暑さ対策が課題となっている2020年の東京オリンピック・パラリンピック。マラソンと競歩について“札幌開催”が決定的となり、選手・識者を含めて大きな議論が巻き起こっている。
日刊スポーツによると、大会組織委員会の森喜朗会長は記者会見で「(札幌開催案に)IOC(国際オリンピック委員会)と国際陸連が賛成している。受けなければならない」とコメント。またIOCのトーマス・バッハ会長も、「IOC理事会と組織委は札幌市に移すことに決めた」と二者間での合意を強調した。なお、結論は10月30日から3日間かけて都内で行われるIOC調整委員会で出されるという。
マラソン・競歩の札幌開催案は各方面で波紋を広げており、東京都の小池百合子知事は連合東京の大会で「晴天のへきれき」と表現。ロシアのプーチン大統領と親しい安倍晋三首相や森会長の名前を挙げながら、「『平和の祭典を北方領土でどうだ』と呼びかけてみるというのは、ひとつアリかと思います」とも語った。一方、森会長は記者団に対し、小池知事の発言を「無責任」と批判。組織委会長と五輪開催地知事という、トップレベルでの混乱ぶりが浮き彫りとなっている。
また「スポニチ Sponichi Annex」は、札幌開催案に言及した男子マラソン・川内優輝のコメントを掲載。川内選手は「札幌になれば多くのアスリートにとっていい決定」と受け止めつつ、「東京五輪を目指して何年もかけて真剣に準備と対策をしてきた、日本など一部の選手ほど無駄な時間や無駄な夏を費やしたことになるのは皮肉ですね」とチクリ。暑さ対策としてサマータイム導入が検討された点を挙げ、「サマータイムという社会を巻き込む無茶苦茶な議論の時に、IOCに開催地変更を提案しなかった組織委員会に非がある」と、組織委を名指しで批判した。
18日に放送された情報番組『とくダネ!』(フジテレビ系)では、札幌開催案による混乱を報じ、MCの小倉智昭が「暑いのは前からわかっていたわけじゃないですか」と苦言。
ネット上でも賛否が分かれており、「素人でも真夏の東京でマラソン・競歩なんてありえないと思っていたのに判断が遅すぎる」「開催地変更より開催時期変更が先だったのでは?」「もっと早く決断してほしかったけど、死者が出るよりはよっぽどいい」「いろいろ批判は出るとしても、“選手ファースト”という考えでの開催地変更は評価できる」など、さまざまな意見が飛び交っている。
オリンピック招致が決まってから、次々に問題が噴出し続けている。だが、開催まで1年を切ったいまとなっては、これ以上新たな混乱が生じないことを祈るばかりだ。
(文=編集部)