰囲気ヘアだ。そして思い返すと、これまでの主演作品で木村さんは見事にヘアスタイルを変えてきている。作品のことを思い出すと、一緒に彼の七変化を遂げる髪型の記憶が一緒に浮かんできた。ここまで変えてくるタレントさんをあまり他に思いつかないし、どんな髪型も自分のモノにしているパターンも珍しい。
もちろん第三者の意見もあるとは思うけれど、やはり自身のブランディングのなせる技なのだろう。けして友人でもないのに、彼のことを想像するとめちゃくちゃ努力の人だと断定してしまう。尋常ではない荒波とムーブメントが、たびたび彼の人生へ押し寄せてきたのは、日本国民の知るところ。
ビジュアルを保つためのジム通いやら、何やらストイックにこなしているのはインタビューでも読んだ。他にも英語、料理となんでも器用そうにこなす。役に対して、髪型ひとつを取っても手を抜かない。そんな彼だからこそ、今回の『グランメゾン東京』で、木村さんにほうれい線とまぶたのたるみが少し見えた時に
「キムタク、老けたね……」
と、落胆するのではなく
「キムタク、老けたねえ(笑)」
と、なんだか喜ばしい気持ちになった。老けていく様子に人間味を感じて、なんだか愛おしく感じてしまった。そんな王子様に毎週会えるなんて、残り2ヶ月の2019年も捨てたもんじゃない。