野村HD、古賀会長と永井CEOの賛成比率が6割に急落

 東京証券取引所の市場再編に関する情報漏れで業務改善命令を受けた野村ホールディングス(HD)の定時株主総会は6月24日、東京都港区のグランドニッコー東京台場で開催された。総会の所要時間は3時間11分。

記録を確認できる1994年以降では2番目の長さとなった。

 議案は会社提案の取締役10人の選任のみで、原案通り可決された。古賀信行会長の賛成比率は62.3%、永井浩二グループ最高経営責任者(CEO)は61.7%だった。昨年の株主総会では古賀氏が86.5%、永井氏は96.0%の賛成比率で信任を得ており、大幅な低下となった。

 2019年3月期に1000億円を超える最終赤字を計上したことや、金融庁から業務改善命令を受けたことで、8年目を迎えた経営体制に多くの投資家がノーをつきつけた。

 6月上旬には米議決権行使助言会社が、古賀氏を含む取締役の再任案に反対を推奨。株主総会の前週に古賀氏を指名委員会と報酬委員会の委員長に就ける当初案を修正したほか、関連会社の野村総合研究所の株式を一部売却して最大1500億円の自社株買いを決めた。ガバナンス(企業統治)と株主還元の強化によって株主の理解を求めた。

 これを受けて米議決権行使助言会社のグラスルイスは反対推奨を取り下げた。一方、インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は情報漏洩問題で金融庁から行政処分を受けた責任を取るべきだとして、古賀会長、永井CEO、公認会計士の園マリ社外取締役の3人の再任に反対を推奨していた。園氏への賛成比率は72.0%(昨年は78.3%)だった。

 残る7人も永松昌一副社長が78.7%(同96.0%)、元JT会長の木村宏社外取締役が86.9%(同98.8%)と、昨年に比べ賛成比率が低下した。

 永井CEOの賛成比率は、野村HDでは過去に例がないほど低い数字で、多くの投資家から不信任を突き付けられた格好だ。次の総会までに結果を出さなければ、再任は否決されかねない緊急事態といえる。

大荒れだったスルガ銀行

 シェアハウス向け融資で大規模な不正が発覚したスルガ銀行は6月26日、本店がある静岡県沼津市のプラザヴェルデで定時株主総会を開いた。

「なんでそこに立っているんだ!」「辞めろ!」。総会は、不正問題に不満を募らせるシェアハウスオーナーの株主らが経営陣を激しく糾弾する大荒れの展開となった。壇上で不正を陳謝した有國三知男社長の声がかき消されるほどの怒号が飛び交い、異様な雰囲気に包まれた。その場面の動画がインターネットに投稿され、全国のテレビで放映された。

 質疑応答では、岡野光喜前会長らの創業家との関係解消やシェアハウス所有者の返済条件の見直しなどについて質問が集中した。

「創業家の岡野家がいまだに筆頭株主である状況が、他社との資本提携の障害になっている。すぐに(創業家関連企業への)融資を引き戻して株を取り戻すべきだ」という株主の質問に対し有國社長は、「創業家の保有株(の返還)はいろいろな方法を模索している。早急に取り組んでいるが、具体的なやり方は守秘義務がある」と語った。

 シェアハウス問題を迅速に解決できるかどうかが経営再建のカギだと訴える意見に対し、「元本カットのみならず抜本的な解決策を進めていく。

個々の事案については引き続き個別に協議していきたい」と述べた。

「ここ20年、スルガ銀行は首都圏ばかりを向いて、地方をないがしろにしてきた。今後、地元に根差した営業活動をしてほしい」との声も出た。

 経営を支配し、不生融資の温床となった創業家は経営から離れたものの、株式を保有し続けており、影響力を保持したままだ。一連の不正問題を受け、預金流出など客離れも進んだ。19年3月期の連結決算で、不正融資に伴う貸倒引当金の計上が響き、純損益段階が971億円の赤字(18年3月期は69億円の黒字)に転落し、配当もゼロとした。

 経営再建に向け、有國社長を除く5人の取締役が退任し、新たに6人が就任する新経営体制や、企業統治を強化するため監査等委員会設置会社への移行などを諮る議案が承認された。

 社内取締役は有國氏のほか、副社長に佐川急便の親会社SGホールディングスで取締役を務めた嵯峨行介氏、上席執行役員審査部長の堤智亮氏。社外取締役は投資ファンド、トパーズ・キャピタル会長の松田清人氏。社外取締役で監査等委員を兼ねるのが野下えみ氏、行方洋一氏、大野徹也氏の3人の弁護士だ。

 スルガ銀行は、経営への絶大な影響力を持ち、不正を防げなかった創業家との関係遮断のため、創業家が保有する13%の株式の引受先や、再建に向けた支援企業探しを進めてきた。

 5月には、消費者金融の「レイク」など個人向け融資に強みを持つ新生銀行や、スルガ銀行に4.99%を出資する神奈川県地盤の家電量販店ノジマと業務提携で基本合意した。

ノジマは追加出資を、新生銀行は出資を検討していると伝えられているが、現行の状態は資本提携に踏み込まない中途半端なものだ。創業家がいまなお株式を保有していることがネックになっている。

 シェアハウス投資をめぐる不適切融資で引責辞任した岡野光喜前会長ら創業家側からの説明や謝罪は一切なかった。

 総会の出席者数は、過去最多だった昨年(406人)を上回る556人。総会所要時間は昨年の3時間15分を超える3時間22分に及んだ。

 総会後、シェアハウス所有者らの弁護団が記者会見を開いた。河合弘之弁護士は「シェアハウス問題の解決なくしてスルガ銀行の再建はない」と述べた。所有不動産を銀行側に引き渡して、それで債務の全額返済とする「代物弁済」について「交渉している。かなり煮詰まってきている」と明らかにした。

日銀のゼロ金利政策の解消を求める株主提案

 公的資金を完済していない新生銀行が6月19日に開いた株主総会では、大株主である米ヘッジファンドのダルトン・インベストメンツが株主提案を行った。共同創業者であるジェイミーロゼンワルド氏の社外取締役選任を求めた。

 公的資金を完済するまで、取締役全員の現金による報酬は1円以下とする。

株式所有者を重視した新たな報酬制度の導入。大規模な自社株買い及び金庫株の消却を実施するための取締役選任と提案理由を説明した。

 社外取締役選任を求める株主提案には16.63%の賛成があった。

 6月21日開催のみずほフィナンシャルグループの株主総会では、一株主から「国債市場参加者制度の参加資格返上」の株主提案があった。

 提案理由は、「日本銀行の行っている間違った政策『マイナス金利』の影響による国債金利はほぼゼロ、場合によっては、文字通りマイナスもある。日本の財政は、企業で言えば、すでに破産している状態。その国債がデフォルトしない保証はない。そのような危険な国債を一定額強制購入させられる制度への参加はやめていただきたい」というものだった。

 株主提案への賛成率は6%だった。

 6月21日開催のりそなホールディングスの株主総会でも、ある株主から同様の「日本銀行にマイナス金利政策を撤廃するよう要望書の提出」を求める株主提案があった。

「日本銀行の導入したマイナス金利政策は、金融機関とその株主だけにリスクを押し付ける行為。日銀の間違った政策を撤廃するように傘下各行頭取が要望書を日銀総裁に手渡してほしい」というものだった。

 この株主提案への賛成比率は3.12%だった。
(文=編集部)

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