埼玉県さいたま市。「にしおおみやファッションモール」に「&Bridge(アンドブリッジ)」が9月14日(土)オープンした。
といっても、既存のアウトレットストアと何が違うの? というのが素朴な疑問だろう。
オフプライスストアとは、複数ブランド、さまざまな業種の商品を1カ所で扱う店舗で、品揃え力とか「えっ、これ安くていいね!」という驚きが集客の肝となる。多くのアウトレットストアが「ブランド名」を看板にして、その商品やサービスだけ扱うことが多いのと比較すると、理解しやすいだろう。
もともとこの場所では、ワールドが「NEXTDOOR.COM」という自社アウトレット業態を長期間営業しており、来店客からも「改装しましたか?」の声が聞こえるほど。新店舗の運営も引き続き同グループで行っている。
ちなみに、ワールドはSPA型ブランドを多く有しており、1998年9月にアウトレット業態「NEXTDOOR」1号店を横浜に出店した。その後、2000年には類似業態の「プレイスリプレイス」も開業している(現在はない)。セカンドステージに来た商品をどう販売するのかという点において、業界屈指の豊富なノウハウを有している。
店舗の実態はいかに?【立地&来店されるお客様】
国道17号バイパスに面しており、車での来店が主。JR埼京線西大宮駅からは、20分以上歩く。
この理由を考えると、下記の2つが考えられるだろう。
(しまむらは1万2000世帯が1店舗の基本商圏。近隣のお客様にマメに通ってもらう前提)
(2)「&Bridge」オフプライスストア自体の認知が広がるのは、これから。在店客数は10人で、1人か2人組で来ている。業界関係者で視察と思しき背広姿の方も3人いた。カップルなど、夕方にかけて入店数は増えていった。
果たして、ストア内にはどんなブランド、商品が並んでいるのだろうか?
・レディス:ワールド、ストライプインターナショナル、イトキンなど
・メンズ:ワールド、GAS、ハケットロンドンなど
・キッズ:ワールド、イトキン、マザウェイズなど
・雑貨:いろいろ
→レディスでは、HPに紹介がないブランドからの出品も多い。
→衣料は品種×OFF率別にハンギングされている(一部に特価品あり)。
ゴードン・ブラザーズ・ジャパンとの合弁会社設立により、ワールド以外の在庫も多く品揃えされ、それが「お客様の選択肢増加、余剰在庫削減」になれば良いだろう。ただし、これは一次的な話ともいえる。
というのも、現状の「足元商圏、品揃えも多くはワールドの商品、割引率は50~70%」という限定状態では、これが新たな架け橋になり得るか? 多くのお客様に支持され大型化して儲かるか? という二次的成果を期待するには、仕掛けが不足しているだろう。
なぜなら、お客様から見た“圧倒的なメリット、少し遠くてもここへ行く理由”がまだ見えてこない。オフプライスの商品を求めるだけなら、既存のアウトレットパーク、この近辺なら「三井アウトレットパーク 入間」へ行き、歩き回りつつ、隣接するコストコにも寄るほうが楽しい一日かもしれない。品揃えも豊富だし、「あれもこれも買っちゃお?」が確実に広がっている。
米国で絶好調のオフプライスストア米国では、小売業者が商品を買い取っており、さまざまな理由から二次流通先が必要とされる。結果として、オフプライスストアが存在してきた。当然のように、お客様にとっても「ブランド品が安く、使い勝手が良い」店として頼りになる。
その理由は、価格が安いことに加え、品揃えが衣料、ファッション雑貨、靴、家庭用品、旅行用品、ビューティ、季節商品(例えば、ビーチやクリスマスなど)、一部の電化製品、食品などと幅広い点にある。そして、都市中心部や郊外の多くの立地でこれを見ることができるのも、通う側からみるとありがたい。例としては、東海岸ニューヨーク郊外では、このオフプライスショップを核テナントにするモールがあるほどである。
その結果として、業界最大手のTJX社(店舗はT・J・MAXX)は、2018年度決算で389億7200万ドル(4兆2089億円/1ドル=108円換算)、営業利益率10.7%と驚異的な数字で(業績データは繊研新聞より)、アメリカ小売業ランキングで第3位を占めている。
日本でのオフプライスストアの行方は?日本でも、米国同様に「品揃え幅×拠点数の確保」が、今後オフプライスストアが成長できるかの鍵を握る、というのが私の見立てである。「商習慣や商圏規模が異なる日米を一緒にするな!」という声が聞こえそうだが、豊富な品揃えを実現させる商品量や仕入れルートも十分なほど存在するし、今回の新大宮バイパス沿いのような出店立地も限りなくある。
ここからは推測の域を出ないが、「&Bridge」の記念すべき1号店をこの場所にしたのは、ただの実験ではなく、同様の場所での展開に耐えうる“お客様から見た魅力”“事業構造”を意図したからではないだろうか? TJX並みの営業利益率をどう実現するか、まで踏み込んでいるかは不明だが。
これが実現した折には、きっとモール内の案内板も新しい現実に変わってゆくだろう。今後とも、この店の行方に注目してゆきたい。アパレルはまだまだ、暴れてゆくのである。
(文=黒川智生/VMIパートナーズ合同会社代表社員)