ブランド設立35周年というアニバーサリーイヤーを目前にした2017年、「累計1億本」という驚くべき数字を達成した『G-SHOCK』。なぜ唯一無二の存在になり得たのか、その秘密を探るべく、G-SHOCK製作に携わる、様々な立場の現役カシオ計算機社員に話を訊いた。


3人目は、G-SHOCKの「デザイン」を担うキーパーソンを直撃!

カシオ計算機
時計事業部 企画統轄部
デザイン企画部 第二デザイン室
小島健二さん

G-SHOCKの「デザイン」は誰がどうやって決めている?の画像はこちら >>
写真を拡大 学生時代はなんとマウンテンバイクの全日本チャンピオンという、異色の経歴。入社してすぐG-SHOCKのデザインに携わり、その後プロトレックなどのデザインを手がけ、現在は再びG-SHOCKの担当デザイナーに。成功の陰には、偉大な失敗作が

ーーG-SHOCKのデザインが世界において、独自性を確立した理由はなんでしょう。

小島 まず、デザインやコア技術において、独創性を持っていること。

そこに機能美を追求することで、競合のない独自性の高いブランドを確立できました。 次に、デザインの展開力の多さです。デザイン業界ではカラー、マテリアル、フィニッシュの頭文字を取ってCMFと呼ぶのですが、 常に膨大なCMFサンプルの製作調査を継続しているG-SHOCKには、幅広いユーザーの方々への沢山のアプローチ方法があるんです。 日本をはじめ、グローバルで受け入れられているのはそのためでしょう。

ーーG-SHOCKのデザインコンセプトは、どうやって決めているのですか。

 

小島 ファッションからスポーツ、様々な市場やトレンド調査を徹底しています。

多方面からより多くの情報を集め、それをデザインにフィードバックしています。G-SHOCKは、タフネスという絶対テーマがあり、絞り込まれたターゲットユーザーのニーズを確実に理解していなければいけません。だから、市場調査とともにデザイナー自身が専門資格を取ったりと、リアルな体験を心がけています。

ーーそんなことまでやっているんですね。

小島 G-SHOCKのデザインチームは、とてもユニークな人たちが多く、個性やこだわりがとても強いんです。

ーー機能を追求すると、沢山の制約がありそうですが。

小島 デザインを考える上では、必ずしも既存技術や構造の制約が絶対ではありません。デザインから新しい構造が生まれ、構造特許を取得した例もあります。アイデアの段階では、あらゆる可能性は許容されているのです。もちろん、G-SHOCKらしさは失えません。極微細な部分で、けれども斬新なデザインを探して日々切磋琢磨しています」

ーーG-SHOCKデザイナーならではの悩みはありますか。

小島 G-SHOCKはタフなので、故障が原因の買い替えが少ないんです。

既に持っているというユーザーに、もう1個欲しいと思って頂けるデザインを考えなければいけません。累計販売台数1億個を達成し、デザイナーとしては、喜びと同時に身が引き締まる思いです。

ーーこれまで失敗作も沢山ありましたか。

G-SHOCKの「デザイン」は誰がどうやって決めている?
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【My G-SHOCK Memory】 「マイベストデザインは自身が出がけた〈GA-800〉…と言いたいところですが、やはりオリジナルである〈DW-5000〉です。手を加えてみようと何度かトライしましたが、本当に完成された一本です」

小島 むしろ失敗作の方が多いのではないでしょうか。G-SHOCKはサンプルをとにかく沢山作りますから。

特に昨今は3Dプリンターの進化などで、サンプルを作りやすくなっていますからね。だから、デザイナーのデスク周りには、過去の失敗作が大げさじゃなく山積みされていますよ。捨ててしまわないのは、そうした失敗作が、後の新企画のヒントになり得るからなんです。あまり大きな声では言えませんが、各デザイナーにはそれぞれ偉大な失敗作があって、中にはケースに入れて飾っている人もいます(笑)。マニアの方が見たら、喜ぶでしょうね。

ーートンデモなアイデアが出たりしたことはありますか。

小島 話が脱線し続け、最終的には耐衝撃性構造を抜いたら、こんなデザインが生まれる…、なんて話になったこともあります(笑)。

ーー膨大なモデル数があるG-SHOCKですが、小島さんの中でのベストデザインはどのモデルですか。

 

小島 やはり5600系です。どこを見ても無駄がない、黄金比と言えるでしょう。これまでなんとかその壁を破ってやろうと、様々なアプローチで手を加えたのですが、やっぱり元のデザインを超えられません。マスタピースである5600系を超えるモデルを作ることが、G-SHOCKに関わるデザイナーの目標です。

ーーこれからG-SHOCKのデザインはどうなってゆくのでしょう。

小島 35周年という節目を迎えたG-SHOCK、止まる事のないタフネスデザインの進化により、ユーザーの皆様に更なる驚きが提供できるよう、 日々新たなデザインを追求し続けていきます。ご期待ください。