6人組アイドルユニット・でんぱ組.inc(でんぱぐみ・インク)の古川未鈴(ふるかわ・みりん/年齢非公表)の結婚が話題となっている。お相手は、マンガ家の麻生周一(33歳)。
古川は、9月18日にZepp DiverCity(東京都江東区)で開催されたでんぱ組.incのライブ公演「UHHA! YAAA!! TOUR!!! 2019 SPECIAL~If you want to be happy,be.~」のアンコールMCにおいて、この件を突然発表。その後、公式サイトに麻生との連名でも結婚報告コメントを掲載し、ファンのみならず、でんぱ組.inc元メンバーの夢眠ねむ、最上もが、そして同プロデューサーの福嶋麻衣子ら多くの関係者がSNS上で祝福の言葉を投げたのである。
ジャニーズタレントだって結婚している今回の古川の結婚発表、そしてそのことがファンにもポジティブに受け入れられたことに対し、「女性アイドルだって結婚していいはず」「本来は“恋愛NG”なイメージの強い女性アイドルの結婚が祝福されるほど、若者の意識は変化しているのだ」などといった分析を加える向きも多い。
また、古川が今後もでんぱ組.incの活動を続行することを表明したことを受け、活動歴の長いアイドルが増えたことによる女性アイドルの高齢化、あるいは結婚後もキャリアを積んでいく女性の一般化等も背景にあるのではないか等々の議論もある。実際、今年2月に結婚を発表した3人組アイドルNegicco(ねぎっこ)のNao☆(30歳)も、同じく結婚後のアイドル活動続行を表明している。
しかし、「そういった社会背景の影響もないではないでしょうが、今回の古川未鈴さんの結婚がポジティブに受容されたことに関して言えば、単純に女性アイドル市場の規模が拡大した結果ではないかと思います」と少々ドライな分析を加えるのは、アイドル評論家でライターの岡島紳士氏だ。
「活動歴が長く、1万人規模のライブ公演を何度も成功させているでんぱ組.incは、アイドル業界にあってはすでに十分メジャーな存在です。テレビやラジオその他のマスメディアへの露出も多く、当然ながらそのファンも、女性アイドルを恋愛対象と見るようなコアなアイドルファンというよりは、より普通の感覚を持った一般層に近いでしょうし、女性ファンも多いでしょう。
それだけの規模のファン数、そして層の厚さを持っているでんぱ組.incであればこそ、メンバーの結婚もポジティブに許容された、と見るべきではないでしょうか」
確かにでんぱ組.incは、海外公演やフェスへの出演も多く、これまでに3度の日本武道館公演を成功させている。しかし、やはり「女性アイドルの結婚、そしてそのまま活動続行」というのは画期的な出来事ではないだろうか? 岡島氏は続ける。
「NegiccoのNao☆さんの例も含め、確かに女性アイドルではまだまだそうかもしれません。
もちろんタレント個々の事情や所属事務所の考えもあるでしょうが、ある程度の活動歴があってメンバーの年齢が上がり、一方でファンの規模拡大と一般メディアへの露出が一定以上になれば、近年の芸能界では男性アイドルでも普通に結婚が許容されており、その波が女性アイドルにも波及してきただけ――と見るほうが正しいように思います」
AKB48や地下アイドルでは結婚はあり得ない岡島氏によれば、歴史的に女性アイドルは男性アイドルを後追いしてきた面が大きく、今回の結婚もその文脈から考えられるのだという。
「評論家・さやわかさんの著作『AKB商法とは何だったのか』(大洋図書)には、“AKB商法”の一端である“ジャケット違いのレコードを複数枚発売する”という手法のルーツとして、『80年代後半のジャニーズ事務所所属の男性アイドルにあると思われる』との記述があります。一例としては、1988年に発売された光GENJIのファーストアルバムが挙げられていますね。それから、例えばももいろクローバーZは、目標として嵐やSMAPの存在をしばしば挙げてきました。
かように、ビジネスの手法やタレント本人の意識面から言っても、女性アイドルは常に男性アイドルを追いかけてきた。それは単純に男性アイドルのほうが歴史が長いからであり、ジャニーズ事務所をはじめとする芸能プロダクションが率先して市場を拡大させてきた結果でしょう。さらに歴史を追えば、おそらく握手会等の“接触商法”的な手法のルーツも演歌その他の大衆芸能にあるでしょうし、さらにそれらの芸能だって、ルーツは歌舞伎などの伝統芸能にまでさかのぼれるものだと思います。
話を戻すと、活動の長期化とメンバーの年齢上昇、そして芸能界でのブレイクスルーとファンの規模拡大、地上波テレビをはじめとする一般メディアへの露出浸透が果たされれば、アイドルに対するファンの意識は、疑似恋愛対象から一般的なファン意識へと移行していき、アイドルの結婚が活動の足かせにはなりにくくなっていく。そしてその結果としてタレント本人は年齢的に当然のこととして結婚することも増え、ファンもそれを許容する――というのは自然な流れだと思います。この現象は、男女を問わず起こると思いますね。
逆にいえば、たとえ芸能界でのブレイクスルーを経ていたとしても、メンバーを頻繁に入れ替えてメンバーの年齢を一定以下に維持する傾向の強いAKB48系グループや坂道系グループではメンバーの結婚はなかなか起こらないし、また握手会を中心としたコアなファンとの対面活動が中心の地下アイドルでは、規模の拡大が起こりにくいため、やはりアイドルの結婚はファンからはなかなか許容されないでしょう。
そういう意味で、古川未鈴さんの今回の結婚は、でんぱ組.incというアイドルグループのメジャー化、そしてそれを可能にした女性アイドル市場の規模拡大を象徴している、ということではないでしょうか」(岡島氏)
となれば、次に結婚するアイドルは、果たして誰なのだろうか?
(文=編集部)