いらっしゃいませ。
 大阪のワインショップ「mista」で店長をしている、ソムリエの竹内香奈子と申します。

 お客様から「この前、レストランでこのワインを飲んでおいしかったのですが同じワインありますか?」と写メを見せられることがよくあります。そして、そのワインをご案内すると「こんなに安かったんだ・・」とたまにいわれる方がいます。
 同じワインでも、自分でワインを購入して飲むよりレストランで飲む方が価格は高くなります。それは、ビール、ウーロン茶、日本酒なども同じですよね。グラスやサービスなどの人件費、場所の提供のコストがかかるので、小売店の価格より飲食店の価格の方が高くなるのです。
 よく耳にするのが、ビールや日本酒の相場はだいたい分かってもワインの相場って分かりづらいということ。
それは、ワインは星の数ほど種類があり、何百円~何百万円と価格がピンからキリまであるからです。
 では、できる限り安くおいしいワインに出会うためには、どのくらいの価格のものを選べばよいのでしょうか?
 今回は、レストランの価格の付け方やレストランで飲むワインの価格についてご紹介します。◆レストランとワインショップの価格の違い

 まずは、レストランの価格の付け方からお話ししていきましょう。
 よく仕入れ値の3倍が相場といわれていますが、それは一昔前の話。今ではできるだけ安くワインを提供するお店が増えてきています。
 レストランのワインの価格は、酒屋やワインショップで購入する価格の2~2.5倍が目安となります。

例えば、自分で購入するときに1000~2000円のワインは、レストランで2500~5000円となります。

 また、販売価格+1000円で飲める飲食店もありますし、ワインショップで販売価格+500円でボトル飲みできるところ(小売りと飲食店が一緒になったスタイル)も増えてきています。日本に輸入されるワインは年々増え、安くておいしいワインが入るようになっているので、飲食店でも価格競争(なるべく安く提供しようという動き)が起きています。ワインはどんどん身近で日常的な存在になってきているのです。

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レストランで提供されるワインの価格は、いったいどのくらい?◆レストランの価格

 私は仕事上、インポーターからワインを仕入れ、一般のお客様に店頭で販売したり、飲食店にワインメニューの提案をしているので、ワインの価格をより詳しく知っています。
 ワインの価格には、インポーター(輸入元)が決めた希望小売価格と、実際に一般消費者に向けて売られている販売価格が存在します。

希望小売価格とは、定価のようなもので、実際にワインショップ、酒屋、スーパー、ネットなどで販売されている価格は希望小売価格より安くなっています。小売店によって異なりますが、その価格はだいたい定価の8~9掛けになっています。
 飲食店の仕入れ価格は、取引量によって割引率は変わりますが、だいたい定価の7~8掛けが相場です。その仕入れ価格の2~2.5倍が飲食店メニュー価格となるのです。

 ただし、3倍どころか5倍6倍とそれ以上・・・・1000円以下のワインを4000~5000円でメニューに入れている飲食店もありますので、4000~5000円出して飲んだワインがおいしくなかったら、そこのお店ではワインは控えた方がよさそうです。

◆飲食店でワインを飲むのは損?
飲食店でワインを飲むのは損?
レストランでワインを飲むメリットは?

 では、飲食店でワインを飲むと損をすることになるのでしょうか?
 私は、仕事柄、飲食店でワインメニューをみるとほとんどの販売価格がパッと頭に浮かんできます。

だからといって、飲食店でワインを飲むことが損をしているとは思いません。

 確かに家で飲むのは安上がりですし、気兼ねなくリラックスして楽しめます。しかし、飲食店ならではのメリットもあります。
 それは、雰囲気を味わえるということ、プロの料理とワインを合わせられること、あまり手に入らないワインや珍しいワインに出会えること、自分の考えとは別の新たなマリアージュの発見がある、などです。

 グラスワインの多いお店では1皿に1種類はもちろん、1皿に2種類だって合わすことができます。家では、十種類近くのワインをいろいろな料理と合わせて飲み比べするのは難しいですよね。


 家飲みには家飲みのメリットがあり、飲食店には飲食店のメリットがあるのです。

◆3000円台なら南半球かスペイン、カリフォルニア

 普段、レストランやバルでワインを注文するときの予算は、だいたい5000円以内が多いですよね。飲食店の方から、お客様が一番飲まれる価格帯は3000円~4000円とよく聞きます。2000~3000円台でもおいしいンはじゅうぶんありますが、目安としては、4000円くらい出すと“おいしい”に当たる確立は高く、5000円でしたらハズレの確立はほとんどなくなります。
 でも、できれば3000円台まででおいしいワインを飲みたいですよね。どのように選べばいいのでしょうか?

