2000年に「箱根八里の半次郎」でデビューしてから演歌界のプリンスとして第一線で活躍を続けてきた歌手の氷川きよしが、にわかに注目されている。氷川きよしは11月に開設したばかりのInstagramでメイクやネイルをバッチリ決めたアップショットや、純白のウエディングドレス姿を披露。

フェミニンな装いが話題となった。

 そんな氷川きよしは12月12日発売の「週刊新潮」(新潮社)でインタビューに応じ、自身の装いや心境の変化について次のように語っていた。

<(デビュー)20年でようやく歌手として成人を迎えたような感じがしてきて。これまでは、本当の自分を出さないように、出さないように生きてきた>
<みんなが求める「氷川きよし」に徹してきたけど、40歳を過ぎて、人としてもっと表現の幅を広げたいという気持ち>
<世間が求める「氷川きよし」の姿とは違う。あくまで「演歌の王道」を歩んでほしい、男らしく生きて欲しいって言われると、自殺したくなっちゃうから、つらくて……>

 デビュー以来の付き合いである所属事務所・長良プロダクションとは、かつては表現方法をめぐって衝突が報じられたこともあったが、<事務所の社長も、”きーちゃんらしく生きていった方がいいね”って言ってくれた。社長は海外で暮らしていたこともあって寛容な人>とのことだ。

<とにかく日本中のみんなが「氷川きよし」ってどこかアレしているけど、ああいう人みたいに生きていけるかも、頑張れるかもって思ってもらえればいい>

 幼い頃は<ナヨっとしてて女の子っぽかった>ことからいじめに遭い、そのことから<世間のルールに沿って生きていた>とも告白している。

氷川きよしの意識的な“解放”

 氷川きよしは11月20日放送の『徹子の部屋』(テレビ朝日系)に出演した際にも、「ちょっとずつ自分の好きなこととか、自分がやりたいこともやって表現していきたいな」と心境の変化を明かしていた。一方で、身近な人から反対を受けたことも告白。

 実の父親からは、マニュキアを塗る姿に対して「好かん。男は男らしくしろ。知らん」と言われたことがあるそうだ。

 しかし母親は氷川の表現を応援してくれた。11月25日に発売した『GQ JAPAN』(コンデナスト・ジャパン)で、氷川は次のようなエピソードを明かしている。

<母が「好きなように生きなさい」って言ってくれたんです。「自分の人生なんだから、あなたの好きなように生きなさい」って。子どものころから「きーちゃん」って呼んで、ずっと見ていてくれたから、一人で東京に出て、芸能界で頑張っている姿を見て心配していたんでしょうね。母の励ましはすごく嬉しかったです>

 最近の変貌は、氷川自身が意識的に仕掛けたことだ。インターネット上では否定的な言葉をぶつけられもするが、気にしていないという。

 変貌のきっかけは、ファンや家族への愛、そして恋愛も含め、<自分を解放して、ありのままの自分でおもいきり人を愛したい>という気持ちだった。そして「演歌界のプリンス」という枠組みを超えて縦横無尽に表現する現在の氷川きよしは、新たなファンも獲得しつつある。

 SNSでも、「すごく綺麗」「メイクのお手本にしたい」「みんなそれぞれ自分らしく生きたらいいんだよね」「文句言う人もいるだろうけど無視していい」と、氷川を応援する声は多い。

 一方で、今年の『NHK白歌合戦』にも氷川は出場するが、どんな衣装で登場するのか、そもそも「白組」と「紅組」のどちらで参戦するのかといった話題もある。

 そういえば昨年の紅白では、星野源は“時代に即した変化”を提案していた。

星野がサザエさん風のコスプレ姿で出演するNHKの人気番組『おげんさんといっしょ』の特別コーナーで、「おげんさんって、白組と紅組どっちなの?」という素朴な質問が投げかけられ、星野は「おげんさんは、男でも女でもないから、どうしていこうかしら。だから思ったのは、紅白もこれからね、紅組も白組も性別関係なく混合チームで行けばいいと思うの」と答えたのだ。今年の紅白はまだ男女別の「白組」「紅組」編成のようだが、いずれは変わっていくかもしれない。何色でも構わない、と。

 「男らしさ」「女らしさ」という性別規範には、タレントのりゅうちぇるも真正面から疑問を投げかけ続けてきた。りゅうちぇるは11日夜、Twitterで次のように発信した。

<男は化粧せず男らしく、女は静かに女らしく、それが日本の美徳だろとコメントをいただきました。そう思う方はそれで良いと思いますが、僕は思わない。日本は、おもいやり精神の強い美しい国だと誇りに思っています。その優しいおもいやりを、多様な生き方や、個性的な考えには何故寄り添えないの?残念>

 このツイートには多くの共感が集まり、一晩明けた12日正午の時点で3万件のRTと16万件の「いいね!」がついている。ジェンダーに基づく役割規範に、従順でなくてもいい。多様な生き方をそのまま認める社会になっていきたい。

そのほうが、誰にとっても抑圧なく生きやすいはずだ。ネームバリューのある人々の発信は、その実現に向けて私たちを前進させてくれるだろう。

(文=WEZZY編集部)

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