 それは、国・地域で選ぶことです。

チリ、アルゼンチン、南アフリカ、スペイン、オーストラリア、カリフォルニアのワインを選びましょう。
 なぜなら、コスパの高いワインが多いからです。これらの地域はブドウの栽培やワインの醸造に適した、天候に恵まれている土地なのです。気候が乾燥しているので凝縮したブドウが育ち、果実味たっぷりの飲みやすいワインになります。それに、土地代も人件費も安いので、コスパのいいワインが生まれるのです。

 逆に、5000円以下のワインを注文する場合は有名産地のワインは避けましょう。フランスではボルドー、ブルゴーニュ、シャブリ。イタリアでは、キャンティ、ソアヴェなどです。最高品質を造る産地なので、あまり安い価格のものだとクオリティがよくない可能性が高いからです。
 でも、どうしてもフランスやイタリアワインが飲みたいというときには、南の暖かい地域のワインを選ぶといいですよ。南仏やシチリアのワインがオススメです。

◆気に入ったワインを見つけたら写メを撮っておく

 冒頭文でお話ししたように、おいしいと思ったワインを写真に撮っておくのはとてもいい方法です。
 ワインの名前が覚えられなくても、エチケット(ラベル)が読めなくても、画像にしておけばお店の人に聞いて探すことができます。

 できれば、裏ラベルも一緒に撮ることをオススメします。裏ラベルにはインポーター(輸入元)が書かれています。どこの輸入元か分かれば、酒屋やワインショップの人が仕入れるときに輸入元を探さなくて済みますので、簡単にワインにたどり着くことができるのです。
 酔っ払う前に撮っておきましょうね。

◆サイゼリヤのワインはなぜ安いのか?

 ファミレスでワインを飲むという話も聞きます。特に、サイゼリヤは安くておいしいと評判だそうです。
 しかもハウスワインがグラス1杯100円、250mlのデキャンタ200円、1500mlのマグナムでなんと!1080円という驚異的な価格で提供されています。
「こんなに安くて大丈夫?」と不安になるぐらいの安さですよね。

 どうしてこんなに安いのか、その理由は自社でイタリアから直輸入しているのです。品質もよく価格以上のおいしさがあるというわけなのです。
 ただ、100円や200円、マグナムで1080円という安さなのでこの価格にしては飲みやすくおいしいですが、正直物足りなさも感じます。
 そんなときはハウスワインではなくボトルで注文するのがオススメ! 750mlのボトルは1080~2160円とこれもまたお手頃価格です。

◆サイゼリヤにあるワインの裏メニュー

 知っていました? サイゼリヤに、7000円以上するワインがあるということを。  
 サイゼリヤには通常に置いてあるメニューの他に実は50種類以上もの銘柄が書かれた裏メニューが存在するのです。全ての店舗にはなく一部の店舗で置いてあります。通常メニューに「この他にもワインをご用意しております」と書かれたメニューのあるお店には裏メニューがあり、サイトの店舗検索でも確認できます。
 イタリアワインを直輸入しているので期待できるかもしれませんね。

 

 いかがでしたでしょうか。

 今回頭に入れていただきたいのは、以下の3つです。

①レストランのワインの価格の目安は、酒屋やワインショップで購入する価格の2~2.5倍

②5000円出せばハズレの確率はほとんどなくなる

③3000円台を注文するなら、チリ、アルゼンチン、南アフリカ、スペイン、オーストラリア、カリフォルニアのワインを選ぶべし

 

 最近は、ワインの充実したお店がたくさんあります。イタリアン、フレンチだけでなく、タイ料理やインド料理、お寿司やさんやお好み焼きやさん、焼き鳥やさんなどの和食でもワインの品揃えが増えてきています。
 どんどん品質のいいワインをリーズナブルに出してくれるお店も増えていますので、カジュアルにワインが飲めるようになっています。
 さまざまなレストランでワインを楽しんでくださいね。

 これから、このような具体的なシーンを通して、ワインの楽しみ方、そして何よりワインの美味しさをお伝えしていきたいと思います。

 次回をお楽しみに!

*この連載は隔週水曜日更新予定です。